遺産分割で不動産はどうやって評価しますか?評価方法の種類を教えてください
遺産分割では、遺産を相続人に公平に分配するために、遺産の経済的価値を評価する必要があります。不動産の評価方法には、公示価格・固定資産税評価額・相続税評価額(路線価)などの公的基準を用いる方法と、不動産業者の査定書や不動産鑑定士による鑑定を用いる方法があります。評価は原則として遺産分割時(分割の時点)を基準に行います。
遺産評価の意味と趣旨
遺産分割は、現金・預貯金・株式・不動産・動産などから構成される総遺産を、具体的相続分(各相続人が取得すべき割合)に応じて相続人に公平かつ適正に分配する手続です。この公平な分配を実現するための前提として、各遺産の経済的価値を確定する必要があります。
特に不動産は、預貯金のように金額が明らかな財産とは異なり、評価の方法次第で価格が大きく変わり得ます。たとえば、被相続人Aの遺産が自宅の土地建物(評価額を確定する必要あり)と預貯金3,000万円であり、相続人がB・Cの2名(法定相続分は各2分の1)であるケースでは、不動産の評価額が4,000万円なのか6,000万円なのかによって、各相続人の取得額が大きく異なります。このように、遺産の評価は分割結果を左右する重要な前提となります。
なお、評価が必要となる場面は分割方法によって異なります。現物分割(遺産を現物で分割する)や代償分割(特定の相続人が遺産を取得し、他の相続人に対し代償金を支払う)の場合には、代償金の額等を定めるために評価が必要です。一方、換価分割(遺産を売却して代金を分配する方法)や共有分割の場合には、原則として評価は不要です。
評価の基準時
遺産の評価は、原則として遺産分割時(現実に分割する時点)を基準に行います。相続開始時(被相続人が亡くなった時点)を基準にすると、分割時に価値が下落した遺産を取得する相続人と、価値が維持または上昇した遺産を取得する相続人との間で不公平が生じるためです。
ただし、特別受益や寄与分が主張されている場合には、具体的相続分の算定のために相続開始時の評価も必要となり、相続開始時と遺産分割時の2時点での評価を確定することになります。もっとも、当事者全員の合意があれば、いずれか1時点の評価に統一することも可能です。
不動産の主な評価方法
不動産の評価を確定する方法は、大きく分けて、当事者全員の合意により確定する方法と、不動産鑑定により確定する方法の2つがあります。当事者の合意による確定の際には、以下のような公的評価基準や不動産業者の査定書が用いられます。
公的評価基準
不動産評価の基礎として、主に次の3つの公的基準があります。
公示価格(地価公示価格)とは、国土交通省の土地鑑定委員会が特定の標準地について毎年1月1日を基準日として公示する価格です。取引事例比較法・収益還元法・原価法の3方式を総合して算定されます。売り手・買い手の双方に特殊な事情がない自由な取引において成立する正常な価格を示すもので、不動産評価の指標として広く利用されています。
固定資産税評価額とは、地方税法349条に基づき土地家屋課税台帳等に登録された基準年度の価格です。3年に1回の評価替えが行われます。固定資産税評価額は各不動産ごとに容易に確認できるという利点がありますが、3年に一度しか評価替えがなされないため、地価変動が大きい時期には実勢価格との乖離が生じることがあります。調停実務においては、価格合意の資料として建物価格に固定資産税評価額が利用されることが多いとされています。
相続税評価額(路線価)とは、財産評価基本通達により、相続税・贈与税等の算出の基準として、毎年1月1日時点の価格が対象土地の地目ごとに路線価方式(市街地的地域)または倍率方式(市街地以外の地域)により算定され、各税務署単位で国税庁から公表されている価格です。路線価は公示価格の80%を目処に設定されています。路線価は毎年評価替えがなされるため地価変動を反映しやすく、当事者が納得しやすいことから、路線価を参考として評価合意を得ることが多いとされています。
不動産業者の査定書
調停実務では、当事者に対して不動産業者作成の査定書の提出を求め、当事者間で合意できるよう調整していくことが一般的です。通常、2通以上の査定書の提出を求め、その平均値(中間値)を基準に評価合意を調整し確定します。査定額の差が大きい場合には、さらに査定書の提出を求めて調整する方法がとられます。
不動産鑑定
当事者間で評価の合意ができない場合には、不動産鑑定士を鑑定人に選任し、鑑定を実施して評価を確定します(家事事件手続法64条1項、民事訴訟法212条)。鑑定は、不動産鑑定評価基準に基づき、取引事例比較法・収益還元法・原価法を関連付けて行われるもので、最も客観的かつ精度の高い評価方法ですが、費用と時間がかかります。調停においては、鑑定による評価の確定はあくまで最後にとるべき方法とされています。
評価方法の確定の流れ
遺産分割は当事者の合意により分割することができる手続ですから、遺産の評価についても当事者間の合意により確定することが望ましいとされています。評価方法を確定していく流れは、おおむね次のとおりです。
まず、調停委員会は当事者に対して査定書等の証拠資料の提出を求め、当事者間で合意できるよう調整します。固定資産税評価証明書は通常、調停申立時に提出されていますが、都市圏や市街地に所在する宅地については実際の評価とのかい離があるのが通常ですから、公平な遺産分割を実現するために、査定書等の提出を求めることになります。
査定書を基礎にする方法のほか、固定資産税評価額や相続税評価額(路線価)等の公的基準を基礎にして評価合意がなされることもあります。宅地以外の田・畑・山林等の土地については、固定資産税評価額を基準にしても実際の評価との乖離がないと考えられ、固定資産税評価額を評価額として当事者全員が合意するケースも多くあります。
当事者間でどうしても合意できない場合に、不動産鑑定を実施して評価を確定することになります。

