遺産分割未了の間に共同相続人の一人が死亡した場合に、第二次被相続人が取得した第一次被相続人の遺産に対する相続分に応じた共有持分権は、抽象的な法的地位ではなく、第二次被相続人の遺産を構成する実体上の権利です。本判例は、この共有持分権を第二次被相続人の共同相続人らに分属させるには遺産分割手続を経る必要があり、第二次被相続人から特別受益に当たる贈与を受けた者があるときは、その持戻しをして各共同相続人の具体的相続分を算定しなければならないと判示した、いわゆる「数次相続(再転相続)」事案の処理について最高裁が初めて明示した重要決定です。
判例情報
- 裁判所:最高裁判所第三小法廷
- 判決日:平成17年10月11日
- 事件番号:平成17年(許)第14号
- 関連条文:民法896条、898条、899条、900条、903条、907条/家事事件手続法(当時の家事審判法9条)、家事事件手続規則(当時の家事審判規則104条)
事案の概要
本件は、夫Aが死亡し、その遺産分割が未了の間に妻Bが死亡したという数次相続(裁判所はこれを「再転相続」とも表現します)の事案で、AとBの遺産分割審判が併合審理された事件です。第二次被相続人Bが取得したAの遺産に対する共有持分権がBの遺産分割の対象となるか、Bからの特別受益の持戻しが必要かが争われました。
登場人物
- A(夫・第一次被相続人):平成7年12月7日死亡。不動産・現金等を遺産として残した。
- B(妻・第二次被相続人。Aの相続人でもある):平成10年4月10日死亡。Aの遺産分割未了の間に死亡。固有財産として不動産を所有していたが、これは遺言で全部Xに承継させる旨を遺言公正証書で定めていた。
- Y1(長男・抗告人):Aの事業を承継。Aから不動産の生前贈与を受けており、Aとの関係で特別受益あり。
- X(次男・相手方):Bからの遺言により12・13の不動産を承継。Aと共同で自宅敷地・建物を購入。
- Y2(三男・相手方):Aから生前の経済的援助を受けており、Aとの関係で特別受益あり。Bからも特別受益に当たる贈与を受けたとの主張がある。
時系列
- 昭和17年2月:AとBが婚姻
- 平成7年12月7日:A死亡(第一次相続開始)。A の遺産は不動産5筆と現金2口。
- 平成8年12月27日:Bが、自己所有の不動産2筆をXに相続させる旨の公正証書遺言を作成
- 平成10年4月10日:B死亡(第二次相続開始。Aの遺産分割未了)
- 平成15年4月:XがA・Bの各遺産分割調停を和歌山家裁に申立(後に審判手続に移行)
- 平成16年8月:原々審(和歌山家裁)審判
- 平成17年2月:原審(大阪高裁)決定。Bに係る遺産分割申立てを却下し、Aの遺産についてもAとの関係における特別受益のみを持戻す処理。
- 平成17年10月11日:最高裁決定(原決定破棄、差戻し)
経緯
A・B夫妻にはY1・X・Y2の3人の子があり、Y1は長男として地元にとどまり、Aの事業を承継しました。Aは生前、Y1に事業の本拠となる土地建物を贈与しており、Aとの関係でY1には特別受益(その額は合計3700万円台)が存在しています。Y2にもAから経済的援助があり、これもAとの関係で特別受益と評価されました。
平成7年12月7日にAが死亡し、Aの相続人としてB・Y1・X・Y2の4名が法定相続人となりました。Aの遺産には不動産5筆と現金2口があり、これらが遺産分割の対象となります。しかし、相続人間で遺産分割協議が整わないまま、平成10年4月10日にBが死亡しました。
Bは、自己の固有財産として不動産2筆を所有していましたが、これらについては平成8年12月27日付けの公正証書遺言によりXに相続させる旨の遺言を残していました。したがって、Bの遺産のうちこの不動産2筆は、Bの死亡と同時に遺言に基づいてXに承継され、Bには遺産分割の対象となる固有財産は存在しないことになります。
ところが、Bは生前、Aの相続人の一人として、Aの遺産に対する相続分に応じた共有持分権を有していました。Y1とXは、Y2がBから特別受益に当たる贈与を受けていたと主張しており、Bに係る遺産分割でBからの特別受益を持戻す必要があるかが、本件の核心となりました。
