共有物分割の請求に期間制限はなく、離婚から何年経っていても、不動産が元配偶者との共有名義のままであれば分割を請求できます(民法256条1項)。離婚の時から2年を経過すると請求できなくなる財産分与(民法768条2項)とは異なります。
結論
民法256条1項は、「各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる」と定めています。条文が「いつでも」と明記しているとおり、共有物分割の請求に期間制限はありません。離婚から何年経過していても、不動産が元配偶者との共有のままである限り、元配偶者を相手方として分割を請求できます。
一方、離婚に伴う清算手続である財産分与は、離婚の時から2年を経過すると請求できなくなります(民法768条2項)。共有物分割と財産分与は別の手続であり、期間制限の有無がいちばん大きな違いになります。
根拠と条件
財産分与との違い
財産分与(民法768条)は、夫婦が婚姻中に協力して得た財産(実質的共有財産)を離婚に際して清算する手続です。対象は実質的共有財産の全体で、家庭裁判所の調停・審判で扱われます。これに対して共有物分割(民法256条)は、特定の共有物について物権法上の共有関係を解消する手続で、協議が調わないときは地方裁判所に訴えを提起します(民法258条1項)。
| 項目 | 共有物分割 | 財産分与 |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 民法256条・258条 | 民法768条 |
| 期間制限 | なし | 離婚の時から2年(民法768条2項) |
| 対象 | 特定の共有物(物権法上の共有) | 実質的共有財産の全体 |
| 手続・管轄 | 共有物分割訴訟(地方裁判所) | 家事調停・審判(家庭裁判所) |
離婚から2年が経過すると財産分与は請求できませんが、共有物分割にはこの制限が及びません。離婚時に清算しきれなかった共有不動産は、共有物分割によって解消するのが基本の道筋です。
登記上の共有であることが前提
共有物分割を請求できるのは、不動産が物権法上の共有、すなわち登記上も元夫婦の共有名義になっている場合です。婚姻中に夫婦の収入で購入した不動産でも、登記が夫または妻の単独名義であれば物権法上の共有ではないため、共有物分割の対象にはなりません。単独名義の不動産の清算は、本来、財産分与で扱う問題です。
遺産共有(相続によって生じた共有)の解消が原則として遺産分割の手続によること(民法258条の2第1項)とも異なり、元夫婦の共有は通常の物権共有ですから、共有物分割の手続をそのまま利用できます。
具体的な場面での適用
離婚後も共有が残る典型的なケース
離婚後も不動産が元夫婦の共有名義のまま残るのは、たとえば次のような場合です。
- 婚姻中に夫婦共有名義で購入し、財産分与で処理しないまま離婚した
- オーバーローン(不動産の価値より住宅ローンの残債務額が大きい状態)だったため、財産分与の対象から外して共有のままにした
- 財産分与の合意はしたものの、当該不動産の扱いだけ取り決めがなかった
いずれの場合も、共有名義が残っている限り、元夫婦のどちらからでも共有物分割を請求できます。
元配偶者からの反論はどう扱われるか
離婚から長期間が経過した後の請求に対しては、元配偶者から「分割しない合意があったはずだ」「今さらの請求は権利の濫用だ」といった反論が出ることも珍しくありません。もっとも、すでに離婚した元夫婦については共有関係を解消しておくことが望ましいため、裁判所は権利の濫用を認めない傾向にあります。共有を残した経緯に特殊な事情がある場合は別として、分割請求は認められる方向で判断されるのが通常です。
共有物分割の請求が権利の濫用として認められないのはどのような場合かについては、「共有不動産の分割を請求しても、認められないことはありますか?」で解説しています。
持分割合の認定
離婚後の共有物分割では、登記上の共有持分割合がそのまま使われるとは限りません。購入資金をどちらがいくら負担したかなどの個別的な事情から、裁判所が実質的な持分割合を認定する場合があります。
裁判例には、離婚から2年以上経過した元夫婦間の事案で、分割請求は権利の濫用にあたらないとしたうえ、購入資金の負担に基づいて持分割合を認定し、婚姻中の住宅ローン返済の寄与も代償金の算定に反映して、全面的価格賠償(共有者の1人がお金を払って不動産全体を取得する方法)による分割を認めたものがあります(東京地判平成26年10月6日)。

