自分の共有持分を他の共有者に買い取ってもらうには、どうすればいいですか?
自分の共有持分を他の共有者に買い取ってもらう方法は、①任意交渉による持分売買、②共有者全員での共有物分割協議における代償分割の合意、③共有物分割訴訟による全面的価格賠償の判決、の3つです。買取価格は、対象不動産全体の時価に持分割合を乗じた金額が基本となります。
買い取ってもらうための3つの方法
共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができます(民法256条1項)。その手段として、自分の共有持分を他の共有者に買い取ってもらう方法は、大きく次の3つに整理できます。
第1に、任意交渉による持分売買契約です(民法555条)。相手方の共有者が買い取りを承諾すれば、通常の不動産売買と同じ仕組みで、代金の支払と引換えに共有持分の移転登記を行います。
第2に、共有者全員による共有物分割協議における代償分割の合意です(民法256条・258条1項)。共有者の1人が共有不動産を取得し、その代わりに他の共有者に対して持分の価格に相当する代償金(賠償金)を支払うという内容の合意を、共有者全員で行う方法です。
第3に、協議が整わない場合の共有物分割訴訟による全面的価格賠償の判決です(民法258条2項2号)。裁判所が、特定の共有者を現物取得者として定めたうえで、他の共有者に対する賠償金の支払を命じる分割方法で、令和3年改正で条文上も明記されました。
これら3つの方法は、任意交渉 → 共有物分割協議 → 共有物分割訴訟、という順で段階的に選択されていくのが通常です。任意交渉や協議で合意できれば最も簡便ですが、合意が得られない場合には、最終的に訴訟によることになります。
買取価格(相場)の決まり方
買取価格の基本は、対象不動産全体の時価に持分割合を乗じた金額です。
例:時価3,000万円の共有不動産を持分3分の1で共有
3,000万円 × 1/3 = 1,000万円
ここで注意すべきなのは、共有減価の扱いです。共有減価とは、共有持分は単独では利用・処分が難しいため、持分だけを売却する場合には時価に持分割合を乗じた金額よりも低く評価されるという考え方で、第三者に持分を売却する場面では一般に適用されます。
これに対し、他の共有者が買い取る場合には、買い取った共有者が結果的に単独所有者となり、共有であることによる制約が解消されるため、共有減価を適用しないのが通常です。この点が、持分を第三者に売却する場合との大きな違いです。
共有物分割訴訟による全面的価格賠償では、共有者間で評価額について合意ができないことが多く、裁判所が選任する不動産鑑定士の鑑定によって評価額が決まるのが原則です。任意交渉の段階でも、金額の根拠として私的鑑定書や不動産業者の査定書が用いられることがあります。
なお、当事者全員が合意する場合には、時価と異なる金額を買取価格とすることも可能です。実務では、親族間であることや買い手側の資金事情を踏まえて、時価よりも低い金額で合意するケースも珍しくありません。
手続の流れと所要期間
実際の流れは、段階的に次のように進みます。
ステップ1:任意交渉(協議)
まず、他の共有者に買取の意向を打診し、買取価格・支払時期・登記費用の負担などの条件を協議します。合意に至れば、持分売買契約書を作成し、代金決済と持分移転登記を同時履行で行います。交渉開始から決済までの期間は、数か月から長くて1年程度が目安です。
ステップ2:共有物分割協議
任意の交渉で合意できない場合には、共有者全員が参加する共有物分割協議に移行します。共有物を取得する共有者と、代償金を受け取る共有者とを定め、全員の合意として代償分割の内容を確定させます。協議がまとまれば、訴訟によらずに持分売却と同じ結果を得られます。
ステップ3:共有物分割訴訟
協議が整わない場合、地方裁判所に共有物分割訴訟を提起します(民法258条1項)。裁判所は、現物分割・全面的価格賠償・換価分割のうち、相当な分割方法を選択します。令和3年改正により、現物分割と全面的価格賠償が同順位、換価分割が補充的という条文構造になっています(同条2項・3項)。
全面的価格賠償の判決が出されるためには、最高裁判例が示す相当性(特定の共有者に取得させることが相当であること)と、実質的公平性(価格が適正に評価され、現物取得者に支払能力があること)の要件を満たす必要があります。なお、最高裁は、共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情が存するときは、全面的価格賠償の方法による共有物分割も許されると判断しています(最判平成8年10月31日)。
判決では、賠償金支払の給付命令(民法258条4項)や、賠償金の支払と持分移転登記を引換えとする引換給付判決などの履行確保措置が付されるのが一般的です。
訴訟提起から判決確定までの期間は、鑑定手続を含めて1年半から2年程度が目安となります。

