損害保険や共済は、生命保険協会の「生命保険契約照会制度」の対象外です。加入先を一括照会する仕組みがないため、通帳の口座振替履歴や保険料控除証明書などを手がかりに加入先を特定し、各損害保険会社・各共済団体に個別に照会・請求するのが基本です。
調査・手続の概要
ここでいう損害保険とは、火災保険・地震保険・自動車保険・傷害保険など、偶然な事故による損害をてん補する保険を指します。共済とは、JA共済(農協)、都道府県民共済(全国生協連)、こくみん共済 coop(全労済)、コープ共済(日本コープ共済生活協同組合連合会)などが提供する保障制度です。
調査の出発点として押さえておきたいのが、生命保険の調査で利用する「生命保険契約照会制度」では、損害保険と共済を拾えないという点です。同制度の調査対象は、生命保険協会に加盟する生命保険会社の保険契約に限られます。損害保険会社の損害保険契約は対象に含まれず、共済団体も生命保険協会に加盟していないため、死亡保障のある共済であっても、この制度では契約の有無が判明しません。
そのため、損害保険・共済については、加入先を自分で突き止め、各社・各団体に個別に問い合わせる必要があります。調査によって、(1)どこに加入していたか、(2)掛け捨て型か積立型か、(3)死亡保険金・死亡共済金の受取人がいるか、(4)解約返戻金や未経過保険料といった経済的価値が残っているか、が把握できます。これらは、遺産分割の対象となる「本来の相続財産」と、相続税の課税上だけ相続財産とみなされる「みなし相続財産」とを切り分けるための前提情報になります。
申請主体・申請先・必要書類
照会先は、調査対象ごとに次のとおりです。証券・証書が手元になくても、加入者番号や掛金振替口座、登録電話番号などから契約を照合できることが多く、まずは電話連絡から始められます。
| 調査対象 | 平時の照会・請求先 | 申請できる人 | 主な必要書類 |
|---|---|---|---|
| 損害保険(各社) | 各損害保険会社のコールセンター・相続手続窓口(業界一括照会の制度はなし) | 相続人 | 被相続人の死亡が分かる戸籍、相続関係が分かる戸籍、本人確認書類、(あれば)証券番号 |
| JA共済 | 取引のあったJA(農協)の共済窓口 | 相続人 | 上記一式、共済証書、(建更は)死亡日現在の解約返戻金額証明書の発行依頼 |
| 都道府県民共済(全国生協連) | 加入先の都道府県民共済 | 死亡共済金受取人・相続人 | 加入者番号が分かる加入証書、戸籍等 |
| こくみん共済 coop(全労済) | こくみん共済 coop 共済金センター | 契約者・相続人 | 共済証書、戸籍等 |
| コープ共済 | コープ共済センター(加入生協) | 死亡共済金受取人・相続人 | 組合員番号または登録電話番号、戸籍等 |
災害救助法が適用された地域で、家屋の流失・焼失等により契約の手がかりを失った場合に限り、次の一括照会制度を利用できます。いずれも被災された方ご本人とその親族(配偶者・親・子・兄弟姉妹)からの照会を受け付け、回答までには2週間程度かかります。
| 調査対象 | 照会先(災害時のみ) | 内容 |
|---|---|---|
| 損害保険全般 | 日本損害保険協会「自然災害等損保契約照会センター」 | 会員損害保険会社全社に契約有無を照会 |
| 共済全般 | 日本共済協会「災害時共済契約照会制度」 | JA共済・こくみん共済 coop・コープ共済・都道府県民共済への加入を一括調査 |
なお、各社・各共済が求める必要書類や所要期間、手数料の有無は団体ごとに異なります。
申請の流れ
ステップ1:加入先を特定する
損害保険・共済は一括照会ができないため、まず「どこに入っていたか」を手がかりから割り出します。主な糸口は次のとおりです。
- 通帳の口座振替・引落し履歴
保険料・共済掛金の引落し先の名称から加入先が分かります。被相続人名義の口座だけでなく、家計を管理していた配偶者名義の口座からの引落しも確認します。 - 郵便物
契約更新案内、満期案内、共済証書、割戻通知書などが届いていないかを確認します。 - 保険料控除証明書
年末調整・確定申告に使うため、例年10〜11月頃に各社・各共済から送付されます(送付時期は団体により異なります)。地震保険料控除や生命保険料控除の証明書から、損害保険会社や共済団体の名称を確認できます。給与所得者であれば、源泉徴収票や勤務先に提出した控除証明書の控えも手がかりになります。 - 不動産
火災保険・地震保険は通常、建物の所有者が契約者となります。被相続人名義の不動産が判明したら、その建物にかかる火災保険・地震保険の有無もあわせて確認します(不動産調査と連動します)。 - 自動車
