預金の残高証明書はどのように請求し、何に注意すべきですか?

回答

被相続人名義の預金の残高証明書は、共同相続人の一人が単独で、被相続人の取引店または最寄りの同一銀行の支店に発行を請求できます。請求の際は、基準日を「被相続人の死亡日」と指定し、戸籍謄本(または法定相続情報一覧図の写し)と請求者の印鑑証明書等を提出します。取得後は、(1)基準日、(2)対象口座・種別の網羅性、(3)定期預金の既経過利息、(4)借入金・当座貸越の有無を確認します。死亡日時点の残高は、その後の遺産分割の基礎資料となります。

目次

残高証明書とは何か——なぜ相続調査で必要になるのか

残高証明書とは、ある基準日における預金等の残高を金融機関が証明する書類です。相続の場面では、被相続人が亡くなった日(死亡日)時点の残高を証明したものが必要になります。

通帳や取引履歴(入出金明細)が「一定期間の動き」を示す線の情報であるのに対し、残高証明書は「死亡日という一点」の残高を金融機関が公的に証明した点の情報です。遺産分割協議や相続税の申告では、各金融機関の死亡日残高を正確に示す残高証明書が基礎資料として用いられます。通帳の最終残高は記帳のタイミングによって死亡日と一致しないことが多いため、別途、死亡日基準の残高証明書を取得しておく必要があります。

残高証明書から読み取れる主な情報は、死亡日時点の各口座の残高、口座の種類(普通・定期等)、定期預金の既経過利息、当座貸越や借入金の有無などです。金融機関は、預金契約に基づき、その地位を承継した相続人の求めに応じて口座の情報を開示すべき義務を負うと解されており、残高証明書の発行についても各行が同様に対応しています。

なお、被相続人がどの金融機関に口座を持っていたかが分からない場合は、口座管理法に基づく相続時預貯金口座照会(預金保険機構)を利用して、口座の所在を一括して調べる方法があります。ただし、この照会で分かるのは金融機関名・支店・口座番号等の所在までで、残高は通知されません。残高は、所在が判明した各金融機関に本記事の残高証明書を請求して確認します。

残高証明書を請求できる人・請求先・必要書類

残高証明書は、相続人であれば共同相続人の一人が単独で請求できます。これは、共同相続人が承継する預金契約上の地位に基づき、各相続人が単独で情報開示を求める権利を行使できると解されているためです。

請求に必要なものは各行で概ね共通しており、主な内容は次のとおりです。

項目内容
請求できる人相続人(共同相続人の一人でも可)、遺言執行者、相続財産清算人等
請求先被相続人の取引店、または最寄りの同一銀行の支店(取引店以外の場合は取次ぎとなり日数を要する)
必要書類①被相続人が亡くなったことが確認できる戸籍(除籍)謄本等、または法定相続情報一覧図の写し
必要書類②請求者が相続人・遺言執行者・相続財産清算人等であることが分かる戸籍謄本・審判書等、または法定相続情報一覧図の写し
必要書類③請求者の印鑑証明書(発行後6か月以内)および実印
必要書類④請求者の本人確認書類
必要書類⑤被相続人の通帳・証書・キャッシュカード等(取引内容が分かるもの。あれば)
銀行所定の様式残高証明依頼書(各行所定の様式)
手数料1通あたり数百円〜(例:みずほ銀行は880円〔税込〕)。既経過利息の証明は別料金となることが多い(例:同行は1通2,200円〔税込〕)。※最新の金額は各行の公式案内で要確認

戸籍一式の代わりに、法務局が発行する法定相続情報一覧図の写しを提出すれば足りる扱いが各行で認められています。提出した戸籍等の原本は、銀行がコピーを取ったうえで返却するのが一般的です。

申請の流れ

残高証明書の取得は、概ね次の流れで進みます。

  1. 銀行に死亡の連絡をする。
    Webの相続受付フォーム、電話、または窓口で、口座名義人が亡くなった旨を伝えます。この連絡により、被相続人の口座は凍結されます。
  2. 必要書類の案内を受け、書類を準備する。
    銀行から案内された戸籍謄本等・印鑑証明書を揃えます。法定相続情報一覧図の写しがあれば、戸籍一式の提出を省略できます。
  3. 残高証明依頼書を記入する。
    基準日を尋ねられた際は、必ず「被相続人の死亡日」を指定します。定期預金がある場合は、既経過利息の証明もあわせて依頼するかを確認します。
  4. 書類を提出する。
    窓口または郵送で提出します。取引店以外の支店に提出すると、取引店への取次ぎのため日数がかかります。
  5. 残高証明書を受け取る。
    提出後、おおむね1〜2週間程度で、指定した住所に郵送されます(窓口受取が可能な行もあります)。

