法定相続情報一覧図を自分で作る方法と法務局の手続き

目次

法定相続情報一覧図を作るメリット

法定相続情報一覧図とは、端的にいえば、「お上が認めた家系図」です。

親族関係をただ説明するだけの相続関係説明図とは異なり、法定相続情報一覧図は、法務局に認証された公的な家系図であり、相続手続きにおいて「戸籍謄本の代わり」として使うことができます。

もちろん、戸籍謄本でも相続手続きはできます。

しかし、たとえば郵送で相続手続きを行う場合、原本を金融機関等に送る必要がありますので、同時に複数の相続手続きを行うことができません。

法定相続情報一覧図を作り、複数枚発行してもらえば、複数の相続手続きを同時に行うことができますので、相続手続きのスピードが格段に早くなります。

しかも、あらかじめ「お上」が確認し、お墨付きを得られた家系図ですので、金融機関等の確認作業を省くことができ、その点でも相続手続きのスピードが早くなります。

さらに、戸籍謄本とは異なり、法定相続情報一覧図の発行手数料は「無料」です。

多少手間がかかるという以外にはメリットしかありませんので、せっかく戸籍謄本を集めるのであれば、法定相続情報一覧図も作ることを強くお勧めします。

法定相続情報一覧図は自分で作れる!

法定相続情報一覧図の作り方は法務局のホームページにも記載されていますが、それを見ただけではよく分からず、結局、専門家に相談するということがよくあります。

しかし、ポイントさえ押さえれば、自分で法定相続情報一覧図を作ることは可能です。
再婚や代襲相続など複雑な親族関係であればともかく、配偶者や子といったよくある親族関係であれば、一般人でも問題なく作れます。

追加書類や訂正の必要があれば法務局から指摘されますので、専門家に相談する手間もかからず、しかも無料で教えてもらえます。せっかく税金を払っているわけですから、役所を使い倒しながら費用をかけずにやった方がいいですよね。

法定相続情報一覧図を作る手順

法定相続情報一覧図は、以下の3ステップで作ることができます。
多少手間はかかりますが、一般的な親族関係であれば、そこまで難しい作業ではありません。

  1. 相続人と被相続人の戸籍謄本と住民票を集める。
  2. 家系図のイメージを書いてみる。
  3. 法定相続情報一覧図を作る。

相続人と被相続人の戸籍謄本と住民票を集める

まず、法定相続情報一覧図の大元となる戸籍謄本と住民票を集めます。
具体的には、以下の書類が必要となります。

自分(申出人)

  • 現在戸籍謄本
  • 本籍入りの住民票

被相続人(亡くなった人)

  • 死亡から出生までの戸籍謄本(除籍謄本・原戸籍謄本)
  • 本籍入りの住民票の除票

他の相続人

  • 現在戸籍謄本
  • 本籍入りの住民票

戸籍謄本の集め方は、以下の記事に詳しく解説してあります。
そちらを参照すれば、自分で集めることは可能です。

実は、法定相続情報一覧図の作成で手間がかかるはもっぱら戸籍謄本集めで、これが終われば9割は完了したようなものです。

なお、法定相続情報一覧図に自分と他の相続人の住所を載せることは必須ではなく、住民票なしでも手続き自体はできます。しかし、相続手続きによっては、追加で住民票の提出を求められますので、戸籍謄本とともに住民票も取得し、法定相続情報一覧図に住所を記載しておくことをお勧めします。

家系図のイメージを書いてみる

法定相続情報一覧図を作成する際、A4の用紙のどこに誰の情報を配置し、どのように線で結ぶかが重要です。
逆に、それさえできれば、あとは戸籍謄本と住民票の情報をただ入力するだけです。

専門家が作る場合は、戸籍謄本と住民票を集めた後、いきなり法定相続情報の作成に取りかかるのが通常です。
しかし、慣れていない人がいきなりやろうとすると、途中でうまく加工できなくなり、行き詰まる可能性があります。

そのため、慣れていない人の場合、法定相続情報一覧図の作成する前に、イメージ図のような家系図を書いてみることをお勧めします。

とはいえ、難しい話ではなく、被相続人と相続人の名前をA4の用紙の中に配置し、普通の家系図のように線で結ぶだけです。この位置関係と線の流れが、法定相続情報一覧図を作成する上で役に立ちます。

なお、法定相続情報一覧図を手書きで作る人は、なるべく途中で記入ミスや記入漏れが生じないように、イメージ図ではなく、全ての情報を記入した下書きを作っておくことをお勧めします。

法定相続情報一覧図を作成する

法定相続情報一覧図に記載する内容

法定相続情報一覧図に記載する内容は、以下のとおりです。

  • 被相続人
    • 身分関係(=被相続人)
    • 氏名
    • 生年月日
    • 死亡日
    • 最後の本籍
    • 最後の住所
      • 申出人(自分)
        • 身分関係(妻、長男、長女などの続柄)
        • 氏名
        • 生年月日
        • 住所(必須ではない)
            • その他の相続人
              • 身分関係(妻、長男、長女などの続柄)
              • 氏名
              • 生年月日
              • 住所(必須ではない)
            • 作成日、作成者の氏名、作成者の住所

