外国株式・外国証券(外国債券・外国投資信託)の調査は、被相続人が国内の証券会社を通じて保有していたか、海外の金融機関で直接保有していたかで方法が分かれます。国内証券会社経由であれば、取引報告書やほふり(証券保管振替機構)への開示請求等で証券会社を特定し、残高証明書を取得することで外国証券も含めて把握できます。海外で直接保有していた場合は国内に一元的な照会制度がないため、郵便物・確定申告書の控え・国外財産調書(国外送金等調書法5条)の控え・海外送金記録等の手がかりから探していくことになります。
調査の概要
外国証券とは、金融商品取引法に規定される有価証券のうち、我が国以外で保管されるものをいい、外国株式・外国債券・外国投資信託証券があります。国内の上場株式や投資信託に比べて保有形態が多様で、調査の入口を誤ると見落としが生じやすい財産です。
外国証券の調査でまず確認すべきは、被相続人がこれらをどのような形で保有していたかです。保有形態は大きく次の2つに分かれ、それぞれ調査の進め方が異なります。
- 類型A:国内の証券会社を通じた保有
野村證券・大和証券・SBI証券・楽天証券・SMBC日興証券といった国内の証券会社に証券総合口座を開設し、その口座で外国株式や外国投資信託を保有していたケースです。実務上はこちらが一般的です。 - 類型B:海外の金融機関での直接保有
海外の証券会社や銀行に被相続人自身が口座を開設し、現地で直接保有していたケースです。件数は多くありませんが、国内からの照会が難しく、最も見落としやすい類型です。
なお、外国株式であっても、外国企業の株式等を裏付けとして日本国内で発行され、東京証券取引所に上場している預託証券(受益証券発行信託受益権。いわゆるJDR)は、国内の振替制度の対象となります。この点は後述します。
申請主体・申請先・必要書類
保有形態の見極めがついた後、実際の調査・照会で用いる主な窓口と必要書類は次のとおりです。いずれも法定相続人本人が請求することを前提とします。
| 保有形態 | 窓口(申請先) | 主な必要書類 | 分かること |
|---|---|---|---|
| 類型A・証券会社の特定 | 証券保管振替機構(ほふり)への開示請求 | 開示請求書、請求者の本人確認書類、被相続人との関係を示す戸籍(または法定相続情報一覧図)、被相続人の住所確認書類 | 被相続人が口座を開設していた証券会社・信託銀行の名称 |
| 類型A・残高の把握 | 特定した証券会社(相続サポート窓口) | 相続手続依頼書、被相続人の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍・印鑑証明書、法定相続情報一覧図等 | 死亡日時点の保有銘柄・数量・評価額(外国証券を含む) |
| 類型B・直接保有の照会 | 海外の現地金融機関 | 現地の様式に従った請求書類、死亡を証する書類(死亡診断書・戸籍等の英訳を求められることが多い)、相続権を証する書類 | 現地口座の残高・保有銘柄(現地法・現地手続に従う) |
ここで重要なのは、ほふりへの開示請求の対象は国内の振替制度に組み込まれた証券に限られ、海外の取引所で取引される外国株式そのものは対象に含まれないという点です。証券保管振替機構が開示請求の対象とするのは、金融商品取引所に上場されている内国株式、新株予約権付社債、投資口(REIT)、投資信託受益権(ETF)、受益証券発行信託受益権(JDR)等および一定の非上場株式等です。海外取引所の外国株式や国債はこの範囲に含まれません。
ただし、類型Aのように被相続人が国内の証券会社で国内株式もあわせて保有していた場合には、ほふりへの開示請求でその証券会社が判明します。証券会社さえ特定できれば、その会社に残高証明書を請求することで、外国株式・外国債券・外国投資信託も含めた保有内容を一括で確認できます。
申請の流れ
ステップ1:保有形態を見極める
最初に、被相続人の自宅に届く郵便物や手元の資料から、外国証券の手がかりを探します。具体的には、証券会社からの取引報告書・取引残高報告書・配当金や分配金の支払通知書・運用報告書、預金通帳に記録された配当金の入金や証券口座との資金移動などです。国内の証券会社名が出てくれば類型A、英文の報告書(Statement)や海外の金融機関名が出てくれば類型Bが疑われます。近年はオンライン取引が中心で郵便物が届かないこともあるため、被相続人のパソコンやスマートフォンのメール・ブックマーク・取引アプリも確認します。
ステップ2A:国内証券会社経由の場合(証券会社の特定と残高証明書の請求)