XがAとBの各遺産分割を申し立てたところ、原審(大阪高裁)は、「Bに係る遺産分割申立ては不適法」として却下し、Aの遺産についてはAとの関係における特別受益のみを持戻して各共同相続人の具体的相続分を算定するという処理をしました。これに対しY1が許可抗告を申し立て、最高裁の判断が求められたのが本件です。
争点
──第二次被相続人Bが第一次被相続人Aの相続によって取得した相続分に応じた共有持分権は、Bの遺産を構成する具体的な財産権か、それとも遺産分割の対象とならない抽象的な法的地位にすぎないか。これを前提として、Bから特別受益を受けた相続人がいるときに、その持戻しをして具体的相続分を算定する必要があるか。
Y1(抗告人)側の主張:Bは、Aの相続開始と同時に、Aの遺産について相続分に応じた共有持分権を取得している。この共有持分権は実体法上の権利であってBの遺産を構成するから、Bの共同相続人らに分属させるには遺産分割手続を経る必要があり、Y2がBから特別受益を受けているならその持戻しを要する。
原審(大阪高裁)の論理:Aの遺産に対するBの相続分は、「Aの遺産を取得することができるという抽象的な法的地位」にすぎず、遺産分割の対象となる具体的な財産権ではない。Bには遺産分割の対象となる固有財産も存在しない以上、審判によって分割すべきBの遺産は存在しないから、Bに係る遺産分割申立ては不適法である。Bの相続分は、遺産分割手続を経ずに法定相続分に応じて当然に承継される。遺産分割によらない承継には民法903条は適用されず、Bからの特別受益を考慮する場面はない。
なお、本判決以前、数次相続事案における第二次被相続人の遺産分割の処理について最高裁が正面から判断した先例は存在しておらず、家裁実務の大勢は実質的にY1側の論理(後述する「遺産説」)で処理していたところに、原審が異なる立場を採用したという経緯がありました。
裁判所の判断
判旨の要約
- 結論:第二次被相続人Bが取得した第一次被相続人Aの遺産についての相続分に応じた共有持分権は、実体上の権利であってBの遺産として遺産分割の対象となる。Bから特別受益を得た者があるときは、その持戻しをして各共同相続人の具体的相続分を算定しなければならない。
- 理由:共同相続人が取得する遺産の共有持分権は、その性質において民法249条以下に規定する物権法上の共有と異なるものではなく、実体上の権利として遺産分割の対象となる。BはAの相続開始と同時にこの共有持分権を取得しており、これはBの遺産を構成するから、これをBの共同相続人らに分属させるには遺産分割手続を経る必要があり、その手続には民法903条の規律も及ぶからである。
判決文の引用
最高裁は、まず遺産共有の性質について次のように判示しました。
遺産は、相続人が数人ある場合において、それが当然に分割されるものでないときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属し、この共有の性質は、基本的には民法249条以下に規定する共有と性質を異にするものではない(最高裁昭和28年(オ)第163号同30年5月31日第三小法廷判決・民集9巻6号793頁、最高裁昭和47年(オ)第121号同50年11月7日第二小法廷判決・民集29巻10号1525頁、最高裁昭和57年(オ)第184号同61年3月13日第一小法廷判決・民集40巻2号389頁参照)。そうすると、共同相続人が取得する遺産の共有持分権は、実体上の権利であって遺産分割の対象となるというべきである。
そのうえで、本件への当てはめとして、次のように述べています。
本件におけるA及びBの各相続の経緯は、Aが死亡してその相続が開始し、次いで、Aの遺産の分割が未了の間にAの相続人でもあるBが死亡してその相続が開始したというものである。そうすると、Bは、Aの相続の開始と同時に、Aの遺産について相続分に応じた共有持分権を取得しており、これはBの遺産を構成するものであるから、これをBの共同相続人である抗告人及び相手方らに分属させるには、遺産分割手続を経る必要があり、共同相続人の中にBから特別受益に当たる贈与を受けた者があるときは、その持戻しをして各共同相続人の具体的相続分を算定しなければならない。
