共有持分の評価額は、共有であることによる制約を理由に減額されるのが一般的で、これを共有減価といいます。減額割合は実務上20%〜30%程度に収まることが多いです。ただし、共有物分割の全面的価格賠償では、分割により単独所有が実現するため、共有減価を適用しないのが一般的です。
結論
共有持分を売買・評価する場面では、共有であることを理由に評価額を減額するのが一般的です。単独所有であれば不動産を自由に使用・収益・処分できるのに対し、共有持分にはさまざまな制約が伴い、その不便さが価格に反映されるからです。減額の割合は事案によりますが、実務では20%〜30%程度に収まることが多いです。
一方、共有物分割はこの取扱いの例外にあたります。全面的価格賠償(共有者の1人が他の共有者に金銭を支払って不動産全体を取得する分割方法。民法258条2項2号)では、分割の結果として単独所有が実現し、共有による制約が消えるため、代償金の算定で共有減価を適用しません。
共有減価が行われる理由と減価割合
共有減価とは、共有持分の評価額を算定する際に、共有であることによる不便・制約を理由として減額することをいいます。たとえば1億円の土地の2分の1の共有持分は、単純に計算すれば5,000万円ですが、共有減価30%を適用すると評価額は3,500万円になります。
【計算例】
土地全体の価格 1億円
2分の1の共有持分 1億円 × 1/2 = 5,000万円
共有減価30%を適用 5,000万円 ×(1 − 0.3)= 3,500万円
減額の理由は、共有持分に伴う制約にあります。100%の所有権(単独所有)であれば、所有者はその不動産を自由に活用できます。共有持分の場合はそうはいきません。自分が同意しなくても他の共有者が使ったり第三者に貸したりすることがあり、共有関係を解消するには共有物分割が必要で、話し合いがまとまらなければ訴訟に至ります。金融機関も、共有持分だけでは担保として認めないのが通常です。こうした不便さを価格に反映させたものが共有減価です。
減価割合に決まった数値はなく、個別の事案ごとに判断されます。実務では20%〜30%の幅に収まることが多いものの、事案によってはこの幅に収まらないこともあります。減価割合の判断で考慮される主な要素は、次のとおりです。
- 共有物分割の難易度や、持分を他の共有者へ売却できる可能性
- 不動産の用途(居住用・営業用・収益用)
- 持分の割合(持分の価格の過半数を単独で持つと、賃貸借契約の締結・解除などの管理に関する事項を1人で決められるため、買主の権利行使に大きな違いが生じます)
- 他の共有者の人数や属性(法人か個人かなど)
- 物件の管理運営の状況や地域の実情
物件の種類によっても傾向が異なります。区分所有建物(分譲マンション)の敷地利用権は、専有部分と切り離して活用・売却されることがないため、共有減価をしない方向で評価される傾向があります。収益不動産(賃貸用)は、賃料収入を得ることが所有の目的になっていることが多く、共有による不都合が小さいため、減価割合が低くなる方向に働きます。
具体的な場面での適用
全面的価格賠償(代償分割)の場合
たとえば、AとBが2分の1ずつ共有する時価1億円の土地について、Aが土地全体を取得してBに代償金を支払うとします。Bの持分の評価に共有減価を適用すれば、代償金は3,500万円程度まで下がりそうにみえます。しかし、この場面で共有減価は適用しないのが一般的です。分割によってAの単独所有が実現する以上、共有による制約はなくなるからです。代償金は、不動産全体の時価1億円にBの持分割合2分の1を乗じた5,000万円を基礎に算定します。
遺産分割の中で行われる代償分割でも、同じ理由で共有減価をしないのが一般的です。ただし、相続財産そのものが共有持分である場合など、分割しても単独所有にならないときは、共有減価をする扱いがあり得ます。
所在等不明共有者の持分を取得する場合
令和3年民法改正で新設された所在等不明共有者の持分取得の裁判(民法262条の2)では、持分を取得した共有者が、その持分の時価相当額を支払います。この時価の算定でも、取得の結果として単独所有になる場合には共有減価をせず、取得してもほかに共有者が残る場合には共有減価をする、という解釈が示されています。
共有減価を適用するかどうかは、その手続によって最終的に単独所有が実現するかどうかを目安に判断される傾向があります。単独所有になるなら共有の制約が消えるため減価せず、共有状態が続くなら制約が残るため減価する、と説明されます。もっとも、この目安がすべての場面に当てはまるとは限らず、共有持分買取権(民法253条2項)の行使や遺留分侵害額の算定のように、統一的な見解のない場面も残されています。

