共有物分割訴訟は、共有者全員が原告または被告のいずれかの立場で当事者にならなければなりません。判決の内容を共有者全員について統一する必要があるため、全員の関与が強制される「固有必要的共同訴訟」にあたるからです(民法258条1項、民事訴訟法40条)。原告が1人でも、残りの共有者全員を被告とすれば提起できます。
結論
共有物分割訴訟では、共有者の一部でも当事者から欠けていると、訴え自体が不適法になります。分割の判決は、誰がどの部分を取得するか、誰が誰に代償金を支払うかといった形で、共有者全員の権利関係を一度に変動させます。判決の効力が及ばない共有者が1人でもいると、その共有者との関係では共有状態が残ってしまい、分割の目的を達成できません。
もっとも、「全員が当事者になる」といっても、全員が足並みをそろえて原告になる必要はありません。分割に反対する共有者や訴訟に協力しない共有者は、被告とすれば足ります。原告と被告を合わせて、共有者全員がそろっていればよいという扱いです。
根拠と条件
共同訴訟の3つの分類
原告または被告の少なくとも一方に複数の者がいる訴訟を「共同訴訟」といいます(民事訴訟法38条)。共同訴訟は、当事者全員について判決の内容を統一(合一確定)する必要があるかどうかによって、次の3つに分けられます。
| 分類 | 判決内容の統一 | 全員の参加 |
|---|---|---|
| 通常共同訴訟 | 不要 | 不要(一部の者だけで訴訟ができる) |
| 類似必要的共同訴訟 | 必要 | 不要(全員がそろった場合は判決が統一される) |
| 固有必要的共同訴訟 | 必要 | 必要(全員が当事者にならないと訴訟が成り立たない) |
このうち、全員の参加を強制するのは固有必要的共同訴訟だけです。共有物分割訴訟は、この固有必要的共同訴訟にあたります。
共有物分割訴訟が固有必要的共同訴訟にあたる理由
共有物の分割について協議が調わないとき、または協議ができないときは、共有者は裁判所に分割を請求できます(民法258条1項)。この訴訟で裁判所が命じる現物分割・賠償分割(共有者の一部が金銭を支払って持分を取得する分割)・競売による分割は、いずれも共有者全員の共有関係をまとめて解消するものです。そのため、判決の内容は共有者全員について統一されなければならず、全員が原告または被告として当事者になることが求められます。共有者全員の当事者参加を求めるこの扱いは、民法258条に直接書かれているわけではありませんが、判例・学説上争いのない確立した解釈です。
共有者の一部が欠けていた場合
共有者の一部を含めないまま提起された共有物分割訴訟は不適法であり、欠けている共有者が当事者として加わらない限り、訴えは却下されます。
相続を経て共有者が増えているケースでは、登記名義が数十年前のまま残っていることも珍しくなく、現在の共有者を戸籍からたどって特定する作業に相当の時間がかかる場合があります。当事者を漏れなくそろえられるかどうかが、訴訟の入口で問題になります。
他の共有不動産に関する訴訟との違い
共有不動産に関する訴訟が、すべて固有必要的共同訴訟になるわけではありません。第三者が不法占有している場合の明渡請求や、第三者に対する共有持分の確認請求は、各共有者が単独で提起できます。一方、共有権(共有者全員に所有権が帰属していること)の確認請求や、隣地との筆界確定訴訟(土地の公法上の境界を裁判で定める訴訟)では、共有物分割訴訟と同じく共有者全員の参加が必要です。
| 訴訟の種類 | 分類 | 共有者1人での提起 |
|---|---|---|
| 共有物分割訴訟 | 固有必要的共同訴訟 | 不可(全員が原告または被告になる) |
| 不法占有者への明渡請求 | 通常共同訴訟 | 可 |
| 第三者に対する共有持分の確認請求 | 通常共同訴訟 | 可 |
| 共有権(所有権)の確認請求 | 固有必要的共同訴訟 | 不可 |
| 共有地の筆界確定訴訟 | 固有必要的共同訴訟 | 不可(全員が原告または被告になる) |
具体的な場面での適用
分割に応じない共有者がいる場合
A・B・Cの3人が土地を共有していて、Aが分割を望んでいるのに対し、Cは訴訟への協力を拒んでいるとします。この場合、Aは、BとCの2人を被告として共有物分割訴訟を提起できます。Cが原告に加わらなくても、被告側に含めることで共有者全員が当事者になるためです。Bが原告側に加わる意向であれば、A・Bが原告、Cが被告となる形でも構いません。
なお、最高裁は、同じく固有必要的共同訴訟にあたる筆界確定訴訟について、提訴に同調しない共有者を被告に加えて訴えを提起できると判断しています(最判平成11年11月9日)。
所在の分からない共有者がいる場合
所在が分からない共有者も、当事者から除外することはできません。この場合、訴状が届いたものと扱う公示送達(民事訴訟法110条)を利用して、その共有者を被告に含めたまま訴訟を進めることになります。また、令和3年(2021年)民法改正で新設された所在等不明共有者の持分取得の裁判(民法262条の2)を利用する方法もあります。この手続の詳細は「行方不明の共有者の持分を、裁判所の手続で取得することはできますか?」で解説しています。

