遺言書の有無を調査・確認する方法と遺言検索システム

遺言書がある場合、遺言書に従って遺産を分けるのが原則です。
そのため、相続が開始したら、遺産分割の話し合いをする前に、遺言書の有無を調査・確認する必要があります。
今回は、遺言書の有無を調査・確認する方法と遺言検索システムについてお話しします。

目次

遺産分割の前にまずは遺言書を探す

相続が始まると、遺産の分け方を決める必要があります。これを遺産分割といいます。
しかし、遺言書で分け方が決まっている遺産については、原則、遺言書のとおりに遺産を分けます。
そのため、遺産分割の話し合いをする前に、遺言書を探し、遺産の分け方がすでに決まっているかどうかを確認する必要があります。

遺言は法律の方式に従って作成しなければならず(民法960条)、その法律の方式はいくつかあります。
もっとも、自筆証書遺言と公正証書遺言がほとんどですので、以下、この2つの方式についてのみお話しします。

なお、相続人全員の同意があれば、遺言書の内容と異なる分け方ができるとするのが判例です。
つまり、遺言書に書いてあるからそのとおりにしか遺産を分けられないというわけではなく、相続人全員の話し合いにより、遺言書の内容と異なる分け方もできます。

自筆証書遺言の探し方

自筆証書遺言(民法968条)とは、被相続人(亡くなった人)が手書きで書いた遺言のことをいいます。
保管場所や保管方法は法律で定められていません(後述の法務局における保管制度を除く)ので、保管している可能性が高い場所に当たりをつけて探すことになります。

保管場所として考えられるのは、以下のとおりです。

自宅

保管場所は自宅であることが多く、タンスや机の引出し、仏壇、金庫、本棚などが考えられます。
また、日記に遺言書のことが記載されていることもありますので、日記があれば、全部読んでみる必要があります。

会社

被相続人が会社の経営者であれば、会社の金庫、デスク、キャビネットの中などが考えられます。

銀行の貸金庫

銀行の貸金庫に保管されている場合もあります。
特に、通帳に銀行から1万円前後の引落しが年1~2回ある場合には、貸金庫利用料の引落しの可能性があります。
遺言書以外の遺産(不動産の権利証、貴金属など)があるかどうかも含めて、調査の必要があります。

なお、相続開始後に銀行の貸金庫を開けるためには、通常、相続人全員で手続を行うか、相続人の代表者が他の相続人全員から同意書をもらって手続を行う必要があります。
ただし、親族間の対立により、相続人全員の同意が得られない場合には、公証人の立会いと「事実実験公正証書」の作成により、一部の相続人からの開扉請求に応じる金融機関も多いようです。

親しい友人・知人

親しい友人・知人に遺言書を預けていることも考えられますので、上記の場所を探しても見つからない場合は、一応、確認しておいた方がいいでしょう。

法務局(遺言書保管所)

2020年7月10日から、法務局において自筆証書遺言を保管する制度がスタートしました(法務局における遺言書の保管等に関する法律)。
今後、自筆証書遺言書の存在を調査するときは、自宅等のみならず、法務局にも確認が必要になります。

なお、保管事実の証明書や遺言内容の証明書は、どこの法務局(遺言書保管所)でも交付の請求ができます。

公正証書遺言の探し方

公正証書遺言の有無を確認する場所

公正証書遺言(民法969条)とは、遺言者が公証人に口授して作成した遺言のことをいいます。

公正証書遺言の正本・謄本を自宅で保管している場合が多いですが、作成した公証役場でも保管されています。
新しい遺言書に書き換えている場合もありますので、自宅に公正証書遺言の正本ないし謄本が保管されていても、念のため、公証役場で確認することをお勧めします。

また、信託銀行と取引があったのであれば、遺言書の作成を依頼していることもありますので、まずは信託銀行に確認するのもいいと思います。

公正証書遺言の検索システム

公証役場には公正証書遺言の検索システムがあり、公正証書遺言の有無を確認することができます。
ただし、相続人が遺言検索システムを利用できるのは遺言者が亡くなった後で、遺言者が亡くなる前は遺言者本人しか利用できません。

具体的な検索方法は、以下のとおりです。

  1. 検索する公証役場
    どこの公証役場でも検索可能
  2. 検索できる人
    相続人
    相続人以外の利害関係者(受遺者、遺言執行者など)
  3. 検索料金
    無料
  4. 必要書類(相続人)
    *念のため、検索をする公証役場にも事前に確認をお願いします。
    ①遺言者の除籍謄本(死亡の記載があるもの)
    ②本人(相続人)の戸籍謄本(遺言者との相続関係が分かるもの)
    ③本人(相続人)の身分証明書(運転免許証等)、認印

なお、書類の確認などを含めると、検索結果を知るのに30分程度かかります。
さっと結果が分かるわけではありませんので、ある程度時間の余裕をもって来所することをおすすめします。

また、除籍謄本・戸籍謄本は他の手続でも使う可能性がありますので、原本還付の希望を伝えておいた方がいいでしょう。

遺言公正証書の取得方法

遺言検索システムは全国どこの公証役場でも利用可能ですが、原本の閲覧や謄本の請求は遺言書を作成した公証役場(原本を保管している公証役場)で行います。
必要書類は遺言書の検索と同じです。

なお、2019年4月1日から、公正証書の謄本の請求及び受領を郵送でもできるようになりました。
ただし、郵送請求の場合、謄本交付請求書の認証などの手続が必要ですので、遺言検索システムで遺言書が見つかったら、公証役場の担当者に郵送請求の手続と費用も確認するといいでしょう。

遺言書が不公平なときは「遺留分」を請求する

遺言書があれば、遺産の分け方が決まりますので、相続人全員で改めて遺産分割を行わない限り、遺言書の内容に従って名義変更などを行います。

しかし、多くもらえる相続人ともらえない相続人がいて不公平な場合には、多くもらった相続人に対して、「遺留分」を請求ができる可能性があります。

また、遺言書だけを見ればそこまで不公平ではなかったとしても、生前贈与で遺産が減っている場合には、遺留分を請求できる可能性がありますので、まだ諦める必要はありません。

なお、遺留分を請求できるかどうかの判断には専門的な計算や調査が必要になりますので、遺言書に納得できない場合には、まずは弁護士にご相談ください。

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