上場している不動産投資信託(J-REIT)の投資口は、株式と同じく振替制度の対象です。そのため、被相続人の取引証券会社が不明でも、証券保管振替機構(ほふり)への登録済加入者情報の開示請求により、REITを預けていた証券会社を特定できます。証券会社が判明したら残高証明書を請求し、保有銘柄・投資口数を確認します。相続税評価は、上場株式の評価方法に準じて行います(財産評価基本通達213)。確認すべき主な項目は、(1)取引証券会社(ほふり開示で特定)、(2)保有銘柄・投資口数(残高証明書)、(3)評価額(上場株式に準じて算定)の3点です。
不動産投資信託(REIT)の調査の概要
不動産投資信託(REIT・リート)とは、多数の投資家から集めた資金で不動産や不動産を担保とするローンに投資し、そこから生じる賃料や売買益を投資家に分配する金融商品です。仕組みは投資信託の一種ですが、実物資産である不動産を投資対象とし、投資法人(会社型の器)が発行する投資証券を金融商品取引所に上場させることで、一般の株式と同様に売買できるようにしたものです。株式に当たるものを「投資口」、株価に当たるものを「投資口価格」と呼びます。東京証券取引所のREIT市場(J-REIT)に上場している銘柄は、2026年6月時点で58銘柄です(最新の銘柄数は日本取引所グループの一覧で確認できます)。
REITの調査で押さえるべき出発点は、上場REITの投資口が、上場株式と同じく「社債、株式等の振替に関する法律」(社債株式等振替法)に基づく振替制度の対象(振替投資口)になっているという点です。振替制度の対象である以上、被相続人がどの証券会社にREITを預けていたか分からない場合でも、証券保管振替機構(ほふり)に登録済加入者情報の開示請求を行うことで、取引していた証券会社(口座管理機関)を特定できます。ほふりの開示対象には、内国株式やETFと並んで「投資口(REIT)」が明示的に含まれています。
ここで、同じ「投資信託」でも調査ルートが異なる点に注意が必要です。一般の証券投資信託(公募の投資信託)は、ほふりの開示請求の対象ではなく、販売会社(証券会社・銀行等)経由での調査になります。これに対し、上場REITは株式と同じ振替制度に乗っているため、ほふり開示で取引証券会社を一括して洗い出せるのが特徴です。
相続税評価については、上場REITは1口ごとに、上場株式の評価方法に準じて評価します(財産評価基本通達213)。
申請主体・申請先・必要書類
REITの調査は、(1)ほふりへの開示請求で取引証券会社を特定する段階と、(2)証券会社に残高証明書を請求して保有内容を確認する段階の、2段階で進めるのが基本です。
| 段階 | 申請主体 | 申請先 | 主な必要書類 |
|---|---|---|---|
| (1) 取引証券会社の特定 | 法定相続人/その法定代理人・任意代理人/遺言執行者 | 証券保管振替機構(ほふり) | 開示請求書、被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍)謄本、請求者が相続人であることが分かる戸籍謄本、被相続人の住所確認書類(住民票の除票・戸籍の附票等)、請求者の本人確認書類 |
| (2) 保有内容の確認 | 法定相続人等 | (1)で判明した証券会社 | 各証券会社所定の相続手続書類、被相続人の出生から死亡までの戸籍、相続人の戸籍、相続人の印鑑証明書等 |
ほふりの開示請求は、被相続人名義の口座が「どの証券会社・信託銀行に開設されているか」という口座管理機関の一覧を確認するための制度です。開示請求書の様式や続柄ごとの必要書類は、ほふりの公式手続要領(相続人用)で確認できます。
調査の流れ
以下の手順で、被相続人が保有していたREITを把握できます。
ステップ1:ほふりへ登録済加入者情報の開示請求を行う
開示結果(登録済加入者情報通知書)には、被相続人名義の口座が開設されている証券会社等の一覧が記載されます。受付から結果送付まで1か月程度を見込みます(時期により前後します。最新の所要期間はほふりの案内で確認してください)。
ステップ2:判明した証券会社に残高証明書を請求する
開示結果に記載された証券会社へ連絡し、相続手続として残高証明書(相続開始日基準)を請求します。証券会社の支店・営業所では当該店舗内の口座しか分からない場合があるため、全店照会が可能な窓口に「加入者口座コード」を伝えて照会するとスムーズです。
ステップ3:保有銘柄・投資口数・評価額を確認する
残高証明書で、保有しているREITの銘柄名・投資口数・相続開始日時点の基準価格等を確認します。あわせて、相続税評価のために課税時期の最終価格や月平均額を確認します。
なお、費用の目安として、ほふりの開示請求には所定の開示費用がかかり(金額・支払方法は請求者の属性や受取方法により異なるため、ほふりの案内で確認してください)、証券会社の残高証明書発行にも各社所定の手数料がかかります。
取得した書類で確認すべき項目
REITの調査では、ほふり開示結果と証券会社の書類を突き合わせて、保有内容を正確に読み取ることが重要です。確認すべき主な項目は次のとおりです。
登録済加入者情報通知書(ほふり開示結果)の口座管理機関一覧
ほふり開示の結果として届く「登録済加入者情報通知書」には、被相続人名義の振替口座が開設されている証券会社等が一覧で記載されます。複数の証券会社が記載されることもあるため、すべての記載先に対して残高照会を行う必要があります。なお、この通知書で分かるのは「どの証券会社に口座があるか」までで、銘柄や保有残高は記載されません。担保の受入れ・差入れに関する情報も併せて確認できますので、REITが担保に供されていないかも確認しておきます。
残高証明書の銘柄名・投資口数・基準日
証券会社が発行する残高証明書では、保有しているREITの銘柄名と投資口数を確認します。REITは「口」単位で保有しますので、株式の「株数」に相当する「投資口数」を読み取ります。相続財産としての価額を確定するうえで、証明の基準日が相続開始日(被相続人の死亡日)になっているかを必ず確認してください。基準日がずれていると、相続開始時点の保有内容と一致しないことがあります。
特定口座年間取引報告書による取引証券会社の把握
被相続人の確定申告関係書類が残っている場合、「特定口座年間取引報告書」を確認すると、どの証券会社と取引があったかが分かります。REITを特定口座で保有していた場合、この報告書からも取引証券会社を辿れます。ほふり開示と併せて確認することで、口座の見落としを防げます。報告書には売買の状況も記載されるため、相続開始前後にREITの売却がなかったかを確認する手がかりにもなります。
証券会社からの郵便物・取引残高報告書
被相続人宛ての郵便物の中に、証券会社からの取引残高報告書や運用報告書、分配金の支払通知が残っていないかを確認します。これらはREITの保有先や銘柄を把握する直接の手がかりになります。相続開始後に届いた書類も含めて確認すると、口座の取りこぼしを防げます。
参考リンク
- 証券保管振替機構(ほふり)|登録済加入者情報の開示請求(開示対象に「投資口(REIT)」が含まれることを明記)
- 国税庁|財産評価基本通達 第8章(213 不動産投資信託証券等の評価)
- 日本取引所グループ|REIT銘柄一覧(上場J-REITの最新の銘柄一覧)
※主要な証券会社の相続手続案内は、各社の公式ページで確認できます。残高証明書の請求方法・必要書類は証券会社ごとに異なるため、口座が判明した証券会社の案内に従ってください。