類型Aでは、まず証券会社を特定します。郵便物で判明しない場合は、ほふりへの開示請求を行い、口座を開設していた証券会社を確認します。証券会社が判明したら、相続サポート窓口に連絡し、相続手続書類とあわせて死亡日時点の残高証明書を請求します。残高証明書には、国内株式だけでなく外国株式・外国債券・外国投資信託も記載され、保有銘柄・数量・評価額が確認できます。
費用は証券会社により異なります。たとえばSBI証券では、残高証明書の発行手数料が1通1,100円(税込)とされています。外国株式の取引内容や残高は、証券会社の外貨建取引用のサイトや取引報告書・取引残高報告書でも確認できる場合があります。
ステップ2B:海外で直接保有していた場合(手がかりの収集と現地への照会)
類型Bでは、国内に一元的な照会制度がないため、以下の手がかりを総合して保有を推認していきます。
- 確定申告書の控え
外国株式の配当・利子や譲渡について、外国税額控除や所得の申告がされている場合、申告書から取引の存在を読み取れます。 - 国外財産調書の控え
被相続人が居住者(非永住者を除く)で、その年の12月31日時点で価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有していた場合、翌年6月30日までに住所地等の所轄税務署へ国外財産調書を提出する義務があります(国外送金等調書法5条1項)。提出していれば、控えに国外財産の種類・数量・価額・所在が記載されており、外国証券の有力な手がかりになります。 - 海外送金の記録
国外への送金で100万円を超えるものについては、金融機関が国外送金等調書を税務署に提出します。相続人がこの調書を直接取得することはできませんが、被相続人の預金通帳に残る海外送金の履歴から、海外口座への資金移動(外国証券の購入資金等)を間接的に把握できます。
口座が判明したら、現地の金融機関に相続人として照会します。現地での手続は国によって異なり、死亡を証する書類や相続権を証する書類の英訳、現地の遺産管理手続が必要になることがあり、相応の時間を要します。
所要期間と費用の目安
ほふりへの開示請求は、書類の受付から開示結果の送付まで1か月程度を要します。証券会社への残高証明書の請求は、書類が整ってから数週間程度が目安です。海外で直接保有していた場合の現地照会は、国・機関によって大きく異なり、数か月単位の時間がかかることも珍しくありません。
取得した書類で確認すべき項目
証券会社の残高証明書や取引報告書、現地金融機関の報告書を取得したら、外国証券に特有の次の項目を確認します。
証券の種別
外国株式(外国企業の株式)、外国債券(外国の国債・社債等)、外国投資信託のいずれであるかを確認します。種別によって評価の方法や換金・移管の手続が異なります。とくに外国投資信託は、ほふりへの開示請求では把握できないため、証券会社の残高証明書で初めて全容が判明することが多い財産です。
取引通貨(建値)
円貨建てか外貨建てかを確認します。外貨建ての場合、数量や金額が米ドル等の外貨で表示されます。後の遺産分割や相続税の評価では円換算が必要になるため、何の通貨で保有していたかを正確に押さえておきます。
評価額の基準
外貨建ての外国証券は、相続開始日(被相続人の死亡日)の為替相場で円換算した額が、遺産分割や相続税評価の基礎になります。残高証明書に記載された評価額が外貨表示なのか円換算済みなのか、また何時点の評価額なのかを確認します。為替の影響で評価額が変動する点は、国内証券にはない注意点です。
保管・管理の形態
類型Aのように国内の証券会社を通じて保有していた場合でも、外国株式の現物は海外の保管機関で管理されています。国内の振替制度(ほふり)には現れないため、国内上場株式を基準としたほふりへの開示請求だけで調査を終えると、外国証券を丸ごと見落とすおそれがあります。証券会社を特定したら必ず残高証明書まで取得し、外国証券の有無を点検することが、見落とし防止につながります。確認結果に漏れがあると、後の遺産分割協議のやり直しや蒸し返しの原因になりかねないため、この段階で外国証券まで含めて把握しておくことが望まれます。
参考リンク
- 証券保管振替機構(ほふり)|登録済加入者情報の開示請求(開示請求の対象範囲・手続)
- 国税庁|No.7456 国外財産調書の提出義務(5,000万円超の国外財産の調書提出義務)
- 国税庁|適正・公平な課税・徴収(国外送金等調書等)(100万円超の国外送金に係る調書)
- SBI証券|相続に必要な書類(証券会社での相続手続・残高証明書の例)
- 野村證券|相続のお手続き(対面証券会社での相続手続の例)
※証券会社ごとの手数料・必要書類、ほふりへの開示請求の費用は変更されることがあるため、最新情報は各機関の公式ページでご確認ください。