判例の考え方
本決定の論理は、次の3段階で整理できます。
第1に、遺産共有の性質の整理。共同相続人が遺産を共有している状態の法的性質について、最高裁は累次の判例で「民法249条以下に規定する物権法上の共有と性質を異にしない」という立場を確立してきました。本決定は、その立場をあらためて確認したうえで、本件の判断の前提に据えています。
第2に、共有持分権の実体法上の権利性。遺産共有は物権法上の共有と性質を異にしないから、共同相続人が取得する遺産の共有持分権も、抽象的な法的地位ではなく、実体上の権利として独立に把握される、という整理です。これは、共同相続人が共有持分権の確認の訴えを提起できるとした従来の判例(最判昭和61年3月13日)の延長線上にある発想です。
第3に、第二次被相続人の遺産を構成するという帰結。Bが第一次被相続人Aの相続開始と同時に取得した共有持分権が実体法上の権利である以上、これはBの死亡時にBの遺産を構成し、Bの相続人らに承継されることになります。そして、共同相続人らに分属させるには遺産分割手続を要し、その手続には特別受益の持戻しに関する民法903条が当然に適用される、という結論が導かれます。
原審が依拠した「Bの相続分は抽象的な法的地位にすぎず、遺産分割によらず当然に承継される」という論理は、この第2段階(共有持分権の実体法上の権利性)を否定するものでしたが、最高裁は累次の先例との整合性を理由にこれを採用しませんでした。
結論に至る処理
最高裁は、原審の判断には裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして原決定を破棄しました。そのうえで、Bからの特別受益の有無や具体的相続分の算定について、なお審理を要するとして、本件を大阪高裁に差し戻しています。
判例の射程
本判例の射程について、判決文の表現に即して整理します。
「遺産分割未了の間に共同相続人が死亡した」場面に限定された判示
本決定が判示の前提として明示しているのは、「Aの遺産の分割が未了の間にAの相続人でもあるBが死亡した」という場面です。すなわち、第一次相続について遺産分割協議や審判が未だ成立していない段階で第二次被相続人が死亡したというのが、本決定の前提です。
逆に、第一次相続について遺産分割協議が既に成立している場合には、第二次被相続人は分割によって取得した具体的な財産を承継することになり、本決定が論じる「相続分に応じた共有持分権」の問題は生じません。本決定の射程は、あくまで遺産分割未了の段階で第二次相続が開始した場合に限られます。
第二次被相続人に固有財産があるかないかは結論に影響しない
本件では、Bは固有財産として不動産2筆を所有していましたが、これらは遺言ですべてXに相続させると定められていたため、遺産分割の対象となる固有財産はありませんでした。それでもなお、最高裁は、BがAの相続によって取得した共有持分権だけでも遺産分割の対象になると判示しています。
つまり、第二次被相続人に固有財産があるかないかは、判旨の結論に影響しません。固有財産がなくても、第一次相続によって取得した共有持分権がある以上、第二次被相続人の遺産分割は必要であり、特別受益の持戻しも当然に行われます。
第二次被相続人からの特別受益のみが対象
本決定が持戻しの対象として明示しているのは、「Bから特別受益に当たる贈与を受けた者」の特別受益です。第一次被相続人Aからの特別受益については、Aの遺産分割の場面で当然に持戻しの対象となるため、本決定とは別の問題として処理されます。
実務上は、数次相続の事案では第一次被相続人からの特別受益と第二次被相続人からの特別受益とをそれぞれ別個に把握して、各遺産分割の場面で別々に持ち戻すことになります。両者を混同しないことが重要です。
共有持分権の性質に関する判示は、数次相続以外の場面にも基礎理論として及ぶ
