遺産分割で同族株式はどのように評価する?


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同族株式の評価方法は複数ある

同族会社は非上場であることがほとんどで、上場株式とは異なり、株式市場で取引されていません。非上場株式は、市場価格で株式を評価できませんので、別の方法で評価することになります。

一般的に、非上場株式の評価方法は複数あり、代表的なものは以下になります。

  1. 会社の純資産に着目した評価方法
  2. 会社の収益性に着目した評価方法
  3. 類似した上場企業との比較に着目した評価方法
  4. 税務申告の基準として国税庁が定めている評価方法

なお、会社の実情に合わせてこれらの評価方法を組み合わせる場合もあり、非上場株式の評価は複雑かつ難解です。

相続税申告書の評価額は遺産分割における評価額ではない

評価方法が複数ある中、遺産分割で比較的よく用いられる評価方法は、相続税申告の基準である財産評価基本通達になります。評価方法が複雑なことには変わりありませんが、基準が明確で、しかも、相続税申告で税理士が評価書を作成するため、別途費用をかけて株式評価してもらう必要がないからです。

しかし、相続税申告の評価方法を遺産分割においても用いるのは、あくまでも便宜上の理由によるものであり、本来、イコールではありません。

特に、事業承継の準備で相続税対策をしている場合、株式評価が低く抑えられていることも多く、そのような場合に相続税申告の評価方法を遺産分割でも用いると、株式を取得する相続人(主に経営を引き継ぐ相続人)が得をします。

非上場株式の鑑定にはかなりの費用がかかる

それでは、株式の鑑定をすればいいかというと、話はそう単純ではありません。非上場株式の鑑定にはかなりの費用がかかり、最低でも数十万円、数百万円になるのも普通だからです。

相続人全員の同意があれば相続財産から鑑定費用を出すことができますが、そもそも高額なため、相当額の相続財産がないとコストパフォーマンスが悪いです。

遺産分割では会社の純資産を基準に考えることも検討する

非上場株式の評価方法は複数あり、正式には株式鑑定で評価しますが、どのような場面で株式を評価するのかも考慮する必要があります。

たとえば、M&Aにおいても株式の評価を行いますが、会社の継続価値を評価しますので、遺産分割の場面とは評価方法が違ってもおかしくありません。むしろ、遺産としての株式価値に着目する遺産分割においては、会社の純資産を基準に考えることも検討すべきです(ケースバイケースではありますが)。

会社の不動産は時価に引き直す

会社の資産に不動産(借地を含む)がある場合、貸借対照表において取得時の価格のまま計上され、時価よりも低い評価額になることが多いです。

そのままだと株式評価でも現在価値が反映されていないことになりますので、相続税評価や会社の純資産をベースに評価する場合でも、不動産については、簿価ではなく、時価に引き直した方がいいです。

同族株式の評価はとても複雑

このように、同族株式の評価はとても複雑で、通常の相続人が適切な評価方法を選択するのは困難です。
明らかに赤字の会社でない限りは、専門家に相談するのが無難でしょう。

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