共有関係を解消した後の登記手続は、どのようにすればいいですか?

回答

共有物分割が成立すると権利関係に変動が生じるため、登記手続が必要になります。登記の方法は分割方法によって異なり、現物分割の場合は①分筆登記と②持分移転登記の2段階で行います。代償分割(全面的価格賠償)の場合は持分移転登記を行います。換価分割(形式的競売)の場合は、競売手続の中で裁判所の嘱託により移転登記が行われます。いずれも登記原因は「○年○月○日共有物分割」です。

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手続の概要

共有不動産について共有物分割が成立すれば、共有持分の帰属先が変わるなど、権利関係に変動が生じます。不動産の取引と同じように、登記をする法的義務があるわけではありませんが、権利関係を明確にし、第三者に対抗するためには、速やかに登記を行うのが通常です。

登記の方法は、共有物分割の方法(現物分割・代償分割・換価分割)によって異なります。以下の表で全体像を整理します。

分割方法登記の方法登記の申請者
現物分割①分筆登記 + ②持分移転登記当事者が申請
代償分割(全面的価格賠償)持分移転登記当事者が申請
換価分割(形式的競売)所有権(共有持分)移転登記執行裁判所の嘱託

換価分割の場合は、形式的競売の手続の中で、執行裁判所の嘱託により買受人への移転登記が行われるため、当事者が自ら登記を申請する必要はありません。これに対し、現物分割と代償分割の場合は、当事者が登記を申請することになります。

分割方法ごとの登記の流れ

現物分割の登記

現物分割は、たとえば共有の土地を物理的に2つに分けて、それぞれを各共有者の単独所有とする方法です。この場合の登記は、次の2段階で行います。

第1段階:分筆登記

共有の土地を2筆以上に分ける登記です。分筆後の各土地には、もとの共有関係がそのまま引き継がれます(たとえばA・Bが2分の1ずつ共有していた土地を2筆に分けると、分筆後の各土地もA・Bが2分の1ずつ共有している状態になります)。

第2段階:持分移転登記

分筆後の各土地について、他の共有者の持分を取得者に移転する登記を行います。これにより、各土地がそれぞれの共有者の単独所有になります。

なお、最高裁は、共有物分割の法的性質は承継取得(売買・交換の性質)であると判断しています(最高裁昭和42年8月25日判決)。このため、登記も原始取得としてではなく、持分の移転という形式で行います。

分筆登記は、登記上の所有者(表題部所有者または所有権の登記名義人)が申請して行います(不動産登記法39条1項)。もっとも、現物分割がなされた土地については、分筆後の土地についての持分移転登記請求権を被保全権利として、対象土地の取得者が分筆登記の代位申請をすることができます。

代償分割(全面的価格賠償)の登記

代償分割は、共有者の1人が他の共有者に金銭(代償金)を支払って不動産全体を取得する方法です。この場合は、不動産を取得する共有者に対して、他の共有者の持分を移転する登記を行います。

たとえば、A・B・Cの3人で共有する不動産について、Aが全面的価格賠償により取得した場合、BとCはそれぞれの共有持分についてAへの持分移転登記手続をする義務を負います。登記手続は、原則としてBの共有持分・Cの共有持分につき各別に申請することになります。

ただし、BとCの共有持分上に第三者の権利に関する登記(差押え・担保権など)がない場合に限り、便宜上、同一の申請で行うこともできます。その場合でも、登記の実行としてはBの共有持分・Cの共有持分につき各別に行われます。

換価分割(形式的競売)の登記

換価分割の場合は、共有物分割のために裁判所が命じる競売(形式的競売)の手続の中で、執行裁判所の嘱託により、買受人への所有権(共有持分)の移転登記が行われます。当事者が自ら登記を申請する必要はありません。

登記原因の記載と証書の保存

登記原因の書き方

共有物分割に基づく登記の登記原因は、分割方法に応じて次のように記載します。

分割の類型登記原因の記載
現物分割「○年○月○日共有物分割」
代償分割(全面的価格賠償)「○年○月○日共有物分割」
代償として金銭以外の財産を給付する場合「○年○月○日共有物分割による交換」

代償分割の中でも、共有持分取得の対価として金銭ではなく他の財産を給付する場合には、登記原因が「共有物分割による交換」となる点に注意が必要です。

証書の保存義務

共有物分割が完了したときは、対象物に関する証書を保存する義務が生じます(民法262条1項)。証書保存義務の対象となる証書について民法上の明確な規定はありませんが、たとえば、①契約書(共有不動産を購入したときの売買契約書)、②納税証明書(公租公課の納付証明書)、③判決書(共有不動産に関する訴訟の判決書)などがあげられます。

証書を保存する者については優先順序が定められています。①分割の結果、単独所有となった者(民法262条1項)、②分割の結果、最大部分を取得した者(同条2項)、③合意または裁判所の指定により定める者(同条3項)の順です。最大部分を取得した者が判明しない場合には、協議で保存者を定め、協議が調わないときは裁判所が指定します。

民法の規定だけでは証書を保存する者を判定できない場合には、裁判所が証書保存者を指定する手続(非訟事件手続法86条)があります。この証書保存者指定請求の手続は、①共有物分割を行ったこと、②最大部分が判明しないこと、③証書保管者を決める協議が合意に至らないこと(民法262条)のすべてに該当する場合に利用できます。

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