本決定が示した「共同相続人が取得する遺産の共有持分権は、実体上の権利であって遺産分割の対象となる」という命題自体は、数次相続事案に限定されない一般的な命題です。たとえば、共同相続人の一人が自己の共有持分権を第三者に譲渡できるか、共有持分権の確認の訴えが認められるか、といった場面でも基礎理論として機能し得ます。
もっとも、本決定そのものの直接の射程は、あくまで数次相続における第二次被相続人の遺産分割と特別受益の持戻しの場面です。
関連判例
本決定が判断の根拠として引用した先例は、いずれも遺産共有の性質に関する従来の判例です。
- 最判昭和30年5月31日(民集9巻6号793頁):遺産共有の性質について判示した先例。本決定の判旨の出発点となる「遺産共有は物権法上の共有と性質を異にしない」という命題を支える初期判例。
- 最判昭和50年11月7日(民集29巻10号1525頁):同じく遺産共有の性質について判示した先例。共同相続人の共有持分の処分について論じた判例で、共有持分権の独立性を支える基盤となる判決。
- 最判昭和61年3月13日(民集40巻2号389頁):共同相続人が遺産共有の確認を求める訴えを提起できるとした判例。本決定が「共有持分権は実体上の権利」と述べる際の直接の論拠となっている重要判例。
実務での使い方
本判例は、数次相続(再転相続)の事案で、第二次被相続人の遺産分割の必要性や、第二次被相続人からの特別受益の持戻しが争われる場面で、その処理の基本枠組みを示す中心判例として引用します。相続実務における典型的な使いどころを整理します。
使える場面
典型的な場面は、次の3つです。
第1に、遺産分割協議が長期化している間に共同相続人の一人が死亡した場面。被相続人の死亡から遺産分割成立まで時間を要する事案では珍しくなく、特に高齢の配偶者が共同相続人に含まれている場合には、第一次相続の遺産分割中に第二次相続が開始することが実務上頻繁にあります。本決定は、こうした場合に第二次被相続人の遺産分割が必要となることの根拠となります。
第2に、第一次被相続人からの遺産分割と第二次被相続人からの遺産分割を同時に進める場面。実務では、両者を併合して審理するのが通常です。本決定は、この併合審理の前提として、第二次被相続人の遺産分割が独立に必要であることを基礎づけます。
第3に、第二次被相続人から特別受益を受けた相続人がいる事案。第二次被相続人の遺産が、第一次相続による共有持分権だけであっても、第二次被相続人からの特別受益の持戻しは要求されます。本決定は、この場面における持戻し主張の根拠となります。
持戻しを主張する側(第二次被相続人から特別受益を受けていない相続人側)
第二次被相続人からの特別受益の持戻しを主張する側のポイントは、次のとおりです。
第1に、第二次被相続人の遺産分割の独立性を主張します。原審のように「第二次被相続人には固有財産がないから遺産分割を要しない」「第二次被相続人の相続分は抽象的な法的地位にすぎないから、当然承継で済む」という相手方の主張に対しては、本決定が正面からこれを否定したことを引用して反論します。
第2に、第二次被相続人からの特別受益の事実を立証します。具体的には、第二次被相続人による生前贈与の存在、その額、贈与の時期、贈与の趣旨(特に「生計の資本」としての性格があるか)を示す証拠を準備します。第一次被相続人からの特別受益と区別して把握することが重要です。本件のように長男が事業を承継し、他の子に対しては第二次被相続人(母)が個別に経済的援助をしているような家族関係では、第二次被相続人からの特別受益が見落とされやすいので注意が必要です。
第3に、持戻し免除の意思表示の有無を確認します。本件で問題となった父(第一次被相続人)からの長男への特別受益についても、原審で「黙示の持戻し免除の意思表示があった」との抗弁が出されました。第二次被相続人からの特別受益についても同様の抗弁が予想されますが、明示的な意思表示の証拠(書面等)がない場合には、贈与の経緯・額・贈与者と受贈者の関係から黙示の意思表示が認められるかを慎重に検討する必要があります。
持戻しに反対する側(第二次被相続人から特別受益を受けた相続人側)
逆に、第二次被相続人からの特別受益の持戻しに反対する立場では、本決定の射程を踏まえると、相当に限定された反論しか取り得ません。
