介護をしていた兄弟の「遺産の使い込み」を調べる方法
使い込みを調べる方法を知らないと大変なことになる?
「兄弟から遺産の目録が届いたけど、思っていたよりもやけに預金が少ない…」
こういうことが結構あります。
そのようなとき、介護をしていた兄弟が預金を使い込んだのではないかと考えがちです。
しかし、ちょっと待ってください。
あなたは、親の生活をどこまで知っていたでしょうか。
医療や介護でかなりお金がかかったのかもしれません。
自宅を介護用にリフォームしたのかもしれません。
死亡保険をかけていたのかもしれません。
使い込み以外にも、お金の使い道はいくつも考えられます。
使い込み問題でとても大切なことは、
【使い込みだと決めつけず、まずはしっかり調べること】
です。
使い込みかどうかよく分からない段階で疑いの目で見ると、間違いなくもめます。
相続の話し合いも全面的に止まります。
そうこうしているうちに弁護士から通知書が届いた、なんてことにもなりかねません。
憶測で使い込みだと決めつけてしまうと、逆に、あなたの相続は相当大変なことになります。
そうならないためにも、使い込みを調べる方法を正しく理解しておく必要があります。

預金口座の引出しを確認する
預金引出しの裏付けを手に入れる
まずやるべきことは、
【預金引出しを裏付けで確認すること】
です。
たとえば、ATMで上限50万円を何度も引き出していることがあります。このような不自然な引出しを「裏付け」で確認していきます。
預金引出しの裏付けとして手に入れるべき資料は、以下になります。
- 通帳
通帳を調べるのが一番手っ取り早いです。
もっとも、保管している兄弟から渡してもらう必要がありますし、古いものは処分している可能性もあります。 - 取引明細書
取引明細書とは、預金口座の出入金が書かれている一覧表のことです。預金口座がある銀行で発行してもらえます。
銀行によって名称が異なりますが、「取引明細書」「取引履歴」と言えば分かるはずです。
取引明細書を見れば、通帳よりも細かい情報まで知ることができます。通常、10年は遡れます。
ただし、発行手数料がかかります。
発行手数料は銀行によってまちまちですが、高いところだと数万円かかります。
何年遡るかは、発行手数料を確認してから決めた方がいいです。 判断できなければ、とりあえず3年程度でいいかもしれません。 払戻し依頼書
払戻し依頼書とは、銀行の窓口で引き出すときに書く出金伝票のことです。通帳や取引明細書に窓口での引き出しがあれば、銀行から写しをもらいます。
ただし、銀行によって取扱いはまちまちで、見せてくれるだけのところもあります。まずは銀行に確認しましょう。
払戻し依頼書には、引出しをした人の名前が直筆で書いてありますので、筆跡を確認できます。また、同席した人が書かれている場合もありますので、兄弟が一緒に来ていたことを確認できる可能性があります。
なお、本人以外の人が代理人として引き出した場合は、代理人指定届(この人を代理人にしますという内容の書類)の写しも取得し、いつの時点で代理人として指定されたかも確認しておきます。
まずやるべきことは、
【預金引出しを裏付けで確認すること】
です。
たとえば、ATMで上限50万円を何度も引き出していることがあります。このような不自然な引出しを「裏付け」で確認していきます。
預金引出しの裏付けとして手に入れるべき資料は、以下になります。
- 通帳
通帳を調べるのが一番手っ取り早いです。
もっとも、保管している兄弟から渡してもらう必要がありますし、古いものは処分している可能性もあります。 - 取引明細書
取引明細書とは、預金口座の出入金が書かれている一覧表のことです。預金口座がある銀行で発行してもらえます。銀行によって名称が異なりますが、「取引明細書」「取引履歴」と言えば分かるはずです。
取引明細書を見れば、通帳よりも細かい情報まで知ることができます。通常、10年は遡れます。
ただし、発行手数料がかかります。
発行手数料は銀行によってまちまちですが、高いところだと数万円かかります。
何年遡るかは、発行手数料を確認してから決めた方がいいです。判断できなければ、とりあえず3年程度でいいと思います。 - 払戻依頼書
払戻依頼書とは、銀行の窓口で預金を引き出すときに書く出金伝票のことです。
通帳や取引明細書に窓口での引き出しがあれば、銀行から写しをもらいます。
ただし、銀行によって取扱いはまちまちで、見せてくれるだけのところもあります。まずは銀行に確認しましょう。
払戻依頼書には、引出しをした人の名前が直筆で書いてありますので、筆跡を確認できます。
また、備考欄に同席した人が書かれている場合もありますので、兄弟が一緒に来ていたことを確認できる可能性があります。
なお、本人以外の人が代理人として引き出した場合は、代理人指定届(この人を代理人にしますという内容の書類)の写しも取得し、いつの時点で代理人として指定されたかも確認しておきます。
預金引出しを一覧表にまとめる
裏付けを手に入れたら、預金の引出しを一つ一つ確認していきます。
その際、使い込みの分析ツールとして、エクセルなどの表計算ソフトで「引出しの一覧表」を作ることをお勧めします。一覧表の項目は、引き出した日、引き出した金額、引き出した支店などです。
どの時期に合計いくらの引出しがあったのかを自動計算ができますので、引出しの不自然さを数字で確認することができます。
エクセルなどの表計算ソフトが苦手な人であれば、手書きの一覧表でも構いません。一覧表にすると分かってくる事実もありますので、ぜひやっていただきたいです。
預金口座への入金を確認する
使い込みは、
【お金を勝手に引き出す→引き出したお金を自分のために使う】
という流れで完成します。
つまり、引き出した後のお金の流れが重要です。
引き出したお金が50万円だったとしても、別の口座に40万円を入れ、残りの10万円を親の生活費に充てていれば、使い込みにはなりません。引落し用の口座にお金を移すということは、一般的にもよくあります。
そのため、引き出したお金が別の口座に入ったかどうかの確認も必要です。
なお、別の口座に入ったことが確認できた場合、引出し一覧表にも入力しておくことをお勧めします。お金の出入りが正確に分かるため、問題となる引き出しとそうでない引出しを仕分けできます。
知らない預金口座の有無を調べる
ここまで来ると、問題となる預金引出しがかなり分かってきます。
そろそろ本格的に追及したくなるかもしれません。
しかし、もう少し待ってください。
あなたが把握している口座は、それで全てでしょうか?