自動車保険・自動車共済は車検証上の所有者と結びつきます。被相続人名義の自動車があれば、付保状況を確認します。 - その他
保険会社・共済のカレンダーやタオルといったノベルティ類が、加入先を示す手がかりになることもあります。
ステップ2:特定した各社・各共済へ連絡する
加入先の見当がついたら、各損害保険会社のコールセンターや各共済団体の窓口へ連絡します。証券・証書が見当たらなくても、加入者番号・契約者氏名・生年月日・登録電話番号などで契約を照合してもらえる場合が多くあります。
ステップ3:必要書類の案内を受け、提出する
連絡先から、契約の有無や請求に必要な書類の案内を受け、戸籍等を提出します。死亡保険金・死亡共済金は、相続人(または受取人)が自ら請求しなければ支払われません。請求漏れを防ぐため、心当たりのある加入先には早めに連絡します。
ステップ4:回答を受け、必要に応じて請求・解約・名義変更を行う
契約の有無・内容の回答を受け、保障の種類に応じて、保険金・共済金の請求、解約返戻金の受領、契約の名義変更などの手続きに進みます。
取得した書類で確認すべき項目
契約者・保険料(掛金)の負担者
証券上の契約者名義に加えて、実際に保険料・掛金を負担していたのが誰かを確認します。税法上は、名義ではなく実質的な負担者を基準に課税されるため、被相続人が契約者でなくても保険料を負担していれば、その死亡保険金はみなし相続財産に該当しうるとされています(相続税法3条1項1号)。負担者は、掛金の振替元口座の名義から確認します。
被保険者(被共済者)
誰の生命・身体・財産が保障の対象になっているかを確認します。被相続人が被保険者(被共済者)で、死亡により保険金・共済金が支払われるタイプかどうかが、後の手続きの分かれ目になります。
死亡保険金・死亡共済金の受取人の定め方
傷害保険や生命共済では、死亡保険金・死亡共済金の受取人が定められています。ここで注意したいのが、共済では受取人の定め方が生命保険と異なる場合がある点です。都道府県民共済やコープ共済などでは、契約者が受取人を個別に指定するのではなく、共済事業規約(約款)で受取人の順位があらかじめ定められていることが多くあります(例えばコープ共済では、契約者と被共済者が同一の場合、死亡共済金の受取人の順位が規約で第1順位を配偶者とする形で定められています。)。そのため、誰が受取人になるかは証券だけでは分からず、しおり・規約まで確認する必要があります。
受取人が指定または規約で特定の遺族に定まっている死亡保険金・死亡共済金は、その受取人固有の財産として遺産分割の対象外に振り分けます。
掛け捨て型か積立型か
損害保険・損害共済の調査では、この区別がメインになります。通常の火災保険・自動車保険などは掛け捨て型で、契約者が亡くなっても経済的価値はほとんど残りません。これに対し、積立型(積立火災保険・積立傷害保険や、JA共済の建物更生共済(建更)など)は、解約返戻金や満期共済金があり、契約者の死亡時にはその請求権が「本来の相続財産」として遺産分割の対象になります。とくに建更には受取人を指定する制度がないため、相続人全員での遺産分割協議を経て承継者を決めることになります。評価のため、JA等の窓口で死亡日現在の解約返戻金額証明書を発行してもらいます。
未経過保険料(前納掛金)の返戻の有無
掛け捨て型であっても、年払・一括払で保険料を前納していて、相続を機に契約を解約または承継する場合には、未経過分の保険料が返戻されることがあります。返戻される未経過保険料は本来の相続財産になりうるため、前納の有無と返戻額を確認します。
補償の種類と保険事故(損害保険特有)
損害保険の死亡保険金がみなし相続財産になるのは、「偶然な事故に基因する死亡」に伴って支払われるものに限られます(相続税法3条1項1号)。病気による死亡は対象外で、傷害保険の死亡保険金などが該当しうる範囲です。他方、火災・地震・車両事故などの損害をてん補する目的の保険金(補償金)は、損害の補填であって相続財産にも相続税の課税対象にもなりません。証券で補償の種類を確認し、支払われる(支払われた)金額がどの性質のものかを切り分けます。
参考リンク
- 生命保険契約照会制度のご案内(生命保険協会) — 損害保険・共済が対象外であること(対象は生命保険会社の個人保険契約)を確認できます。
- 自然災害損保契約のご照会(日本損害保険協会) — 災害時の「自然災害等損保契約照会制度」の案内です。
- 災害時共済契約照会制度(日本共済協会) — 災害時に、JA共済・こくみん共済 coop・コープ共済・都道府県民共済を一括照会できる制度の案内です。

