共有している土地を借りている人が「借地権を他の人に譲りたい」と言っています。共有者全員の同意は必要ですか?

回答

賃借権の譲渡・転貸には賃貸人の承諾が必要です(民法612条)。共有している土地の場合、承諾をするかどうかは原則として共有物の管理に関する事項にあたるため、共有者全員の同意は必要でなく、持分の価格の過半数で決められます(民法252条1項)。ただし、個別の事情によっては変更にあたり、全員の同意が必要となる場合もあります(民法251条1項)。

目次

結論

賃借権の譲渡・転貸を承諾するかどうかは、原則として共有物の管理に関する事項として、持分の価格の過半数で決められます(民法252条1項)。承諾をしても、共有者自身がその土地を使えない状態は変わらず、対価として受け取る賃料の額も変わらないため、共有者に及ぼす影響が大きいとはいえないからです。

もっとも、実際に土地を使う人が誰かによって、使用の態様も賃料の支払能力(資力)も異なります。譲渡によって共有者が受ける不利益が大きいといえる個別の事情がある場合には、例外的に変更にあたり、共有者全員の同意が必要となります(民法251条1項)。

根拠と条件

賃貸人の承諾が必要とされる理由

賃借権を譲渡すると賃借人が変わり、転貸をすると実際に不動産を使用する者が原賃借人から転借人に変わります。賃貸人にとって影響が大きいため、賃借権の譲渡・転貸には賃貸人の承諾が必要とされ、これに違反した場合、賃貸人は賃貸借契約を解除できます(民法612条)。

土地の賃貸人が複数の共有者である場合、この承諾をするという意思決定を共有者の間でどのように行うかが問題になります。

「管理」と「変更」のどちらに分類されるか

共有物の管理に関する事項は持分の価格の過半数で決するのに対し(民法252条1項)、共有物に変更を加えるには共有者全員の同意が必要です(民法251条1項)。賃借権譲渡(転貸)の承諾がどちらにあたるかによって、必要な賛成の範囲が変わります。

必要な賛成根拠条文分類される場面
管理(原則)持分の価格の過半数民法252条1項譲受人の使用態様や資力から見て、共有者に格別の不利益が生じない場合
変更(例外)共有者全員の同意民法251条1項個別の事情から共有者が受ける不利益が大きい場合

ここでいう変更とは、共有物の形状または効用の著しい変更を伴うものをいいます。著しい変更を伴わないもの(軽微な変更)は、管理に関する事項として持分の価格の過半数で決められます(民法251条1項括弧書き、民法252条1項)。令和3年改正(2023年4月1日施行)前は、変更にあたれば常に共有者全員の同意が必要とされていましたが、改正によりこの区別が条文上設けられました。

なお、東京地判平成8年9月18日は、共有者全員の同意によって長期の賃借権が設定されている土地について、その賃借権の譲渡を承諾する行為は、譲渡が新たな賃借権の設定と同視され他の共有者の利益を格別に害するといえる特段の事情がない限り、持分の価格の過半数を有する共有者の同意で足りる管理行為であると判断しています。この裁判例は令和3年改正前のものですが、改正は管理として持分の価格の過半数で決められる範囲を狭めるものではないため、承諾を管理行為とする判断は現行法のもとでも当てはまります。

借地権の設定そのものは全員の同意が必要

持分の価格の過半数で設定できる賃借権等は、土地については5年、建物については3年を超えないものに限られます(民法252条4項2号・3号)。建物所有を目的とする借地権は、借地借家法により存続期間が30年以上とされるため(借地借家法3条)、この期間を超えます。そのため、借地権の設定そのものには共有者全員の同意が必要です。

この期間の上限は令和3年改正で新たに条文に置かれたもので、改正前は、民法602条所定の期間を超える賃借権の設定に共有者全員の同意が必要かどうかは解釈に委ねられていました。設定には全員の同意が要るのに、その後の譲渡の承諾は過半数で足りるという違いがあります。

賛否を明らかにしない共有者がいる場合

承諾に賛成する共有者の持分が過半数に達していれば、他の共有者が返答をしなくても、民法252条1項により承諾の意思決定ができます。賛成する共有者だけでは過半数に届かない場合には、相当の期間を定めて賛否を明らかにするよう催告したうえで、期間内に賛否が明らかにされないときに、その共有者を除いた持分の過半数で決することができる旨の裁判を求める方法があります(民法252条2項2号)。

承諾が得られない場合の借地非訟手続

賃借権譲渡のうち借地(建物所有を目的とする土地の賃貸借)の場合には、賃貸人の承諾に代わって裁判所が許可を出す制度があります(借地借家法19条)。借地人が土地上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得しても地主に不利となるおそれがないにもかかわらず地主が承諾しないときに、借地人の申立てにより裁判所が許可を与えるものです(借地借家法19条1項)。土地が共有である場合の相手方については、地主(共有者)全員とする見解と、承諾しない共有者だけとする見解があります。

この申立ては地主が承諾しないことを要件とするため、持分の価格の過半数の賛成によって承諾があったと判断されれば、申立ては不適法となります。もっとも、東京高決昭和53年9月5日は、借地人がいったん承諾を得たと信じている場合であっても、承諾の有無について地主との間に争いがあり協議による解決が得られないときは、承諾に代わる許可を求める申立ての利益が認められると判断しています(借地借家法19条の前身にあたる旧借地法9条ノ2に関する事案です)。

具体的な場面での適用

過半数の賛成で承諾できる場合

A・B・Cが3分の1ずつの持分で土地を共有し、Dに建物所有を目的として賃貸しているとします。DがEに建物と借地権を売却したいとして地主に承諾を求めた場合、承諾が管理に分類されるのであれば、A・Bの賛成(持分の3分の2)によって承諾の意思決定が成立します。Cが承諾料の金額に納得せず反対していても、承諾は有効です。

賛成が過半数に足りないまま承諾した場合

同じ事例で、Aだけが承諾し(持分の3分の1)、DがそのままEに借地権を譲渡したとします。承諾が管理に分類される場合、Aの持分だけでは過半数に達しないため、承諾の意思決定は成立していません。理論上は承諾がないのと同じことになり、無断譲渡として賃貸借契約の解除の対象となります(民法612条2項)。

もっとも、この解除も共有物の管理に関する事項にあたるため、解除をするには持分の価格の過半数の賛成が必要で、共有者の1人が単独で解除することはできません。また、信頼関係が破壊されていないと認められる場合には、解除が制限されることもあります。

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