取得した残高証明書で確認すべき項目

基準日(死亡日との一致)

証明されている残高が「いつの時点」のものかを確認します。相続では死亡日時点の残高が必要です。表題等に記載された基準日が被相続人の死亡日と一致しているかを確かめてください。基準日が誤っていると、相続税申告や遺産分割の前提となる数値が狂ってしまいます。

対象口座・種別の網羅性

同一銀行内の全口座・全種別(普通・貯蓄・定期・定期積金・外貨預金・投資信託・公共債・財形等)が記載されているかを確認します。通帳に記載のない口座や、他支店の口座が漏れていないかが要点です。総合口座では普通預金と定期預金がまとめて表示されます。口座の漏れは、そのまま遺産の計上漏れに直結します。

定期預金の既経過利息

定期預金には、死亡日時点で解約した場合に付く利息相当額(既経過利息)があり、元本とは別に証明が必要なことがあります。定期預金がある場合は、既経過利息証明を別途依頼します。この利息相当額も相続財産として、遺産分割や相続税申告の対象になります。

借入金・当座貸越などの負債

預金(プラスの財産)だけでなく、借入金・当座貸越・カードローン等(マイナスの財産)の有無も確認します。借入欄が残高証明書に併記される場合がありますが、金融機関によっては、預金の残高証明書とは別に債務残高証明書を請求しないと負債の全容が分からないことがあります。負債の発見は、相続放棄を検討すべきかどうかの判断にも関わります。

出資金・保護預りなどの付随取引

出資金、累積投資、保護預り(国債・投資信託等)など、預金以外の取引の有無を確認します。これらも相続財産です。国債・投資信託等については、有価証券調査と連携して確認します。

残高ゼロ・少額・休眠口座

残高がゼロや少額の口座、長期間動きのない休眠預金がないかを確認します。残高が少なくても、口座が存在すること自体が、生前の資金の流れを確認する手がかりになることがあります。

外貨預金がある場合、相続税の評価では取引金融機関の対顧客直物電信買相場(TTB)で円換算しますが、これは評価額算定の論点です。遺産分割では、まず外貨預金口座の存在と外貨残高そのものを正確に把握しておくことが重要です。

なお、被相続人がインターネット専業銀行(ネット銀行)に口座を持っていた場合は、紙の通帳が発行されず、日々の取引明細や残高も書面では届かない(Web・アプリ・メールで確認する)ため、相続人が口座の存在に気づきにくい点に注意が必要です。もっとも、口座開設時や更新時のキャッシュカード等は郵送されるため、こうした郵便物が口座発見の手がかりになることもあります。

参考リンク

残高証明書・取引履歴の請求手続や必要書類、手数料は各金融機関の公式案内で確認できます。主要な金融機関の相続手続案内ページは以下のとおりです(内容は変更されることがあるため、手続前に最新情報をご確認ください)。

相続トラブルに備えたアドバイス

死亡日時点の残高は遺産分割の基礎になる

預貯金債権は、相続開始と同時に当然に分割されるのではなく、遺産分割の対象になるとされています(最大決平成28年12月19日)。

そのため、各金融機関の死亡日残高証明書は、遺産分割協議や遺産分割調停において、預貯金の金額を確定するための基礎資料として提出を求められます。複数の金融機関に口座がある場合は、すべての行から死亡日基準の残高証明書を揃えておくことをお勧めします。

残高証明書だけでは「生前の資金の動き」は見えない

残高証明書は死亡日という一点の残高を示すにとどまり、それ以前に預金がどう動いたかは記載されません。生前に多額の出金や贈与があった疑いがある場合には、残高証明書とは別に取引履歴(入出金明細)を取得し、あわせて検討する必要があります。

相続人間の情報共有

相続人が複数いる場合、誰か一人だけが残高証明書を取得し他の相続人に内容を伏せていると、不信感から争いに発展しやすくなります。取得した内容は早めに共有しておくことが、無用なトラブルの防止につながります。

借入・負債が判明した場合

残高証明書から借入金や当座貸越が判明した場合は、相続放棄や限定承認を検討すべき場面もあります。これらには相続の開始を知った時から原則3か月という熟慮期間がありますので、負債が見つかった際は早めに全体像を把握することが重要です。

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