共有物分割訴訟の途中でも、裁判上の和解によって解決できます。和解が成立すると和解調書が作成され、確定判決と同一の効力が生じます(民事訴訟法267条)。和解であれば、判決の分割類型にとらわれない柔軟な内容で共有関係を解消することも可能です。
結論
共有物分割訴訟は、判決まで進めなければ終えられない手続ではありません。裁判所は、訴訟がどの段階にあっても和解を試みることができます(民事訴訟法89条)。当事者となっている共有者全員が分割の内容に合意すれば、裁判上の和解によって訴訟は終了します。
共有物の分割は、もともと共有者間の協議(話し合い)で決められる事柄です。裁判による分割は、協議が調わないとき、または協議ができないときの手段と位置づけられています(民法258条1項)。訴訟になった後でも合意による解決になじむのは、このためです。実際の共有物分割訴訟でも、裁判官が審理の中で段階的に心証を開示し、当事者がそれに応じて希望を調整しながら和解を探るという進め方が広くとられています。
根拠と条件
裁判上の和解の意味と効力
裁判上の和解とは、訴訟の係属中に、当事者双方が裁判所の関与のもとで合意し、訴訟を終了させる制度です。合意した内容は裁判所書記官が和解調書に記載し、その記載には確定判決と同一の効力があります(民事訴訟法267条)。賠償金の支払や持分移転登記の手続を定めた条項が履行されないときは、和解調書に基づいて強制執行を申し立てられます。裁判の外で作成した合意書にはこの効力がなく、この点が裁判上の和解と単なる示談との大きな違いです。
共有物分割訴訟でも和解ができる理由
共有物分割訴訟には、裁判所が判決によって新たな権利関係を作り出す「形式的形成訴訟」という特殊な性質があります。もっとも、この特殊性は判決で分割する場面のもので、和解を妨げるものではありません。共有者全員が合意できるのであれば、その合意は本来、協議による共有物分割として有効に成立させられます。訴訟の中でその合意を和解調書の形にすることに、法律上の支障はありません。
ただし、共有物分割訴訟は共有者全員が当事者となる固有必要的共同訴訟であるため、和解も、当事者となっている共有者全員の合意で成立させる必要があります。一部の共有者だけの合意で訴訟を終わらせることはできません。
判決と比べた和解のメリット
| 項目 | 判決 | 裁判上の和解 |
|---|---|---|
| 分割方法 | 現物分割・賠償分割・換価分割の3類型(民法258条2項・3項) | 3類型に限られない(任意売却など) |
| 売却の方法 | 換価分割は形式的競売による | 共有者全員による市場での売却(任意売却)を定められる |
| 解決できる範囲 | 共有物の分割と、分割に伴う給付(民法258条4項) | 使用対価の精算など、関連する問題も一括で定められる |
| 内容の決まり方 | 裁判所が相当と認める方法(当事者の希望に拘束されない) | 当事者全員が合意した内容 |
| 終了時期 | 鑑定・証拠調べを経て判決に至る | 合意ができた時点で終了する |
違いが特に大きいのは、分割方法の幅です。判決による換価分割は形式的競売(共有物分割のために裁判所が命じる競売)によるため、市場価格より低い金額でしか売却できないこともあります。和解であれば、共有者全員で不動産を市場で売却し、代金から費用を差し引いた残りを持分割合に応じて分配する内容(任意売却)を定められます。賠償金の支払時期や支払方法をどう決めるかも、当事者の合意次第です。
判決で解決できる範囲は、共有物の分割そのものと、これに伴う金銭の支払・登記手続などの給付です(民法258条4項)。和解であれば、これまでの使用対価の精算や建物の明渡しといった周辺の問題までまとめて条項に盛り込めます。
具体的な場面での適用
AとBが2分の1ずつの持分で土地を共有しているケースで、Aが全面的価格賠償(共有者の1人がお金を払って不動産全体を取得する方法)を希望して共有物分割訴訟を提起したとします。審理の中で裁判官の心証が示され、賠償金の金額について双方が歩み寄れば、「Aが土地を取得し、Bに賠償金○○万円を支払う。BはAに対し持分移転登記手続をする」という内容の和解が成立します。双方とも取得を希望しないケースであれば、「A・Bが共同して土地を売却し、代金から費用を差し引いた残りを2分の1ずつ分配する」という任意売却の和解も選べます。
和解で分割する場合、登記との関係に注意が必要です。和解調書に基づく持分移転登記の申請では、和解条項に登記原因や原因日付の記載が欠けていた場合に、登記原因を「和解」、原因日付を「和解成立日」として受理する救済的な取扱いがあります。ただし、この取扱いには判例上の限界があります。最高裁は、現物分割の裁判上の和解について、「和解」を登記原因とした登記申請を不適法と判断しています(最判昭和42年8月25日)。
和解条項の記載に不備があると、和解成立後の登記申請が法務局で受理されない場合があります。誰がどの不動産(持分)を取得し、どのような登記手続をするかは、和解条項の中で特定しておくものとされています。

