生命保険契約照会制度は、被相続人が契約者または被保険者となっている生命保険契約の有無を、生命保険協会が加盟会社全社に一括して照会する制度です。照会対象者(被相続人)の法定相続人・遺言執行者やその代理人が申請でき、利用料はWEB申請6,000円・書面申請7,000円(税込)です。ただし回答は「契約の有無」のみで、保険金額・受取人・契約内容は開示されません。共済や財形保険などは対象外のため、照会結果の限界を理解して使うことが重要です。
制度の概要
生命保険契約照会制度は、一般社団法人生命保険協会が運営する制度で、被相続人が契約者または被保険者となっている生命保険契約の有無を、協会が加盟会社全社にまとめて照会してくれるものです。高齢者が独居のまま亡くなる事案や認知症患者の増加といった社会状況を背景に、確実な保険金請求を確保するため、2021年(令和3年)7月に創設されました。前身は、東日本大震災(2011年)を契機に設けられた災害地域生保契約照会制度です。
照会対象者(被相続人)の氏名・生年月日等の情報をもとに、生命保険協会が我が国で営業する生命保険会社全社(協会の加盟会社)に調査を依頼し、各社からの回答(契約の有無)を取りまとめて照会者に回答します。複数の保険会社に一度の申請で照会できるため、保険証券が見つからない場合でも、契約先を効率的に特定できます。
ただし、調査の対象となるのは、照会を受け付けた日の時点で有効に継続している個人保険契約です。財形保険契約・財形年金保険契約、すでに支払いが開始した年金保険契約、保険金等が据え置きとなっている保険契約は対象から除かれます。また、この制度は生命保険協会の加盟会社のみを対象とするため、各種協同組合が運営する共済(JA共済・県民共済・全労済等)は照会できません。なお、かんぽ生命保険は協会の加盟会社に含まれます。
申請主体・申請先・必要書類
被相続人が死亡している場合(平時利用)、照会を申請できるのは次の方です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請できる人(照会者) | 照会対象者(被相続人)の法定相続人、遺言執行者、およびそれらの法定代理人・任意代理人(弁護士・司法書士その他協会が認めた者) |
| 申請先 | 一般社団法人生命保険協会(生命保険契約照会制度事務局) |
| 申請方法 | WEB申請または書面申請 |
| 利用料 | WEB申請6,000円/書面申請7,000円(いずれも税込・照会対象者1名につき) |
法定相続人であれば、一人で単独に照会を申請できます。この場合、その相続人が照会者かつ照会代表者となり、本人確認書類・相続関係を示す書類・死亡が確認できる書類を提出すれば、加盟会社全社における契約の有無について回答を受けられます。他の相続人の同意や委任は必要ありません。
申請に必要な主な書類(法定相続人が照会する場合)は次のとおりです。
| 必要書類 | 内容・取得先 |
|---|---|
| 照会代表者の本人確認書類 | 運転免許証・運転経歴証明書、個人番号カード(マイナンバーカード)、資格確認書のいずれか1種類(健康保険証は2025年12月2日以降使用不可) |
| 相続関係を示す書類 | 法定相続情報一覧図(法務局で認証を受けた相続関係の一覧図)が原則。提出できない場合は、照会対象者と照会者の関係を示す戸籍全部事項証明書・除籍全部事項証明書等で代替 |
| 照会対象者の死亡が確認できる書類 | 死亡診断書等。ただし法定相続情報一覧図を提出する場合や、提出する戸籍に死亡日の記載がある場合は不要 |
| 委任状兼同意書(該当時) | 照会代表者以外に照会者がいる場合に、その人数分の所定様式を提出 |
提出書類はすべて写し(コピー)で対応し、原本は手元に残します。相続関係書類の不足・不備があると再提出となり回答が遅れるため、生命保険協会は原則として法定相続情報一覧図(法務局認証済み)の提出を求めています。
申請の流れ
照会は、おおむね次のステップで進めます。
ステップ1:手掛かりを探す
制度を利用する前に、まずは生命保険証券、保険会社から定期的に届く郵便物(契約内容のお知らせ・カレンダー等)、預金通帳の保険料の口座振替履歴、被相続人の源泉徴収票や確定申告書の生命保険料控除欄などから、契約先の手掛かりがないかを確認します。
