賃貸借契約の更新には法定更新と合意更新があり、共有者の側で意思決定が必要になるのは合意更新です。合意更新をするという決定が共有物の変更にあたる場合は共有者全員の同意(民法251条1項)が、管理にあたる場合は持分の価格の過半数(民法252条1項)が必要になります。
結論
共有不動産の賃貸借契約の更新にあたって、常に共有者全員の同意が必要なわけではありません。
賃貸借契約の更新は、法定更新と合意更新に分かれます。法定更新は、賃貸人が更新拒絶の通知や異議を述べなかった場合などに法律上当然に生じるもので(借地借家法5条1項、26条1項等)、賃貸人である共有者の側で「更新する」という意思決定をするわけではありません。そのため、共有者間でどこまでの賛成が必要かという問題は生じません。
これに対し、合意更新は、共同賃貸人として契約を更新するという意思決定を伴います。この意思決定が共有物の変更にあたるのか管理にあたるのかによって、必要な賛成の範囲が決まります。
根拠と条件
変更と管理の区別
共有物に変更(形状又は効用の著しい変更を伴うもの)を加えるには、共有者全員の同意が必要です(民法251条1項)。一方、共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決めます(民法252条1項)。
賃借権等の設定については、民法252条4項が、持分の価格の過半数による決定で設定できる期間の上限を定めています。
| 目的物 | 過半数で設定できる期間 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 山林(樹木の栽植・伐採を目的とするもの) | 10年 | 民法252条4項1号 |
| 土地(上記の山林以外) | 5年 | 民法252条4項2号 |
| 建物 | 3年 | 民法252条4項3号 |
条文は、この期間を超えれば当然に変更になると定めているわけではなく、具体的な契約内容によって変更と管理のいずれかに分類する形式をとっています。もっとも、上限を超える長期の賃貸借や、借地借家法の適用によって長期に及ぶ賃貸借は、変更として扱われるのが一般的です。
合意更新をどう位置づけるか
合意更新の性質については、大きく2つの見解があります。
新たな契約の締結と捉える見解は、合意更新をいったん契約が終了したうえでの新たな契約の締結(権利の設定)とみます。これを前提にすると、合意更新は新規の賃貸借契約の締結と同じ分類になります。更新後の期間が民法252条4項の期間を超える場合や、借地借家法(法定更新)の適用がある場合には、原則として変更に分類されます。
法定更新と同じと捉える見解は、合意更新を、従前の賃貸借関係が継続することの確認にすぎないとみます。これを前提にすると、新規契約とは別の取扱いになり、大原則に戻って一律に管理に分類することになります。さらに、更新拒絶をしないのと同じであるという意味で、管理ですらなく保存行為(民法252条5項)に分類するという発想もあります。
個別的事情による分類
合意更新が新規契約と常に同じ分類になるとは限らないという見方もあります。従前の利用態様をそのまま続けることと、新たに共有物を引き渡して利用を始めることとでは、他の共有者に及ぶ影響の程度が違うためです。この見方によれば、新規契約であれば変更に分類されるケースでも、その合意更新は管理に分類される余地があります。結局、事案ごとに、共有者に及ぶ影響の程度によって分類が決まります。
たとえば建物の賃貸借について、当初から賃貸を予定している建物(アパート等)では管理に分類し、更新拒絶の正当事由が認められる状況では新たな契約と同じ分類とする、という整理がなされています。
具体的な場面での適用
土地の賃貸借(借地借家法の適用がない場合)
兄弟A・B・Cが持分3分の1ずつで土地を共有し、A・Bの賛成で資材置場としてDに期間5年で賃貸しているとします。5年の期間が満了し、Cは反対しているものの合意更新をしたい、という場面です。
合意更新を新規契約の締結と同じと考えれば、更新後の期間が5年以下であれば管理にあたります。A・Bの持分の合計は3分の2ですから、Cが反対していても更新を決定できます(民法252条1項)。更新後の期間が5年を超えるならば変更にあたり、Cの同意も必要になります。
一方、一律に管理へ分類するという考え方は、合意更新が法定更新の確認であるという見解を前提としています。この事例は借地借家法の適用がなく法定更新が生じないため、その前提があてはまりません。したがって、期間の長短を問わず一律に管理として扱うことにはならないと考えられます。
建物の賃貸借の合意更新
同じくA・B・Cが持分3分の1ずつで建物を共有し、A・Bの賛成でDに期間2年で賃貸している場合です。
合意更新を新規契約の締結と同じと考えれば、借地借家法の適用があることから、更新後の期間にかかわらず変更に分類されます。一方、合意更新は法定更新の確認であると考えれば、大原則に戻って管理に分類されます。ただし、法定更新であれば期間の定めがないものとなるのに対し、合意更新で期間を定めた場合は法定更新と同じにはなっていません。そのため、更新で定めた期間の長短により、民法252条4項の基準で変更と管理を分類するという解釈も成り立ちます。

