アパートの賃料を独り占めしている相続人に何か請求できる?

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遺産分割前の賃貸不動産は相続人全員が共同所有する

遺言がない場合、遺産分割前の遺産は相続人が共同で所有する状態になり、これを「遺産共有」といいます。

遺産分割の話し合いがまとまらないと、亡くなった方の遺産は、相続人全員で遺産共有、つまり、共同で所有している状態が続きます。そのため、賃貸不動産についても、各相続人が共同で所有する状態が続くことになります。

遺産分割前の賃料は各相続人が相続分に応じて取得する

遺産である賃貸不動産は遺産共有となり、遺産分割をする必要がありますが、遺産から生じた賃料は賃貸不動産とは別個の財産(賃料債権)となります。そのため、各相続人は、相続分に応じて、賃料債権という金銭債権を「当然に」取得します。

相続分が2分の1、賃料が月額100万円だったとすれば、遺産分割の話し合いがまとまる前の段階で、月額50万円の賃料を取得することになります(ただし、後述のとおり、経費は控除します)。

賃貸不動産を管理している相続人が賃料を独り占めしていたり、分配し忘れていたりしているようであれば、その相続人対し、相続分に応じた賃料を渡すよう請求できます。

自分で賃貸不動産の管理をしていないと、当然取得したはずの賃料債権を失念してしまうことがよくあります。賃貸不動産の遺産分割のみならず、賃貸不動産から発生した賃料の分配も請求できることは忘れないようにしましょう。

請求できる賃料の金額

固定資産税・都市計画税、管理費・修繕費、損害保険料などの経費については、共同所有者が全体で負担すべきものであり、賃料から差し引かれます。

つまり、各相続人が請求できる賃料の金額は「(賃料の総額-管理費等の総額)×法定相続分」となります。

どのように請求するか

賃貸不動産の賃料は賃貸不動産とは別の財産ですので、賃料を独り占めしている相続人に対しては、原則として、遺産分割ではなく、別途不当利得返還ないし損害賠償を求めることになります。

ただし、賃料を遺産の中に含めること及び賃料と管理費等の金額が話し合いでまとまるのであれば、賃料についても遺産分割でまとめて解決することは可能です。

遺産分割前の賃料の支払いについて、話し合いでまとまらない場合は、不当利得返還ないし損害賠償で民事訴訟を提起することになります。

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