共有の土地に共有者の1人が建物を建てている場合、土地の利用権はどうなりますか?

回答

共有の土地に共有者の1人が自分の建物を建てている場合、その建物の敷地利用権(占有権原)は、借地権ではなく、共有持分権に基づく使用権です(民法249条1項)。土地共有者の1人だけが借地権者となる形の借地権は、混同(民法179条1項本文・520条)により消滅し、自己借地権(借地借家法15条)の要件も満たさないため、成立しません。

目次

結論

共有の土地に共有者の1人が自分の建物を建てて所有している場合、その者が土地を利用する権原は、原則として共有持分権に基づく使用権です。各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができます(民法249条1項)。この場合の建物所有は、共有土地の上に建物を建築して所有することについての共有者間の合意(使用方法の決定)に基づく状態と整理されます。

これに対し、借地権(賃借権または地上権=建物所有を目的として他人の土地を利用する権利)は、原則として成立しません。土地の共有者が自分自身に対して土地を貸す関係になり、賃貸人と賃借人の地位が一部重なってしまうためです。

根拠と条件

混同の原則

民法上、借地権設定者(賃貸人または地上権設定者)と借地権者(賃借人または地上権者)が同一人物であることは認められていません(民法179条1項本文・520条)。これを「混同」といい、同一人物に権利と義務が帰属した場合には権利が消滅するという原則です。

たとえば、A・Bが共有する土地の上にAが自分の建物を建てるために借地契約を結ぼうとすると、賃貸人がA・B、賃借人がAとなります。Aは賃貸人でも賃借人でもある状態になるため、混同の原則が問題となります。

自己借地権(借地借家法15条)が適用されない理由

混同の原則には例外があります。借地借家法15条は、借地権を「他の者と共に有すること」を要件として、自己借地権(じこしゃくちけん=土地所有者が自らその土地の借地権者を兼ねる借地権)の成立を一定の範囲で認めています。この要件は、賃借人の側に、賃貸人(土地所有者)と賃貸人以外の者の二者以上が含まれていることを意味します。

しかし、本問のように土地がA・B共有で建物がAの単独所有である場合、賃借人となるのはAだけです。賃借人の側に賃貸人以外の者が含まれないため、自己借地権の要件を満たさず、混同は回避されません。その結果、借地権は成立しない(消滅する)ことになります。

なお、自己借地権が成立するか否かを直接判断した裁判例は今のところ見当たらず、特殊な事情により結論が異なる可能性は残ります。

占有権原の違いによる効果の比較

建物の占有権原が借地権であるか共有持分権に基づく使用権であるかは、土地の売却や共有物分割の場面で大きな違いをもたらします。

場面借地権がある場合共有持分権に基づく使用権のみの場合(本問)
他の共有者からの明渡請求借地権を占有権原として拒める持分に基づく占有権原があるため、当然には明渡請求されない
使用の対価契約に基づく地代を支払う持分を超える使用の対価の償還義務を負う(民法249条2項)
共有物分割(全面的価格賠償)賠償金は借地権の負担を考慮して算定される賠償金は借地権の負担のない更地価格(建付減価はありうる)をベースに算定される
共有物分割(換価分割=競売による売却)建物登記があれば買受人に対抗できる(借地借家法10条1項)買受人からの建物収去・土地明渡請求が認められる

具体的な場面での適用

設例1:他の共有者との関係

A・Bが持分2分の1ずつで共有する土地の上に、Aが自分の建物を建てて住んでいるとします。この場合、Aには持分に基づく占有権原があるため、Bは、Aに対して当然には土地の明渡しを請求することはできません。

なお、最高裁は、共有者の1人が共有物を単独で占有している場合であっても、他の共有者は当然にはその明渡しを請求することができないと判断しています(最判昭和41年5月19日)。この判断は、現行法のもとでも基本的に妥当すると解されています。

一方、共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負います(民法249条2項)。設例では、Bは、Aに対して地代相当額の2分の1(Bの持分割合分)の償還を請求できることになります。

設例2:土地が処分される場面

設例1のA・B共有の土地について共有物分割が行われる場合、Aの建物に借地権はないことが前提となります。たとえば、Aが土地全体を取得する全面的価格賠償(=共有者の1人がお金を払って不動産全体を取得する分割方法)では、Bに支払う賠償金は、借地権の負担のない更地価格(建付減価はありうる)の2分の1がベースとなります。

換価分割となり土地が競売で売却された場合には、Aには買受人に対抗できる土地の占有権原がないため、買受人からの建物収去・土地明渡請求が認められることになります。

目次