共有のはずなのに、共有者の1人が勝手に自分の単独名義で登記しています。どうすればいいですか?

回答

共有不動産について共有者の1人が勝手に単独所有の登記をしている場合、他の共有者は、共有持分権に基づく妨害排除請求として、登記を実体に合致させる更正登記手続(一部抹消)を求めることができます。ただし、是正が認められる範囲は、原則として請求した共有者自身の持分を回復する部分に限られます(民法249条、民事訴訟法246条)。

目次

手続の概要

共有不動産に実体と合致しない登記がされている場合、その是正方法は、登記と実体がどの程度合致しているかによって2つに分かれます。

1つ目は「抹消登記」です。登記と実体との間に合致する部分がまったくない場合に、不正な登記の全部を消す方法です。共有者ではない無権利者が単独所有の登記をしているケースがこれにあたります。なお、最高裁は、このような無権利者名義の不正な登記について、共有者の1人が単独で全部の抹消登記手続を請求できると判断しています(最判昭和31年5月10日)。

2つ目は「更正登記」(一部抹消)です。登記と実体の間に部分的な合致がある場合に、合致しない部分だけを是正する方法です。本問のように共有者の1人が単独所有の登記をしているケースでは、その共有者の持分に相当する部分は実体と合致しています。そのため、全部抹消ではなく更正登記によって是正します。

いずれの請求も、法的な根拠は共有持分権に基づく妨害排除請求です。実体と合致しない登記は各共有者の持分権に対する妨害にあたるため、共有者は登記名義人に対し、その排除として登記の是正を求められます。

手続の要件・準備

請求できる者

更正登記手続を請求できるのは、不正な登記によって自己の持分が正しく反映されていない共有者です。共有者全員で請求する必要はなく、1人でも請求できます(固有必要的共同訴訟ではありません)。

是正が認められる範囲

更正登記が認められる範囲は、原則として請求した共有者自身の持分を回復する部分に限られます。

A・B・Cの3名が各3分の1の持分で共有する不動産に、Aが単独所有の登記をしている場合で考えます。Bだけが請求したときは、是正はBの持分3分の1を回復する範囲にとどまり、更正後の登記は「A 3分の2、B 3分の1」となります。Cの持分まで回復するには、Cも原告に加わらなければなりません。B・Cがともに請求すれば、更正後の登記は「A 3分の1、B 3分の1、C 3分の1」となります。

範囲がこのように限られるのは、裁判所は当事者が申し立てていない事項について判決できないこと(処分権主義。民事訴訟法246条)に加え、登記手続のうえでも、訴訟の当事者になっていない共有者の持分に関する部分まで更正を求めることはできないと考えられているためです。

なお、最高裁は、共有者が不正な登記の抹消登記手続を請求した場合であってもその請求は更正登記手続を求める趣旨を含むと解することができ、かつ、各共有者が求めることができるのは自己の持分についての更正登記手続にとどまると判断しています(最判平成22年4月20日)。

処分禁止の仮処分

訴訟の係属中に登記名義人が第三者へ登記を移転すると、その第三者に対する請求を改めて検討しなければなりません。これを防ぐ手段として、訴訟提起に先立ち、処分禁止の仮処分(民事保全法23条1項)を申し立てることが考えられます。処分禁止の仮処分は、処分禁止の登記をする方法によって執行されます(民事保全法53条1項)。

手続の流れ

是正の手続は、登記内容の確認、任意の交渉、訴訟という順序で進みます。

第一段階は、登記と実体のずれの確認です。登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、登記上の権利関係と真実の権利関係を照合します。相続が絡む場合は、戸籍謄本や遺産分割協議書が実体を証明する資料になります。

続いて、登記名義人との交渉です。名義人が任意に応じれば、登記権利者(持分を回復する共有者)と登記義務者(名義人)が共同で更正登記を申請し、手続は完了します(不動産登記法60条)。

任意の是正が見込めない場合は、更正登記手続を求める訴訟を提起します。1個の登記の一部のみを抹消する登記手続は不動産登記法上許されないため、請求は「抹消」ではなく「更正」として構成します。前記の最判平成22年4月20日のとおり、仮に抹消登記手続として請求した場合でも、裁判所はその請求に更正登記手続を求める趣旨が含まれると解して更正登記を命じることができますが、その場合も認められる範囲は自己の持分の回復にとどまります。

勝訴判決が確定すれば、判決に基づいて原告が単独で更正登記を申請できます(不動産登記法63条1項)。

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