第1に、そもそも特別受益に当たる贈与の事実を否認することです。生計の資本としての性格を欠く小額の贈与にすぎないこと、扶養義務の履行の範囲内であること、対価関係のある給付であって贈与ではないこと、などを主張します。
第2に、持戻し免除の意思表示の立証です。第二次被相続人からの贈与について、第二次被相続人が持戻しを免除する旨の意思表示をしていたことを、明示的または黙示的に立証する余地があります。たとえば、特定の子に対する贈与の趣旨が、他の子と区別された特別の事情(介護・看護等)に基づくものであった場合には、黙示の持戻し免除の意思表示が認められる可能性があります。
第3に、配偶者居住権・配偶者短期居住権など改正法上の制度との関係は、本判決時点では存在しなかった論点ですが、現在の数次相続事案では併せて検討する必要があります(後述)。
立証上のポイント
数次相続事案で本決定を活用する際の立証上の要点は、第一次被相続人と第二次被相続人の遺産・特別受益を厳格に区別することに尽きます。
具体的には、以下の点を整理して主張・立証します。
- 第一次被相続人の死亡時期と、その時点で存在していた遺産の範囲・評価額
- 第一次被相続人からの各相続人への特別受益の有無・額・性格
- 第二次被相続人の死亡時期と、その時点で第一次被相続人の遺産分割が未了であった事実
- 第二次被相続人の固有財産の有無・範囲(あれば、その評価額)
- 第二次被相続人からの各相続人への特別受益の有無・額・性格
これらを混同して主張すると、相手方から「第一次被相続人からの特別受益と第二次被相続人からの特別受益を区別できていない」と突かれることになり、立論が弱体化します。本件で原審が誤ったのは、まさに第二次被相続人の遺産分割の独立性を見誤って、Bからの特別受益を考慮する場面を否定してしまった点にあります。
併せて検討すべき周辺論点
数次相続の実務では、本決定の処理に加えて、以下の周辺論点を併せて検討する必要があります。
第1に、令和3年改正民法904条の3との関係です。同条は、相続開始時から10年を経過した後にされる遺産分割では、原則として特別受益・寄与分を主張できない旨を定めました(令和5年4月1日施行)。本決定は、第二次被相続人からの特別受益の持戻しを認めましたが、改正民法の施行後は、第一次相続の開始から10年が経過すると、第一次相続の遺産分割における特別受益の主張は原則として制限されることになります。第二次被相続人からの特別受益の持戻し(=第二次相続の遺産分割における持戻し)については、第二次相続の開始から10年が基準となります。経過措置(改正法附則)により、施行日(令和5年4月1日)前に開始している相続については、施行日から5年または相続開始から10年のいずれか遅い時点までは特別受益等の主張が可能とされています。古い相続が未処理のまま残っている事案では、いつまでに遺産分割を申し立てるかが死活問題となります。
第2に、遺産分割協議の当事者の確定です。数次相続では、第一次被相続人の遺産分割協議の当事者として、第二次被相続人の地位を承継した相続人全員が当事者となります。第二次被相続人の相続人が複数いる場合には、その全員の関与なく協議をしても協議は成立しません。本件のように複数の数次相続が連鎖する場合には、当事者の特定が複雑になることがあります。
第3に、第一次相続と第二次相続の遺産の併合審理の可否です。本件のように両者を併合して審理することが実務上は通常ですが、相続関係や特別受益の構造によっては別個に処理した方が整理しやすい場合もあります。家裁の運用は事案に応じて柔軟に判断されています。
第4に、第二次被相続人の遺言との関係です。本件では、Bの固有財産については遺言で全部Xに承継させると定められていましたが、第二次被相続人がAの遺産に対する自己の相続分について遺言で処分していた場合には、その遺言の効力と本決定の関係を改めて検討する必要があります。本件はBの遺言がAの遺産に対する相続分を処分する内容にはなっていない事案でしたが、相続分の指定や特定財産承継遺言を含む遺言が併存する事案では、より複雑な処理が求められます。

