相続人全員が合意すれば、遺産である土地を分筆して(1筆の土地を複数の土地に分けて)、分筆後の土地をそれぞれの相続人が取得できます。土地を売却せず、そのままの形で分ける現物分割の応用です。実現には、関係法令上分筆が可能であることと、相続人全員が協力して測量を行い、地積測量図を作成することが必要です。
結論
遺産である土地の分筆による分割は、相続人全員がこの方法に合意し、協力できる場合にできます。土地を売却して換金するわけではないため、遺産をそのままの形で相続人に取得させる現物分割の応用と位置づけられる方法です。
相続人全員の合意と協力が欠かせないのは、分筆による分割では分筆登記が必要になり、その前提として、相続人全員が協力して行う測量と、その結果を記載した地積測量図の作成が不可欠だからです。合意や協力が得られないまま審判に移行しても、審判で分筆による分割が選択されることは基本的にありません。このため、分筆による分割を選択できるのは、実際上、協議または調停がまとまる場合に限られます。
根拠と条件
協議や調停では、相続人全員が合意すれば、分割の方法を自由に決めることができ、分筆による分割もその一つとして選択できます。遺産の分割方法の中でも、現物分割は原則的な分割方法とされています。
なお、最判昭和30年5月31日は、遺産の分割には共有物の分割に関する民法256条以下の規定が第一次的に適用されると判断しています。
分筆による分割を進めるための条件は、次のとおりです。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| ① 相続人全員の合意 | 分筆して分割すること、分筆線(どこで分けるか)、分筆後のどの土地を誰が取得するかについて、全員が合意していること |
| ② 関係法令上、分筆が可能であること | 建築基準法や都市計画法、建築安全条例など、関係する法令・条例の確認が必要です。所在地や地積によっては、分筆ができない土地もあります |
| ③ 測量と地積測量図の作成 | 相続人全員が協力して測量を行い、方位、地番、隣地の地番、地積、求積の方法、境界標などが記載された分筆後の土地の地積測量図を作成すること(不動産登記令別表8項) |
分筆による分割では、各相続人が取得する土地の範囲を確定して分筆登記を行い、取得した相続人が相続(または遺産分割)を原因とする所有権移転登記の手続をできるようにする必要があります。調停成立までに分筆登記が完了していない場合には、地積測量図を調停調書に添付し、図面上で取得部分を特定します。分筆登記が完了している場合には、分筆後の地番・地積等で特定された各土地を取得する内容の条項となるため、地積測量図の添付は不要です。
これに対し、分筆による分割について相続人全員の合意ができない場合には、この方法を選択できません。調停が不成立となって審判に移行した後に、相続人が分筆による現物分割を主張しても、審判でこの方法が選択されることは基本的にありません。審判で選択され得るのは、審判への移行前に、相続人全員の協力によって地積測量図が完成し、分筆線について全員が合意し、分筆後の各土地の評価額が合意または鑑定によって確定し、取得者も決まっていたにもかかわらず、それ以外の争点(他の遺産の分割方法、特別受益・寄与分、葬儀費用や債務の負担など)のために調停が不成立となったような、例外的な場合に限られます。
分筆による分割のメリットと注意点
分筆による分割が検討される典型的な場面は、次の2つです。第一に、土地の評価額が高く、1人の相続人が単独で取得すると相続分(具体的取得分)を大きく超えてしまうものの、どの相続人にも代償金を支払う資力がない場合です。第二に、広い1筆の土地の各一部を複数の相続人が事実上使用しており(それぞれが自分の建物を所有している場合など)、その使用を遺産分割後も続けたい場合です。
分筆による分割には、土地を売却することなく、また代償金を用意することなく、相続分に応じた分割ができるという利点があります。土地を手放したくないものの、単独での取得も代償金の支払も難しい場合の選択肢となります。分筆後の各土地の評価額が相続分とちょうど一致しない場合には、差額を代償金で調整する方法(代償分割との併用)もあります。
一方で、注意点もあります。所在地や地積、関係法令との関係で、そもそも分筆ができない土地があります。測量・地積測量図の作成・分筆登記には、相続人全員の協力に加えて、相応の費用と期間を要します。分け方によっては、既存の建物や物置の撤去が必要になる場合もあります。
分筆による分割が難しいときは、土地を売却して代金を分ける換価分割などが検討されることになります。換価分割については、「遺産を売却してお金で分ける「換価分割」とは何ですか?」で詳しく解説しています。

