共有物分割が成立すると権利関係に変動が生じるため、登記手続が必要になります。現物分割の場合は①分筆登記と②持分移転登記の2段階、代償分割(全面的価格賠償)の場合は持分移転登記を当事者が申請します。換価分割(形式的競売)の場合は、競売手続の中で執行裁判所の嘱託により移転登記が行われます。分割完了後は証書の保存義務も生じます(民法262条)。
手続の概要
共有不動産について共有物分割が成立すれば、共有持分の帰属先が変わるなど権利関係に変動が生じます。不動産の取引と同じように、登記をする法的義務があるわけではありませんが、通常は速やかに登記を行うことになります。
登記の方法は、共有物分割の方法(現物分割・代償分割・換価分割)によって異なります。以下の表で全体像を整理します。
| 分割方法 | 登記の方法 | 登記の申請者 |
|---|---|---|
| 現物分割 | ①分筆登記 + ②持分移転登記 | 当事者が申請 |
| 代償分割(全面的価格賠償) | 持分移転登記 | 当事者が申請 |
| 換価分割(形式的競売による場合) | 所有権(共有持分)移転登記 | 執行裁判所の嘱託 |
換価分割が形式的競売(共有物分割のために裁判所が命じる競売)によって行われる場合は、その手続の中で、執行裁判所の嘱託により買受人への移転登記が行われるため、当事者が自ら登記を申請する必要はありません。これに対し、現物分割と代償分割の場合は、当事者が登記を申請することになります。
分割方法ごとの登記の流れ
現物分割の登記
現物分割は、たとえば共有の土地を物理的に2つに分けて、それぞれを各共有者の単独所有とする方法です。この場合の登記は、次の2段階で行います。
第1段階:分筆登記 共有の土地を2筆以上に分ける登記です。分筆をしただけでは、各土地が直ちに単独所有になるわけではなく、分筆後の各土地にもとの共有関係がそのまま引き継がれます(たとえばA・Bが2分の1ずつ共有していた土地を2筆に分けると、分筆後の各土地もA・Bが2分の1ずつ共有している状態になります)。
第2段階:持分移転登記 分筆後の各土地について、他の共有者の持分を取得者に移転する登記を行います。これにより、各土地がそれぞれの共有者の単独所有になります。
なお、最高裁は、共有物分割の法的性質は承継取得(売買・交換の性質)であり、分割の結果それぞれが単独所有者となる場合には、分筆の登記手続をした上で権利の移転の登記手続をする必要があると判断しています(最判昭和42年8月25日)。このため、登記も原始取得としてではなく、持分の移転という形式で行います。
分筆登記について1点注意があります。分筆登記は、登記上の所有者(表題部所有者または所有権の登記名義人)が申請して行います(不動産登記法39条1項)。もっとも、現物分割がなされた土地については、分筆後の土地についての持分移転登記請求権を被保全権利として、対象土地の取得者が分筆登記の代位申請をすることができます。この場合、共有物分割の確定判決または和解調書の正本が、代位原因を証する書面となります。
代償分割(全面的価格賠償)の登記
代償分割は、共有者の1人が他の共有者に金銭(代償金)を支払って不動産全体を取得する方法です。この場合は、不動産を取得する共有者に対して、他の共有者の持分を移転する登記を行います。
たとえば、A・B・Cの3人で共有する不動産について、Aが全面的価格賠償により取得した場合、BとCはそれぞれの共有持分についてAへの持分移転登記手続をする義務を負います。登記手続は、原則としてBの共有持分・Cの共有持分につき各別に申請することになります。
ただし、BとCの共有持分上に第三者の権利に関する登記(差押え・担保権など)がない場合に限り、便宜上、同一の申請で行うこともできます。その場合でも、登記の実行としてはBの共有持分・Cの共有持分につき各別に行われます。
換価分割(形式的競売)の登記
換価分割が形式的競売によって行われる場合は、競売手続の中で、執行裁判所の嘱託により、買受人への所有権(共有持分)の移転登記が行われます。当事者が自ら登記を申請する必要はありません。
登記申請における記載事項と注意点
登記の目的
登記実務上、共有物分割による登記は、所有権移転の登記または所有権一部移転の登記ではなく、持分移転の登記によるべきものとされています。たとえば、A・B・C共有の不動産をAの単独所有とする場合、登記の目的は「B及びC持分全部移転」と記載します。
登記原因とその日付
当事者が申請する現物分割・代償分割の登記の登記原因は、「○年○月○日共有物分割」と記載します。日付は、共有者全員の協議が成立した日、裁判による分割の場合は判決確定日です。
なお、共有物分割協議(共有者間の話し合いによる分割の合意)では、共有持分取得の対価として金銭ではなく他の財産を給付する合意をすることもできます。たとえば、A・B共有の甲土地をAの単独所有とする代わりに、Aが単独で所有する乙土地をBに移転して補償するという内容です。この場合、代償として給付する財産(乙土地)についても所有権移転登記が必要になり、その登記原因は「○年○月○日共有物分割による交換」となります。
登記権利者の住所が変わっている場合
共有物分割による持分移転登記の申請に際して、登記権利者となる共有者の現在の住所が登記記録上の住所と異なる場合は、あらかじめ所有権登記名義人住所変更登記をしなければなりません。
登録免許税
「共有物分割」を登記原因とする持分移転登記の登録免許税の税率は、1,000分の4とされています(登録免許税法別表第一・一(二)ロ)。ただし、この税率の適用を受けるには、登録免許税法施行令9条の要件を満たす必要があります。具体的には、持分移転登記の直前に分筆登記がされており、その持分移転登記が、分筆に係る他の土地の持分移転登記と同時に申請された場合に、登記の前に有していた持分に応じた価額に相当する部分について、1,000分の4の税率が適用されます。これ以外の場合の税率は、1,000分の20です(同別表第一・一(二)ハ)。
証書の保存義務
共有物分割が完了したときは、対象物に関する証書を保存する義務が生じます(民法262条1項)。証書保存義務の対象となる証書について民法上の明確な規定はありませんが、たとえば、①契約書(共有不動産を購入したときの売買契約書)、②納税証明書(公租公課の納付証明書)、③判決書(共有不動産に関する訴訟の判決書)などがあげられます。
証書を保存する者については優先順序が定められています。①分割の結果、単独所有となった者(民法262条1項)、②分割の結果、最大の部分を取得した者(同条2項)、③最大の部分を取得した者がないときは、分割者間の協議で保存者を定め、協議が調わないときは裁判所が指定します(同条3項)。
民法の規定だけでは証書を保存する者を判定できない場合には、裁判所が証書保存者を指定する手続(非訟事件手続法86条)があります。この証書保存者指定請求の手続は、①共有物分割を行ったこと、②最大部分が判明しないこと、③証書保管者を決める協議が合意に至らないこと(民法262条)のすべてに該当する場合に利用できます。

