特別受益にならない人がいる?孫や代襲相続人の場合は?

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特別受益になるのは共同相続人のみ

他の相続人の中に、被相続人(亡くなった人)から生前贈与を受けている人がいた場合、同じ相続分を受けると不公平になります。そのため、法律は、そのような不公平を修正する制度を用意しています。

相続分の前渡しといえる特別な贈与を「特別受益」といい、特別受益を計算上相続財産に戻すことを「特別受益の持ち戻し」といいます。

特別受益の持ち戻しは、相続人間の不公平を修正するための制度ですので、特別受益となるのは(共同)相続人のみです。

相続人の配偶者や子が受けた生前贈与

相続人の配偶者や子(被相続人から見れば孫)は相続人ではありませんので、相続人の配偶者や子が受けた生前贈与は、原則として特別受益とはなりません。

しかし、単に名義のみ配偶者や子にしたような場合には、実際は相続人に対する生前贈与になりますので、当該相続人に対する特別受益になります。問題は、単に名義のみなのかどうかですが、案件に応じて、被相続人の意思を個別具体的に検討することになります。

代襲相続の場合

被代襲者が受けた生前贈与

代襲相続の場合、代襲相続人は被代襲相続人の地位を引き継ぐわけですから、被代襲者が得た特別受益としての生前贈与は持ち戻しの対象となります

つまり、本来の相続人である父が亡くなっていた場合、被代襲者である父が受けた特別受益としての生前贈与は、遺産分割において、持ち戻しの対象となります。

代襲相続人が受けた生前贈与

被代襲者ではなく、代襲相続人が受けた特別受益としての生前贈与については、考え方が分かれています。

【考え方①】代襲原因の発生時期で分ける考え方

代襲原因が発生する前に受けた生前贈与は持ち戻しの対象とならないが、代襲原因が発生した後に受けた生前贈与は持ち戻しの対象となるという考え方です。この考え方が通説と言われています。

この考え方によれば、代襲相続人が受けた生前贈与が被代襲者の死亡前であれば、代襲原因発生前の生前贈与ですので、持ち戻しの対象にはならないことになります。

【考え方②】代襲原因の発生時期に関わらず持ち戻す考え方

生前贈与の時に代襲原因が発生していたかどうかを問わず、代襲相続人が受けた生前贈与を持ち戻す考え方です。

この考え方によれば、代襲相続人が受けた生前贈与が被代襲者の死亡前であっても、持ち戻しの対象になります。
しかし、同じく生前贈与を受けた孫がいた場合、たまたま代襲相続が発生した方は持ち戻し、代襲相続が発生していない方は持ち戻さないことになりますので、逆に不均衡になるともいえます。

後妻が結婚前に受けた生前贈与

なお、後妻がいて、結婚前に被相続人から生前贈与を受けている場合もあります。
しかし、結婚前は妻になりませんので、生前贈与を受けたときは推定相続人ではなかったことになります。
このような場合、結婚前、つまり、推定相続人の立場になる前に受けた生前贈与も持ち戻しの対象になるかどうかが問題になります。

ここも考え方が分かれていますが、共同相続人間の公平の観点から、結婚前に受けた生前贈与も持ち戻しの対象になるとするのが一般的です。

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