不動産登記情報はどのように取得・確認するのですか?
不動産の登記情報は、登記事項証明書(法務局窓口・郵送・オンライン)または登記情報提供サービス(インターネット閲覧)で取得できます。誰でも取得可能で、被相続人との関係を示す書類は不要です(不動産登記法119条1項)。取得後は、表題部(所在・地目・地積)、権利部甲区(所有権の移転履歴・共有持分)、権利部乙区(抵当権・差押え等)、共同担保目録の各欄を読み解き、遺産の権利関係を網羅的に把握します。
調査・手続の概要
不動産登記情報(登記事項証明書)は、不動産の物理的状況と権利関係が記録された公的記録の写しのことをいいます。法務局(登記所)が管理する不動産登記簿に基づき作成されます。
登記事項証明書の最大の特徴は、対象不動産の所在地番が分かれば、誰でも取得できることです(不動産登記法119条1項)。相続人であることの証明や、被相続人との関係を示す戸籍謄本等は一切不要です。手数料を払えば交付されるため、相続人以外でも調査のために取得できます。
登記事項証明書から読み取れる主な情報は、以下のとおりです。
- 表題部:不動産の物理的状況(所在・地番・地目・地積、家屋の場合は構造・床面積等)
- 権利部(甲区):所有権に関する事項(所有者・取得原因・取得時期・共有持分)
- 権利部(乙区):所有権以外の権利(抵当権・根抵当権・賃借権・地上権・差押え等)
- 共同担保目録:同一の抵当権で担保される他の不動産の一覧
これらの情報は、名寄帳で把握した不動産の権利関係を、より詳細に確認するために不可欠な資料となります。名寄帳が「市区町村内の所有不動産の一覧」を示すのに対し、登記事項証明書は「個別の不動産の権利関係の詳細」を示す、という役割の違いがあります。
申請主体・申請先・必要書類
申請主体
誰でも申請できます。被相続人との関係を示す書類は不要です。
申請先・取得方法
申請方法は大きく3つあります。それぞれの特徴は以下のとおりです。
| 取得方法 | 内容 | 手数料(1通あたり)※最新情報を要確認 |
|---|---|---|
| 法務局窓口・郵送による登記事項証明書の取得 | 全国どこの法務局でも、全国の不動産の登記事項証明書を取得できる(管轄外も可) | 窓口:600円、郵送:600円(+郵送費) |
| 登記・供託オンライン申請システム(登記事項証明書の交付請求) | オンライン申請、書面を郵送または窓口で受領 | オンライン請求・郵送受取:520円、オンライン請求・窓口受取:490円(令和7年4月改定後) |
| 登記情報提供サービス(登記情報の閲覧・PDF取得) | インターネットで登記情報をPDFで取得(証明文なし) | 全部事項:330円、所有者事項:140円、地図及び図面:360円(令和8年4月改定後) |
「登記事項証明書」は法務局が認証文を付した正式な証明書で、遺産分割協議・調停・相続登記等の手続で原本が必要となる場面で使われます。一方、「登記情報提供サービス」は閲覧サービスで、認証文がない代わりに安価でスピーディーに取得できます。調査の段階では登記情報提供サービスで十分なケースが多く、正式な手続が必要になった段階で登記事項証明書を取得する、という使い分けが一般的です。
必要な情報
| 必要な情報 | 内容・取得元 |
|---|---|
| 不動産の所在・地番(土地)、家屋番号(建物) | 固定資産税納税通知書、名寄帳、登記済証(権利証)・登記識別情報通知書、ブルーマップ等 |
住居表示(○○町1-2-3等)と地番は一致しないことが多いため、注意が必要です。住居表示しか分からない場合は、登記情報提供サービスの「地番検索サービス」(無料)を利用するか、ブルーマップで地番を調べる、所在地を管轄する市区町村役場の固定資産税課で照会する、などの方法があります。
なお、登記情報提供サービスは、24時間利用できるわけではなく、平日午前8時30分から午後11時まで、土日祝日は午前8時30分から午後6時まで(地図及び図面情報は平日のみ午前8時30分から午後9時まで)、年末年始(12月29日〜1月3日)は休業となっています(※最新情報を要確認)。
