共有者の一人が行方不明で連絡が取れない、あるいはそもそも誰が共有者なのか分からない ── そうした不動産は、従来、事実上手をつけられず、塩漬けになるほかありませんでした。
しかし、令和3年の民法改正により、所在の分からない共有者がいても、不動産を適正な価格で現金化するための新しい制度ができました。当事務所は、この制度を使った現金化のご依頼をお引き受けしています。
共有者が所在不明だと、不動産は「動かせない」状態になります
不動産を共有している場合、売却などには原則として共有者全員の関与が必要です。そのため、共有者の一人が行方不明だったり、所在が分からなかったりすると、次のような状態に陥ります。
- 売ることも、本格的に活用することもできず、塩漬けになる
- それでも固定資産税などの負担だけは生じ続ける
- 相続が何代も重なった古い土地では、共有者がねずみ算式に増え、誰がどこにいるのか分からなくなっていることも多い
「所在不明」には、所在(居場所)が分からない場合だけでなく、そもそも誰が共有者なのか分からない場合も含まれます。
買取業者にも手が出せない、弁護士の領域です
所在不明の共有者がいる不動産は、通常の不動産業者や買取業者でも扱えません。業者であっても、共有者全員の関与がなければ不動産全体を売ることはできないからです。
この行き詰まりを解く鍵が、令和3年の法改正で新設された裁判所の手続です。所在の調査から、裁判所への申立て、供託、売却までを、代理人として一貫して担えるのは弁護士だけです。「業者に相談しても断られた」という不動産こそ、弁護士の出番です。
法改正でできた、現金化するための2つの方法
① 不動産全体を第三者に売却し、現金化する(民法262条の3)
裁判所の手続を経て、所在不明の共有者の持分を第三者に譲渡する権限が認められます。これにより、所在不明の共有者の持分も含めて、不動産全体を第三者に売却できます。
ただし、この方法を使えるのは、所在の分かる他の共有者全員が、同じ買主に自分の持分を売る場合に限られます。連絡のつく共有者が一人でも売却に反対している場合は、この方法だけでは進められません。
所在不明の共有者の取り分は、売却の前に、裁判所が定める金額を法務局(供託所)に預けておく形で手当てします。これを「供託」といいます。預けられたお金は、後にその方やその相続人が現れれば、受け取ることができます。
「現金化したい」という目的には、通常この方法が基本になります。持分だけを売るより、不動産全体を売却したほうが、はるかに高い価格になりやすいためです。
② 所在不明の共有者の持分を取得し、単独所有にする(民法262条の2)
裁判所の手続により、所在不明の共有者の持分を、あなた(他の共有者)が取得できます。共有を解消して単独所有にしたうえで、改めて売却・活用したい場合に向いた方法です。
なお、他の共有者が共有物分割や遺産分割を裁判所に申し立てたうえで異議を出した場合は、この方法は使えません。
2つの方法における負担の違い
どちらの方法でも、裁判の前に、裁判所が定める金額をあなたが供託する必要があります。違いは、そのお金をどう回収するかです。
- ① 全体売却:供託したお金は、その後の売却代金で回収できます。ただし、売却までの間は立て替えておく必要があります。
- ② 持分取得:供託したお金が、そのまま持分を取得する対価になります。現金化するには、取得したあとで改めて売却する必要があります。
売却代金で回収できる点も、現金化を目的とする場合に①を基本とする理由のひとつです。立替えの資金繰りも含めて、ご相談時に段取りをご説明します。
このようなご相談をお受けしています
- 共有者の一人が行方不明・連絡が取れず、不動産を現金化できずに困っている
- 相続が重なって共有者が増え、誰がどこにいるのか分からない不動産を整理したい
- 感情論ではなく、数字と証拠に基づいて淡々と解決したい
なお、その不動産が相続で共有になったもので、亡くなってから10年がたっていない場合は、この制度をまだ使えないことがあります。そのときは、まず 遺産分割協議・調停での解決を検討することになります。
弁護士が果たす役割
所在の分からない共有者がいる不動産を現金化するために、弁護士は具体的に次のような仕事をします。
「所在不明であること」を調査・立証する
新しい制度を使うには、登記簿・住民票・戸籍などの調査を尽くしても共有者の所在が分からない、ということを裁判所に示す必要があります。どこまで調査すれば「所在不明」と認められるかには判断が必要で、この調査と立証が現金化の入口になります。
「全体を売る」か「持分を取得する」か、最適な方法を選ぶ
現金化には、不動産全体を第三者に売る方法(民法262条の3)と、所在不明の共有者の持分を取得する方法(民法262条の2)があります。資金のご負担、他の共有者の意向、相続が絡むかどうかによって、どちらが有利かが変わります。弁護士は、状況に応じて最適な方法を選び、手続を設計します。
