「特別縁故者」が遺産をもらう方法は?

目次

相続人でなくとも「特別縁故者」なら遺産をもらえる

相続人がいない場合、遺産を相続する人がいないため、国が取得します(民法959条)。

しかし、相続人がいないからといって、直ちに国が遺産を取得するわけではありません。相続人と特別の縁故関係にあった人がいれば、その人に遺産の全部又は一部を分与し、残りを国が取得します(民法958条の3)。

(特別縁故者に対する相続財産の分与)

第九百五十八条の三 前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
2 前項の請求は、第九百五十八条の期間の満了後三箇月以内にしなければならない。

(残余財産の国庫への帰属)
第九百五十九条 
前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第九百五十六条第二項の規定を準用する。

この特別の縁故関係にあった人のことを「特別縁故者」といいます。
つまり、相続人以外の人であっても、誰も相続人がいない場合には、代わりに遺産をもらえる可能性があるということになります。

特別縁故者となるのはどのような人か

民法958条の3・1項では、「被相続人と生計を同じくしていた者」「被相続人の療養看護に努めた者」「その他被相続人と特別の縁故があった者」が特別縁故者になると規定されています。

被相続人と生計を同じくしていた者

「被相続人と生計を同じくする」とは、同一の家庭単位=同一の世帯に属することと解されています。たとえば、内縁の妻・夫や同居していた叔父・叔母などです。

被相続人の療養看護に努めた者

同居をして療養看護をしていた場合が典型ですが、同居をしていなくても、療養看護の内容や期間によっては、通常の親族の交際以上の関係にあるとして、特別縁故者になる可能性があります。

なお、看護師など仕事として療養看護をしていた人は、報酬以上の看護を尽くすなどの特別な事情がない限り、特別縁故者には当たりません。

その他被相続人と特別の縁故があった者

生計を同じくしていた者や療養看護に努めた者に準ずる程度に密接な関係があった者をいいます。

特別縁故者に当たれば、「分与の相当性」も認められるのが通常

特別縁故者が遺産をもらうには、「相当と認めるとき」=分与の相当性が必要です(民法958条の3・1項)。

もっとも、特別縁故者に当たるかどうかの判断の中で、実質的に分与の相当性も判断がなされ、特別縁故者に当たれば、特段の事情がない限り、分与の相当性が認められるのが通常です。

遺産をもらうためには手続が必要

相続財産分与の申立て

特別縁故者が遺産をもらうためには、家庭裁判所に対し、相続財産分与の申立てをする必要があります。

なお、相続財産分与の申立ての前提として、相続財産管理人を選任し、遺産の整理をすることが必要です。
相続財産管理人が選任されていない場合には、まず、特別縁故者が「利害関係人」として、相続財産管理人の選任を申し立てる必要があります(民法952条1項)。

申立てをする裁判所

相続財産の分与の申立ては、亡くなった人の相続開始地の家庭裁判所に行います。
たとえば、東京23区内で亡くなったのであれば、東京家庭裁判所に申立てをします。

申立期間

相続人がいない場合、相続人捜索の公告をします(民法958条)が、相続財産分与の申立ては、相続人捜索の期間満了後、3か月以内にする必要があります(民法958条の3・2項)。
申立期間経過後に申立てをしても、裁判所に取下げを求められるか、却下されますので、申立期間には注意してください。

遺産をどの程度もらえるかは家庭裁判所の裁量

民法958条の3・1項は「家庭裁判所には,…清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる」と規定しており、遺産をどの程度もらえるのかは家庭裁判所の裁量に委ねられています。

具体的には、亡くなった人と特別縁故者との縁故関係の内容、程度、亡くなった人の意思などから判断します。深い縁故関係が長く続いていれば、遺産の全部をもらえる可能性が高くなりますし、逆に、浅い縁故関係だったり、特定の時期だけだったりした場合には、一部もらえるだけになる可能性が高くなります。

それ以外にも、遺産の種類・金額、特別縁故者の年齢・生活状況、生前贈与の有無などを総合して判断がなされます。

相続税を支払う必要がある

特別縁故者が遺産をもらった時は、もらった時の時価で遺贈されたものとみなされ、相続税を支払う必要があります。

目次