申請の流れ
ステップ1:対象不動産の所在地番を特定する
名寄帳・固定資産税納税通知書から、被相続人名義の不動産の所在地番を特定します。共有不動産も忘れずに洗い出します。
ステップ2:取得方法を選ぶ
調査段階では、登記情報提供サービスでオンライン閲覧することが効率的です。正式な手続が必要になった段階で、登記事項証明書(認証文付き)を取得します。
ステップ3:申請する
オンラインの場合は登記情報提供サービスまたは登記・供託オンライン申請システムで申請、窓口の場合は最寄りの法務局で申請します。郵送請求の場合は、申請書・収入印紙・返信用封筒(切手貼付)を最寄りの法務局に送付します。
所要期間・費用
- 登記情報提供サービス:利用時間内であれば即時(オンライン閲覧・PDF取得)
- 法務局窓口:即日交付
- 郵送請求:申請から1週間程度
- 1物件あたり数百円程度
複数の不動産を調査する場合、オンラインで一括して取得すれば、相続人が遠隔地に出向く必要なく短時間で資料を揃えられます。
取得した登記事項証明書で確認すべき項目
登記事項証明書の構成は、(1)表題部、(2)権利部(甲区)、(3)権利部(乙区)、(4)共同担保目録の4つに分かれています。各部の主要項目を順に確認します。
表題部 — 所在・地番・地目・地積(土地)/構造・床面積(建物)
表題部には、不動産の物理的状況が記録されています。
地目欄に注目してください。登記簿上の地目と現況(実際の利用状況)は一致しないことが多くあります。例えば、登記上は「畑」でも現況は「宅地」として利用されているケースは珍しくありません。現況との不一致は、地積測量図と現地確認で補完します。
また、地積(土地の面積)についても、登記簿地積と実測値の間に差異(縄伸び・縄縮み)があることがあります。特に山林・農地、古い宅地で生じやすいポイントです。
権利部(甲区) — 所有権の現在の名義
甲区には、所有権に関する事項(取得・移転・抹消等)が時系列で記録されています。
現在有効な所有権者が誰かを最初に確認します。順位番号の最も新しい記録のうち、抹消されていないものが現在の名義人です。被相続人の単独所有か、他者との共有かを確認します。共有の場合は、各共有者の持分も記載されます。
権利部(甲区) — 所有権の移転履歴
甲区には、過去の所有権移転の履歴がすべて記録されています。
登記原因(売買・相続・贈与・財産分与等)、移転時期、移転先(取得者)を整理して確認します。特に被相続人から第三者(典型的には配偶者・子・孫)への生前の名義変更が記録されている場合は、その登記原因(贈与か売買か等)と時期を確認します。これが後の特別受益の持戻しや遺留分請求の手がかりになります
権利部(甲区) — 差押え・仮差押え・処分禁止仮処分
甲区には、所有権に対する処分制限(差押え・仮差押え・処分禁止仮処分)も記録されます。
差押え等の登記が残っている場合、被相続人が滞納処分・強制執行の対象となっていた可能性があります。被相続人の債務調査と併せて、債務関係の手がかりとして整理します。
権利部(乙区) — 抵当権・根抵当権
乙区には、所有権以外の権利(担保権・利用権等)が記録されています。代表的なものが抵当権・根抵当権です。
抵当権が設定されている場合は、債権額(または極度額)・債務者・抵当権者(金融機関等)を確認します。完済済みでも抵当権の登記が抹消されていないケース(俗に「休眠抵当」)もあるため、抵当権者(金融機関)に残債務の有無を照会することが望まれます。残債務が残っている場合は、相続債務として承継対象となります。
権利部(乙区) — 賃借権・地上権・配偶者居住権
乙区には、賃借権・地上権・配偶者居住権等の利用権も登記されることがあります。
賃借権・地上権が登記されている場合、その不動産は他人の利用権の負担付きで承継されることになります。配偶者居住権が登記されている場合は、配偶者が当該不動産に居住する権利を有することを意味します(民法1028条。登記の根拠は民法1031条)。
