相続で共有になった不動産と夫婦で購入して共有になった不動産では、扱いが違うのですか?
不動産が共有になる原因は大きく分けて、相続によるもの(遺産共有)と売買などによるもの(物権共有)の2種類があります。両者の法的性質は同じですが(民法249条以下)、共有関係を解消するための分割手続が異なります。遺産共有は遺産分割(民法907条)で、物権共有は共有物分割(民法258条)で解消するのが原則です。
それぞれの意味
「遺産共有」とは、相続によって生じた共有のうち、遺産分割がまだ完了していないものをいいます。たとえば、亡くなった親の自宅を子ども3人が法定相続分で相続した場合、遺産分割が終わるまでの間、その自宅は遺産共有の状態にあります。遺産共有は、遺産分割が完了するまでの暫定的な共有状態です。
一方、「物権共有」とは、遺産共有でない共有のことをいいます。たとえば、夫婦が住宅ローンを組んでマイホームを購入し、出資割合に応じて共有名義にした場合がこれにあたります。売買のほか、共同出資による建築や、持分の譲受けなどによって生じます。
なお、遺産分割が完了した後、なお共有状態を維持する場合(たとえば「A・Bそれぞれ2分の1の持分割合で共有とする」という遺産分割の合意がなされた場合)は、その時点で遺産共有は終了し、物権共有に変わります。この変化を「遺産性の喪失」といいます。
遺産共有と物権共有の違い
遺産共有と物権共有の法的性質は同じです。かつては遺産共有の性質について物権共有よりも権利行使が制限されるという見解(合有説)もありましたが、現在では物権共有と同じ性質であるという見解(共有説)に統一されています。したがって、共有の規定(民法249条以下)は遺産共有にもそのまま適用されます。
ただし、分割手続の種類が異なります。以下の比較表で主な違いを整理します。
| 比較項目 | 物権共有(共有物分割) | 遺産共有(遺産分割) |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 民法258条 | 民法907条2項・258条 |
| 管轄裁判所 | 地方裁判所・簡易裁判所 | 家庭裁判所 |
| 手続の種類 | 形式的形成訴訟 | 家事調停・審判 |
| 当事者 | 共有者全員(固有必要的共同訴訟) | 相続人全員 |
| 対象財産 | 特定の共有物 | 遺産すべて(または一部) |
| 分割の割合 | 共有持分割合 | 具体的相続分(特別受益・寄与分を反映) |
| 判断要素 | 対象の共有物に関するものに限定 | 広範な親族関係に及ぶ |
| 遡及効 | なし | あり(民法909条) |
| 裁判所による分割禁止 | なし | あり |
| 共有分割(共有のまま維持) | できない | できる |
特に重要な違いは、次の2点です。
第一に、分割の際に基準となる割合が異なります。共有物分割では登記上の共有持分割合(法定相続分または指定相続分)がそのまま基準になりますが、遺産分割では法定相続分に特別受益と寄与分の加算・減額をした後の割合(具体的相続分)を使います。
なお、遺産共有に共有の規定を適用する場面では、法定相続分または指定相続分を使います。この点は、令和3年改正によって民法898条2項に明文化されました。
第二に、遺産分割では対象財産が遺産全体に及ぶのに対し、共有物分割では特定の共有物だけが対象になります。遺産分割は相続財産全体の公平な分配を目的としているため、裁判所はより広範な事情を考慮して柔軟な分割方法を認めることができます。
どちらの手続になるかの判断基準
共有の解消を望む場合に、どちらの手続を使うかは、その共有が遺産共有か物権共有かによって決まります。
原則として、遺産共有の状態にある不動産は、共有物分割の手続を使うことはできず、遺産分割の手続でしか解消できません(民法258条の2第1項)。共有物分割訴訟を提起しても、不適法として却下されます。
なお、最高裁は、遺産相続により相続人の共有となった財産の分割について、共同相続人間に協議が調わないときは家庭裁判所が審判によって定めるべきであり、共有物分割請求の訴えは不適法であると判断しています(最高裁昭和62年9月4日判決)。この判例の考え方は、令和3年改正で民法の条文となりました(民法258条の2第1項)。
ただし、令和3年改正により、相続開始から10年を経過した場合には、例外的に、遺産共有であっても、共有物分割訴訟で解消できる場合があります(民法258条の2第2項)。この例外が認められるには、遺産共有と物権共有の持分が混在していること、相続開始から10年が経過していること、共有者(被告)から異議の申出がないこと、の3つの要件を満たす必要があります。

