共有不動産の家賃収入(賃料債権)は、各共有者が持分割合に応じて取得するのが原則です。賃料債権は可分債権(分けられる債権)であるため、各共有者は持分割合に応じた金額を分割単独債権として取得し、賃借人に直接請求することもできます(民法427条)。実務上は、共有者の1人の口座に賃料を集約し、そこから各共有者に分配する方法が一般的です。
賃料分配の基本的なルール
共有不動産を第三者に賃貸している場合、賃料はその不動産の使用の対価として受け取る法定果実(民法88条2項)にあたり、各共有者が持分割合に応じて取得します。
また、賃料債権は金銭債権であり、可分債権(分割できる債権)に該当します。可分債権は複数の債権者に分割して帰属するため(民法427条)、各共有者は持分割合に応じた金額の賃料債権を、分割単独債権として取得します。「共有者全員でなければ賃料を請求できない」という関係にはなりません。
たとえば、AとBが建物を持分2分の1ずつで共有し、第三者Dに月額20万円で賃貸している場合、AとBはそれぞれ月額10万円の賃料債権を有することになります。
なお、共有者間で持分割合と異なる分配割合を合意することも可能です。ただし、そのような合意がない場合は、持分割合に応じた分配が原則となります。また、固定資産税や修繕費などの共有物の負担も持分割合に応じて分担するため(民法253条1項)、実際には賃料からこれらの費用を差し引いたうえで分配する例もみられます。
賃料債権の帰属先(物権共有と遺産共有)
賃料債権が誰に帰属するかは、共有の原因によって若干の違いがあります。
物権共有の場合
相続とは関係なく、複数の者が不動産を共有しているケースでは、賃料債権をもつのは賃貸人(賃貸借契約の貸主)だけです。共有不動産の賃貸借において、共有者全員が賃貸人になるとは限りません。管理行為(民法252条1項)として賃貸借契約を締結する場合、持分の過半数で賛成した共有者だけが賃貸人となることもあります。
いずれにしても、賃料債権をもつのは賃貸人だけです。たとえば、賃貸人がA(持分割合20%)とB(持分割合30%)だけである場合、賃料の金額をAとBの持分割合に応じて2:3で分けることになります(当事者間に合意がない場合)。
遺産共有の場合
賃貸人が亡くなり、相続人が賃貸人の地位を承継したケースでは、賃料債権の帰属が民法909条(遺産分割の遡及効)との関係で問題になります。相続財産は遺産分割まで共同相続人の共有に属し(民法898条1項)、遺産分割は相続開始の時にさかのぼって効力を生じます(民法909条本文)。そうすると、遺産分割で不動産を取得した相続人が、相続開始時までさかのぼって賃料の全額を取得するようにも思えます。
この点について、最高裁は、遺産共有の不動産から生じる賃料債権は遺産とは別個の財産であり、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するもので、その帰属は後にされた遺産分割の影響を受けないと判断しています(最判平成17年9月8日)。
この判断により、遺産分割が完了する前であっても、各相続人は自己の相続分に相当する賃料を賃借人に対して直接請求できます。遺産分割の結果、不動産を相続人Aが単独で取得することになった場合でも、遺産分割前に他の相続人が受領した賃料をさかのぼって清算する必要はありません。
ただし、相続人全員が合意し、家庭裁判所が相当と認める場合には、相続開始後に遺産から生じた賃料を遺産分割の対象に含めて処理する取扱いもされています。
賃貸人の相続における賃料の帰属を整理すると、次の表のとおりです。
| 賃料債権の発生時期 | 賃料の帰属 |
|---|---|
| 相続開始前 | 相続財産に含まれ、可分債権として相続分に応じて当然に分割 |
| 相続開始〜遺産分割完了 | 相続財産とは別個の財産として、相続分に応じて当然に分割(遺産分割の遡及効を受けない) |
| 遺産分割完了後 | 不動産の取得者(所有者)に帰属 |
賃料分配の具体的な方法
ステップ1:賃料の回収
実務上は、賃貸借契約書の条項で、賃料の送金先として共有者の1人(代表者)の預貯金口座を指定することが多いです。この場合、他の共有者は代表者に賃料の受領権限を付与した(委任した)と考えることができます。
代表者が賃料の全額を賃借人から受領(回収)した後に、各共有者の持分割合に相当する金額を分配することになります。
ステップ2:各共有者への分配
代表者は、受領した賃料のうち他の共有者に帰属する分を引き渡す義務を負います。これは受任者の引渡義務(民法646条)にあたります。
たとえば、AとBが持分2分の1ずつで共有する建物の賃料月額20万円をAの口座で受領している場合、AはBに対して毎月10万円を支払う義務があります。
ステップ3:分配がされない場合の対応
代表者が分配に応じない場合、他の共有者は、受任者の引渡義務に基づいて代表者に支払を求めるほか、自己の持分に対応する賃料債権に基づいて賃借人に直接請求することも法的には可能です。ただし、賃料支払口座の指定(代理受領)が生きている限り、賃借人が代表者の口座に全額を送金すれば弁済として有効となるため、賃借人に直接請求しても実際に賃料を回収できないことがあります。
代理受領権限の付与は委任の性質があるため、原則として委任者(代表者以外の共有者)が一方的に解消(解除)できます(民法651条1項)。ただし、賃料の支払方法の変更には、共同賃貸人と賃借人との間の合意が必要であると判断した裁判例もあります。