            なお、法務局で記載例を提供していますので、それを見ればイメージが湧くと思います。

            法定相続情報一覧図の記載例

            法務局の雛形で自分の相続に当てはまるものを探す

            法務局のサイトには、相続のパターンに応じた雛形(エクセルファイル)があります。
            「法定相続人が配偶者及び子である場合」や「法定相続人が子のみである場合」など、自分の相続に当てはまるパターンがあれば、その雛形をダウンロードし、それを加工して法定相続情報一覧図を作ることができます。

            なお、法定相続情報一覧図の下部に登記官の認証文をつけますので、「下から5センチ以上の余白」を設ける必要があります。

            パソコンが苦手であれば、手書きで作ることも可能

            エクセルは表計算ソフトですので、直感的に図を作るのにはあまり適しません。
            特に、途中で配置を変えたり行を挿入したりしようとすると、全体を変えなければならなくなる場合があり、その時点で挫折してしまう可能性があります。

            本来であれば、デザインツールを使って直感的に作ることをお勧めしたいところです(無料で使えるものも多数あります)。しかし、もしそれが難しいのであれば、エクセルの操作で挫折する前に、手書きで作った方が早いです。

            手書きで作る場合、黒色のペンかボールペン(消えないもの)を使い、文字を楷書ではっきりと書く必要があります。
            難点があるとすれば、記載ミスがあった時の訂正が面倒なことですが、修正テープで訂正したものをコピーすれば足りますので、そこまで大変なわけではありません。

            報酬をもらって日常的に作っている専門家であればともかく、自分の相続のその時だけ乗り切ればいいわけですから、手書きで十分です。 

            法務局の手続きと必要書類

            法定相続情報一覧図の交付申請を行う法務局はどこか

            法定相続情報一覧図の交付申請を行う法務局は、以下のいずれかから選択できます。

            1. 被相続人の死亡時の本籍地
            2. 被相続人の最後の住所地
            3. 申出人の住所地
            4. 被相続人名義の不動産の所在地

            どこでやっても違いはありませんので、申出人=自分の住所地を管轄する法務局で手続きをするのが一番早いと思います。

            法務局のホームページの「管轄のご案内」に全国の出張所一覧が載っていますので、自分の住所地が不動産登記管轄区域となっている出張所を調べることができます。

            管轄法務局の探し方(自分の住所地が「東京都国分寺市」の場合)
            • 「管轄のご案内」の「管轄一覧から探す」又は「地図から探す」で東京法務局を選択
            • 東京法務局の出張所一覧の「不動産登記管轄区域」で国分寺市を探す。
            • 国分寺市の管轄が「立川出張所」であることを確認する。
            • 立川出張所の「案内図」のボタンを押し、所在地や電話番号を確認する。

            交付申請に必要な書類と注意点

            法定相続情報一覧図の交付を申請するために必要な書類は、以下のとおりです。
            なお、提出した戸籍謄本と住民票は、法定相続情報一覧図とともに戻してもらえます。

            • 法定相続情報一覧図の保管及び交付の申請書
            • 自分で作成した法定相続情報一覧図
            • 戸籍謄本
              • 被相続人:死亡から出生までの除籍謄本・原戸籍謄本
              • 相続人:現在戸籍謄本
            • 住民票
              • 被相続人:住民票の除票
              • 相続人:本籍入りの住民票
            • 本人確認書類(以下のいずれか)
              • 運転免許証の表裏両面のコピー
              • マイナンバーカードの表面のコピー
              • 住民票
            • (郵送の場合)返信用レターパック
              *封筒でも構いませんが、戸籍謄本の原本をやり取りしますので、レターパックの方が安全だと思います。
            • 注意点1
              運転免許証やマイナンバーカードのコピーを提出する場合、余白のどこかに「原本と相違ない。●●●●(氏名を記入)」と記入する必要があります。
            • 注意点2
              本人確認書類として住民票を提出する場合、そのまま法務局で保管するため、戻って来ません。

            交付申請書の記入方法

            交付申請書のプリントアウト

            法務局のホームページに「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申請書」がありますので、それをダウンロードし、プリントアウトします。

            なお、自宅にコピー機がなくても、コンビニのネットワークプリントを使えばプリントアウトできます。
            ローソンやファミリーマートのネットワークプリントであれば、ユーザー登録なしでワードファイルをプリントアウトできますので、お勧めです。

            必要事項の記入

            次に、「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申請書」に必要事項に記入します。

            基本、記載欄を埋めればいいだけですが、利用目的欄の「その他」には、具体的な相続手続きの名称を記入する必要があります。たとえば、「株式の相続手続き」「遺産分割調停の申立て」「遺言書の検認申立て」など具体的に記入します。

            また、何通でも無料で発行してもらえますので、必要な相続手続きの数に応じた通数を請求しておくことをお勧めします。

            管轄の法務局に必要書類を提出する

            窓口でもできますが、郵送の方が楽かと思います。
            郵送の場合、戸籍謄本の原本を送りますので、封筒よりもレターパックの方が安全です。

            法務局で書類を確認した後、法定相続情報一覧図が交付される

            レターパックでのやり取りであれば、通常、1週間前後で届くのではないかと思います。

            目次