共同担保目録
抵当権等が設定されている場合、複数の不動産を一括して担保にしていることがあります。共同担保目録には、同一の抵当権で担保されている他の不動産の一覧が記載されます。
被相続人名義になっていない不動産が共同担保目録に載っている場合、その不動産の所有者(被相続人の親族等)との物的関係を示唆します。また、共同担保目録に載っている被相続人名義の他の不動産が、こちらの調査から漏れていないかを確認します。共同担保目録は、他の不動産の存在を芋づる式に発見する手がかりになるため、必ず確認してください。
登記名義と実体の不一致
登記情報は、登記がされた時点の権利関係を示すものであり、現在の実体的な権利関係と一致しているとは限りません。
典型的なケースとして、(a)既に売却済みなのに名義変更がされていない不動産、(b)既に死亡した先代名義のままになっている不動産(数次相続未了)、(c)被相続人名義だが実質的には他人(親族)が占有・利用している不動産、などがあります。登記情報の確認だけで安心せず、現地確認・利用状況の聞き取り・関連資料(契約書・通帳の家賃振込履歴等)との突き合わせを行うことが必要です。
参考リンク
| 機関・サービス | 案内ページ |
|---|---|
| 登記情報提供サービス(オンライン閲覧) | 登記情報提供サービス |
| 登記・供託オンライン申請システム(証明書のオンライン申請) | 登記・供託オンライン申請システム |
相続トラブルに備えたアドバイス
特別受益の持戻し・遺留分請求の手がかりにする
被相続人の生前に、特定の相続人(典型的には子・孫・配偶者)へ不動産が贈与されていたケースでは、その登記履歴が後の特別受益の持戻し・遺留分請求の重要な手がかりになります。所有権移転の履歴を確認し、移転時期や移転原因を整理しておくことをお勧めします。
なお、遺留分侵害額の請求においては、原則として相続開始前10年以内の特別受益が算入対象となります(民法1044条3項)。その点でも、登記情報で移転時期や移転原因を確認することが重要です。
相続放棄の判断材料にする
甲区に差押え・仮差押え・処分禁止仮処分の登記が残っている場合、被相続人が債務問題を抱えていた可能性があります。抵当権設定登記とあわせて、被相続人の債務状況を早期に把握することが望まれます。債務超過が疑われる場合、相続放棄(熟慮期間3か月以内)の判断に直結するため、信用情報機関への情報開示と並行して進めます。
休眠抵当の確認と残債務の照会
抵当権の登記が残っていても、被担保債権が完済されているケース(休眠抵当)はよくあります。抵当権者(金融機関等)に対して、残債務の有無を照会することが必要です。残債務がある場合は、相続債務として相続人に承継されます。住宅ローンが残っていても、団体信用生命保険によって完済されるケースもあるため、保険契約の有無も併せて確認しておきます。
共同担保目録による芋づる式の不動産調査
共同担保目録は、被相続人が所有する他の不動産を発見する強力な手がかりです。共同担保目録に記載された不動産が、名寄帳調査で把握済みの不動産と一致しているか照合することをお勧めします。名寄帳は市区町村ごとの作成であるため、被相続人が複数の市区町村に不動産を所有している場合、共同担保目録から把握漏れの市区町村が判明することがあります。
抵当権の確認による債務承継リスクの回避
抵当権の登記を見落としたまま遺産分割協議を成立させた後で、抵当権者からの請求により残債務の存在が判明する、というケースは実務上少なくありません。不動産の調査は登記事項証明書の取得で終わらず、乙区記載の抵当権者に対する残債務の照会まで含めて行うことが望まれます。
共有持分・配偶者居住権の見落としに注意
甲区欄に「共有」と記載されている不動産は、被相続人の持分のみが遺産分割の対象となります。共有持分の表示を見落とすと、被相続人が単独所有しているものと誤認したまま協議が進むおそれがあります。また、配偶者居住権(乙区に登記される)が設定されている不動産も、その負担を前提とした遺産分割となるため、必ず確認します。

