共有不動産でもめたとき、話し合い・調停・裁判のどれを選べばいいですか?

回答

共有不動産の紛争解決手続には、話し合い(協議)・調停・裁判(訴訟または審判)があります。どの手続によるかは共有の種類で異なります。通常の共有(物権共有)では、協議が調わなければ共有物分割訴訟を提起でき(民法258条1項)、調停を経る義務はありません。相続による共有(遺産共有)では、遺産分割の手続(協議・調停・審判)によります(民法907条)。

目次

紛争解決手続の全体像と趣旨

共有不動産をめぐって共有者間で意見が対立した場合、紛争を解決するための手続は、話し合い(協議)、調停、裁判(訴訟または審判)の3つに大別できます。

これらの手続が段階的に用意されている趣旨は、まず当事者間の自主的な合意による解決を促し、それが困難な場合に、調停委員会や裁判所という第三者の関与のもとで解決を図る点にあります。

もっとも、どの手続を利用できるかを考えるうえで最も重要なのは、その共有不動産が「通常の共有(物権共有)」なのか「相続による共有(遺産共有)」なのかという区別です。この区別によって、利用すべき手続の種類も、手続を担当する裁判所も異なります。

たとえば、AとBが資金を出し合って土地を購入した場合は物権共有であり、共有物分割の手続によります。他方、父が亡くなり、子A・Bがまだ遺産分割をしていない不動産を相続した場合は遺産共有であり、原則として遺産分割の手続によることになります。

各手続の内容と要件

話し合い(協議)

いずれの共有でも、出発点は共有者(相続人)全員による話し合いです。物権共有の場合の共有物分割協議も、遺産共有の場合の遺産分割協議も、全員の合意が成立すれば、裁判所を利用せずに共有関係を解消できます。分割の方法・金額・時期などを当事者が納得する内容で柔軟に定められる点が特徴です。

反面、協議は全員の合意がなければ成立しません。1人でも反対する共有者がいれば、協議による解決はできないことになります。

調停

調停とは、裁判所において、裁判官と調停委員で構成される調停委員会の仲介のもと、当事者間の合意による解決を目指す手続です。

遺産共有の場合には、家庭裁判所の遺産分割調停を利用します(家事事件手続法244条・別表第二)。遺産分割は審判事項であり、訴えを提起する事件ではないため、調停を先に申し立てなければならないという法律上のルール(調停前置主義。家事事件手続法257条1項)の適用はありません。もっとも、実務上はまず調停から申し立てるのが通常であり、調停を経ずに審判を申し立てた場合でも、裁判所は職権で事件を調停に付すことができます(家事事件手続法274条1項)。

物権共有の場合には、民事調停法に基づく民事調停を利用することもできます。ただし、共有物分割にも調停前置主義の適用はなく、調停を経るかどうかは任意です。

裁判(訴訟・審判)

協議・調停で解決しない場合に、裁判所の判断によって分割を実現する手続です。

物権共有の場合は、共有物分割訴訟を提起します(民法258条1項)。裁判所は、現物分割(不動産を物理的に分ける方法)、賠償分割(共有者の1人が金銭を支払って持分を取得する方法。全面的価格賠償を含む)のいずれかを命じ、これらの方法によることができないとき等は競売による換価分割を命じます(民法258条2項・3項)。

遺産共有の場合は、家庭裁判所の遺産分割審判によります(民法907条2項)。遺産分割調停が不成立となったときは、調停申立ての時に審判の申立てがあったものとみなされ、審判手続に移行します(家事事件手続法272条4項)。

項目物権共有の場合遺産共有の場合
手続の流れ協議 →(調停)→ 訴訟協議 → 調停 → 審判
根拠条文民法256条・258条民法907条、家事事件手続法244条・別表第二
調停の位置づけ任意(調停前置なし)法律上の調停前置はないが、実務上は調停を先行させるのが通常
担当する裁判所地方裁判所(訴額によっては簡易裁判所)家庭裁判所
裁判所が命じる分割方法現物分割・賠償分割・換価分割現物分割・代償分割・換価分割など

物権共有と遺産共有で異なる手続の流れ

物権共有の場合

物権共有では、共有物分割協議が調わないとき、または協議をすることができないときに、共有物分割訴訟を提起できます(民法258条1項)。調停を経る必要はないため、協議が不調に終われば、直ちに訴訟へ進むことが可能です。

共有物分割訴訟が提起されると、特殊な事情がある場合を除き、裁判所は判決によって何らかの分割方法を定めます。このため、共有物分割訴訟は、協議で解決に至らない場合の最終的な解決手続として位置づけられています。

遺産共有の場合

遺産共有では、共有物分割訴訟によって分割をすることはできず(民法258条の2第1項)、遺産分割の手続(協議→調停→審判)によって共有関係を解消します。この取扱いは、相続開始から10年を経過しても変わりません。ただし、相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、特別受益や寄与分を反映した具体的相続分の主張が原則としてできなくなります(民法904条の3)。

物権共有と遺産共有が混在する場合

共有者の1人が亡くなって複数の相続人がその持分を相続した場合など、1つの不動産に物権共有と遺産共有が混在するケースがあります。この場合、遺産共有持分と物権共有持分との間の分割は、共有物分割訴訟によって行います。

なお、最高裁は、遺産共有持分と通常の共有持分が併存する共有物について、両者の間の分割は共有物分割訴訟によるべきであり、遺産共有持分に対応して取得された財産は遺産分割の対象として残る、と判断しています(最判昭和50年11月7日)。

さらに、令和3年改正により、相続開始から10年を経過したときは、共有物分割訴訟の中で、遺産共有持分についての相続人間の分割まで行うことができるようになりました(民法258条の2第2項)。ただし、相続人が所定の期間内に異議の申出をしたときは、この方法によることはできません(同条2項ただし書・3項)。

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