もしかしたら、他にも口座がある、または、あったかもしれません。
できれば、そこまで調べたいところです。
「その調べ方が一番問題なんだ、一体どうやって調べるんだ」と言いたくなるかもしれません。
しかし、方法はあります。
以下、少し難しい話になりますが、これを知っておくと、一段深く調べることができます。
ポイントは、
【本来あるべき振込みや引落しがないこと】
に気が付くことです。
たとえば、年金をもらっていたはずなのに、年金の振込みが見当たらないのであれば、他に年金の振込口座があったはずです。また、公共料金の引落しが見当たらないのであれば、他に引落し用の口座があるかもしれません。
他の口座がありそうなときは、まずは通帳を管理していた兄弟に確認します。
それでも分からないときは、親の自宅近くの銀行に確認するなりして、できる限り調査をします。
ここまでやるのは少し難しいですが、知らない口座が出てくるときも結構あります。
他にも口座があるのではないかと疑われるときは、自力で調べられると進みが早くなります。
親の生活状況や認知症の程度を調べる
【極めて重要】前のめりで追及してはならない理由
ここまでは、問題となる預金引出しを見つけることがメインのお話でした。
しかし、先に、使い込みは、
【お金を勝手に引き出す→引き出したお金を自分のために使う】
という流れで完成すると言いました。
つまり、使い込みといえるためには、預金引出しという入口だけでは全く足りず、「引き出したお金を自分のために使う」という出口までたどり着くことが必要です。
「そんなの向こうが説明する話じゃないか」と言いたくなるかもしれません。
不自然な引出しを多数見つけたら、理由を説明するよう追及したくなるのも無理はありません。
しかし、少し待ってください。
親に頼まれていた可能性もありますし、本人が動けないため、やむを得ずATMで連続して引き出した可能性もあります。
表面的な不自然さだけで全てが決まるわけではありません。
使い道がよく分からない段階で追及しようとすると、間違いなくもめます。
もめると弁護士から通知書が届き、あなたの相続は止まります。
そして、弁護士が完全にブロックするため、逆に真相は分からずじまいになり、徒労感しか残りません。
まずは冷静に、他の使い道がありそうかどうかを調査・検討する必要があります。
追及するのはその後です。

親の生活状況や認知症の程度を調べる
「ずっと疎遠だったんだから、お金の使い道なんてよく分からないよ」と言いたくなるかもしれません。
たしかに、実際に介護をしていた人でなければ、親の生活状況はなかなか分からないこともあります。
しかし、方法はあります。
医療カルテ、看護記録、介護記録、介護保険の認定記録といった医療・介護関係の資料には、親の入院歴、認知症の程度、当時の生活状況などの情報が書かれています。
特に重要なのは、入院年月日・期間・症状が分かる主治医意見書・診療情報提供書、長谷川式スケール(HDS-R)とミニメンタルステート検査(MMSE)という認知症テスト、亡くなった方の当時の言動が分かる医療カルテ・介護支援経過・介護認定の概況調査特記事項です。
これらを相続人の立場で手に入れ、預金引出しの一覧表と突き合わせていきます。
そうすると、どこどこの時点で兄弟が預金の管理をしていたとか、入院の前後にお金の引出しが多いとか、様々なことが分かってきます。
認知症で預金管理が難しい状況だったとか、当時の生活状況でここまでのお金は必要がなかったとか、使い込みの裏付けとなる事実が明らかになる場合もあります。
資料の請求先は、医療カルテ・看護記録は病院、介護記録は介護事業者、介護保険の認定記録は市区役所です。
注意点は、資料の保存期間です。
介護保険の認定記録の保存期間は5年とされていますし、他も同程度と考えておいた方がいいです。
取得できる資料はなるべく取得しておいた方がいいので、思い立ったら早めに着手した方がいいでしょう。
逆に、保存期間の経過で重要な資料を取得できない場合には、あえて追及しないことも検討すべきです。
いくら追及したくても、決め手を欠くため、ただただ長引くだけになります。
本来、親が生きているときに積極的に関与すべき問題でした。
一番の当事者である親が亡くなっている以上、今からやれる方法は限定されています。
方法が限定される中で、どのように相続に反映させるかを考える必要があります。
なお、医療機関や介護事業者は、裁判における証拠調べでなければ資料を開示しない場合も多いです。
そのときは、取得できる資料を集め、残りは裁判所経由で取得することを考えます。
また、弁護士の調査権限(弁護士会照会)で請求をした方が取得できる範囲が広がる場合もありますので、資料の請求先に確認してみるのもいいでしょう。
相続の正しい理解が大事
使い込みの調べ方を知っておくだけで、前のめりで追及し、相続が止まってしまうということを避けられます。
一部、難しい部分もありますが、ポイントだけであれば、素人でも何とかなるレベルです。
とはいえ、もし話し合いの進め方で悩むことがあれば、遠慮なくご相談ください。
一緒に解決策を考えましょう。
あなたが形だけの円満相続で後悔せず、「法の下の相続」を実現することを祈っています。