2023年4月から共有不動産のルールが変わったと聞きました。何が変わったのですか?
2023年4月1日施行の民法改正(令和3年改正)により、共有不動産に関するルールが大幅に整備されました。主な改正点は、①使用・管理ルールの明確化(民法249条2項・252条等)、②全面的価格賠償の明文化など共有物分割の整備(民法258条等)、③所在不明共有者への対応制度の新設(民法262条の2等)の3つです。
令和3年改正の概要と趣旨
共有に関する民法の規定は、民法第2編第3章第3節(民法249条〜262条の3)に置かれています。改正前の規定は歴史的な背景から条文数が少なく、解釈に幅がある部分が多いという特徴がありました。
令和3年改正は、こうした不明確な点を整理し、判例や学説によって確立していた解釈を条文に反映することを主な目的としたものです。施行日は2023年(令和5年)4月1日です。
なお、共有に関する改正規定には経過措置が設けられていません。施行日よりも前に共有関係が生じていた場合であっても、施行後は改正後のルールが適用されます。
以下では、改正の内容を「使用・管理に関する改正」「共有関係の解消に関する改正」「所在不明共有者に関する新制度」の3つに分けて概観します。
共有不動産の使用・管理に関する改正点
使用・管理に関する改正は多岐にわたります。主要な改正点は次のとおりです。
占有する共有者の使用対価の償還義務(民法249条2項)
改正により、共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対して自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負うことが明文化されました(民法249条2項)。
たとえば、AとBが2分の1ずつ共有する建物にAだけが居住している場合、Aは自己の持分(2分の1)を超える使用について、Bに対して使用対価を支払う義務を負います。改正前は、不当利得(民法703条)や不法行為(民法709条)を根拠とする請求が行われていましたが、改正後は民法249条2項が直接の根拠条文となります。
なお、無償使用の合意(無償で使用してよいという合意)は多数決では決められず、共有者間の個別の合意が必要です。また、無償・有償のいずれとも決めていない場合には有償(償還義務あり)となります。
占有する共有者の善管注意義務(民法249条3項)
共有物を使用する共有者は、善良な管理者の注意をもって共有物を使用しなければならないことが規定されました(民法249条3項)。これにより、共有物を使用する共有者が共有物を損傷した場合に損害賠償責任が認められやすくなっています。
軽微変更の管理行為への分類(民法251条1項かっこ書)
変更行為のうち、形状または効用の著しい変更を伴わないもの(軽微な変更)は、共有者全員の同意ではなく、持分の過半数の賛成で行えるようになりました(民法251条1項かっこ書)。これにより、変更と管理の分類がより明確になっています。
過半数による明渡請求(民法252条1項第2文・3項)
改正前は、共有者の1人が共有不動産を占有している場合に他の共有者が明渡しを求めることは原則として否定されていました。改正により、共有者間の多数決なしに共有物を占有している共有者に対しては、持分の過半数の賛成で明渡請求ができるようになりました(民法252条1項第2文)。ただし、共有者間の決定に基づいて占有している場合に新たな使用方法を決定するときは、その決定が当該共有者に特別の影響を及ぼすべきときに限り、その共有者の承諾が必要です(同条3項)。
共有物の管理者の選任(民法252条1項かっこ書・252条の2)
持分の過半数の賛成により「共有物の管理者」を選任できることが明文化されました(民法252条1項かっこ書、252条の2)。共有物の管理者は、管理に関する行為(管理分類の行為)を行う権限を有しますが、変更行為には共有者全員の同意が必要です。
賃貸借契約の管理行為としての取扱い(民法252条4項)
共有物に賃借権等を設定する場合の取扱いが明確化されました。一定の期間を超えない賃借権等(土地は5年以下、建物は3年以下)の設定は管理行為に分類され、持分の過半数で決することができます(民法252条4項)。この期間を超える賃貸借契約の締結は、変更行為として共有者全員の同意が必要になります。
共有関係の解消に関する改正点
共有物分割(共有関係の解消)に関しても、重要な改正がなされています。
全面的価格賠償の明文化(民法258条2項2号)
全面的価格賠償(共有者の1人が他の共有者に金銭を支払って不動産全体を取得する方法)は、平成8年最高裁判決によって認められた分割方法ですが、令和3年改正により条文上の根拠が明確になりました(民法258条2項2号)。「共有者に債務を負担させて、他の共有者の持分の全部又は一部を取得させる方法」として、裁判所が分割を命じることができる旨が明記されています。
分割類型の優先順序の明確化(民法258条2項・3項)
改正後の条文の構造上、現物分割と全面的価格賠償が第1順位(民法258条2項)、換価分割(競売)が第2順位(同条3項)として整理されました。すなわち、現物分割または全面的価格賠償によることができない場合や、これらの方法では不動産の価格を著しく減少させるおそれがある場合に限り、裁判所は競売を命じることができます。
職権による給付命令の明文化(民法258条4項)
共有物分割の裁判において、裁判所が当事者に対して金銭の支払い、物の引渡し、登記義務の履行その他の給付を命じることができることが明文化されました(民法258条4項)。改正前から判例・実務で行われていた取扱いを条文に反映したものです。
遺産共有と物権共有が混在する場合の取扱い(民法258条の2)
相続によって生じた遺産共有と、それ以外の物権共有が1つの不動産に混在している場合について、原則として遺産分割の手続が優先することが明記されました(民法258条の2第1項)。ただし、相続開始から10年を経過した場合には、共有物分割訴訟の中で遺産共有持分の解消も可能となります(同条2項)。
所在不明共有者への対応に関する新制度
令和3年改正の中でも特に実務への影響が大きいのが、所在不明の共有者がいる場合の新制度です。改正前は、共有者の所在が分からない場合に共有不動産の管理・処分を進めることが極めて困難でしたが、改正により裁判所の手続を通じた解決が可能になりました。
共有持分が変動しない手続
所在不明等の共有者がいる場合に、その共有者の決定権限を排除して、残りの共有者だけで意思決定を行うための制度です。
変更行為については、裁判所が所在不明の確認をした上で、残りの共有者全員の同意で変更を加えることができる旨の裁判をすることができます(民法251条2項)。管理行為についても同様に、残りの共有者の持分の過半数で管理に関する事項を決定できるようになります(民法252条2項1号)。
また、所在は分かっているものの賛否を明らかにしない共有者がいる場合にも、裁判所が催告を経た上で、その共有者の決定権限を排除する裁判をすることができます(民法252条2項2号)。
共有持分が変動する手続
所在不明の共有者の持分を取得し、または第三者に譲渡するための制度が新設されました。
持分取得の裁判(民法262条の2)により、裁判所の決定を得て、所在不明共有者の持分を他の共有者が取得することができます。また、持分譲渡権限付与の裁判(民法262条の3)により、所在不明共有者の持分を含めた共有物全体を第三者に売却する権限を得ることもできます。
いずれの制度も、遺産共有の場合には相続開始から10年を経過していなければ利用できない点に注意が必要です。