売却先の確保と手続の段取りを組み立てる
全体を売る方法では、譲渡の権限を認める裁判の効力が生じてから2か月以内に売却を済ませないと、その裁判は効力を失います(裁判所の判断で期間を延ばせる場合もあります)。そのため、売却先をあらかじめ確保したうえで申立てを進めることが重要になります。不動産業者(仲介)と連携しながら、現金化までの段取り全体を組み立てます。
供託する金額や評価の妥当性を押さえる
いずれの方法でも、所在不明の共有者の持分の評価が前提になります。供託する金額の算定やその評価の妥当性を踏まえて、手続全体を組み立てます。
裁判所の手続を、最後まで遂行する
これらは裁判所の非訟手続です。申立てから、所在不明と認めてもらうための立証、供託、そして現金化まで、一連の流れを代理人が引き受けます。
現金化の進め方
事案により前後しますが、不動産全体を第三者に売却して現金化する場合(民法262条の3)を例にとると、当事務所では通常、次のように進めます。
法律相談でご事情を伺う
法律相談でご事情を伺い、現金化の見込みと進め方をご案内します。所在不明の状況、不動産の概要、共有関係の見込みを確認します。初回で方針が固まらない場合は、進捗を見ながら方針を決めるため、継続のご相談になることもあります。
委任契約の取り交し
お引き受けする場合は、弁護士委任契約を取り交わし、業務を開始します。
共有者の特定と所在の調査
登記簿・戸籍・住民票などをもとに、共有者を特定し、その所在を調査します。必要に応じて、現地の確認や、連絡の取れる他の共有者への確認も行います。「調査を尽くしても所在が分からない」ことを裁判所に示すための材料を、ここで固めます。この立証が、現金化の最初の関門です。
不動産の評価と方法の選択
不動産を評価します(裁判所に供託する金額の前提になります)。そのうえで、「不動産全体を第三者に売却する(民法262条の3)」か、「所在不明の共有者の持分を取得する(民法262条の2)」か、ご希望と状況に応じて方法を選びます。現金化が目的で、所在の分かる他の共有者全員が売却に応じる場合は、通常は全体の売却を選びます。
売却先の確保
全体を売却する方法では、裁判の効力が生じてから2か月以内に売却を済ませる必要があります。そのため、裁判所の手続と並行して不動産業者(仲介)と連携し、申立ての前に買い手と価格の目処をつけます。
裁判所への申立て・供託
不動産の所在地を管轄する地方裁判所に申し立てます。裁判所は、所在不明の共有者に異議の機会を与えるため公告を行います(異議の届出期間は3か月以上です)。期間内に異議がなければ、裁判所から供託を命じられ、定められた金額を供託すると、譲渡の権限を認める裁判が出されます。
売却・現金化
裁判が確定して効力が生じたら、2か月以内に売却を実行し、現金化します。あなたは自分の持分に応じた代金に加え、所在不明の共有者の持分に当たる代金も受け取り、先に供託したお金はこれで回収する形になります。
手続の性質上、お申し込みから現金化まで、一定のお時間(おおむね半年から1年程度。事案により前後します)をいただきます。見通しは、ご相談の段階でできる限り具体的にお示しします。
弁護士費用
所在不明共有不動産の現金化の弁護士費用は、以下のとおりです(弁護士費用の詳細はこちら)。
| 着手金 | 報酬金 |
|---|---|
| 30万円 (税込:33万円) | ・経済的利益が1000万円以下の場合 経済的利益×10% (税込:経済的利益×11%) ただし、50万円(税込55万円)を下限とします。 ・経済的利益が1000万円を超え、5000万円以下の場合 経済的利益×7%+30万円 (税込:経済的利益×7.7%+33万円) ・経済的利益が5000万円を超え、1億円以下の場合 経済的利益×5%+130万円 (税込:経済的利益×5.5%+143万円) ・経済的利益が1億円を超える場合 経済的利益×3%+330万円 (税込:経済的利益×3.3%+363万円) |
報酬金は、得られた経済的利益に応じて頂戴します。不動産を売却して現金化する場合は、手元に入ったお金の中からお支払いいただけます。
上記の弁護士費用とは別に、実費が必要です。主なものは、裁判所に納める申立手数料・予納金(官報公告の費用)・郵便切手、所在不明の共有者のために供託するお金、必要に応じて不動産鑑定の費用です。供託するお金は、全体売却の場合は売却代金で回収できますが、売却までの間は立て替えていただく必要があります。
法律相談のご案内
所在不明の共有者がいる不動産の現金化について弁護士に依頼するかどうかは、まず法律相談でご検討ください。ご相談では、お話を伺ったうえで、現金化の見込みと進め方をご説明します。
ご相談の流れ・費用・お申し込み方法は、法律相談の流れをご覧ください。