ステップ2:申請方法を選ぶ
WEB申請と書面申請のいずれかを選択します。WEB申請は利用料をクレジットカードで支払え、書面申請よりも数日早く、マイページ上で回答を確認できます。
ステップ3:必要書類を準備する
本人確認書類、相続関係を示す書類(法定相続情報一覧図等)、死亡が確認できる書類などを写しで用意します。
ステップ4:申請し、利用料を支払う
WEB申請ではマイページを登録し、書類をアップロードして利用料を支払います。書面申請では申込フォームの入力後に申請書類が郵送され、記入・書類添付のうえ返送します。
ステップ5:回答を受領する
利用料の支払いが確認できてから約2週間程度で、生命保険会社ごとの契約の有無が回答されます(WEB申請はマイページで確認、書面申請は郵送)。
なお、利用料は照会対象者1名につき、2026年4月以降の新規申請分からWEB申請6,000円・書面申請7,000円です。調査の結果、契約が見つからなかった場合でも利用料は返金されません。
照会結果(回答)の読み方
照会結果は「契約の有無」を中心とした簡潔なものですが、相続調査としては、回答から何が読み取れ、何が読み取れないのかを正確に切り分けることが重要です。
各生命保険会社ごとの契約の有無
回答の中心は、加盟会社ごとに被相続人名義(契約者または被保険者)の生命保険契約があるかどうかです。「契約あり」と回答された会社が、被相続人が契約していた保険会社です。契約が複数社にまたがっている場合は、それぞれが回答されます。
死亡保険金受取人への該当
照会事由が照会対象者の死亡の場合、照会者が死亡保険金受取人になっている契約については、その旨も回答されます。ただし、契約の有無の回答は照会代表者も照会者も全員同じである一方、死亡保険金請求権の有無の回答は照会者ごとに異なります。誰が受取人かまでを網羅的に知ることができる制度ではない点に注意が必要です。
「契約あり」と回答された場合の次の手続
「契約あり」と判明したら、その保険会社のコールセンターに直接連絡し、「生命保険協会の生命保険契約照会制度を利用した」旨を伝えて、契約内容の確認や保険金の請求手続を行います。生命保険協会はこれらの業務を代行しません。なお、保険金・給付金の正当な権利者以外の方には、保険会社が情報開示を控える(正当権利者からの連絡を求める)場合があります。
「契約なし」と回答された場合の解釈
全社から「契約なし」と回答されても、被相続人が保険に一切加入していなかったとは限りません。この制度の対象外である共済、財形保険、すでに支払いが開始した年金保険、保険金が据え置きとなっている契約などは照会されないためです。「契約なし」は、あくまで「協会加盟の生命保険会社に、有効な個人保険契約は見当たらなかった」という意味にとどまります。
照会では分からない情報
この制度で分かるのは「どの会社に契約があるか」までです。保険金額、受取人が誰か、特約の内容、契約日や受取人変更の履歴といった契約内容は開示されません。これらは、契約が判明した後に保険証券を確認するか、各保険会社へ個別に照会して把握する必要があります。
参考リンク
相続トラブルに備えたアドバイス
照会結果は、その後の遺産分割や保険金請求の前提となる重要な情報です。確認した内容を後の手続にどう活かすか、見落とすとどのようなリスクがあるかという観点から、弁護士の視点で留意点を整理します。
「契約なし」回答と共済の別途調査
前述のとおり、この制度は生命保険協会の加盟会社のみを対象とし、共済(JA共済・県民共済・全労済等)は照会されません。被相続人が共済に加入していた場合、この制度では「契約なし」となるため、共済を見落とすおそれがあります。通帳の引落し履歴や郵便物から共済加入の手掛かりが得られる場合には、各共済団体へ別途問い合わせることをお勧めします。
受取人指定された保険金の遺産分割上の扱い
特定の相続人が受取人に指定された死亡保険金は、原則として受取人固有の財産であり、遺産分割の対象にはなりません。そのため、照会で判明した保険金は、調査の整理上は遺産分割の対象外として扱うのが原則です。もっとも、保険金額が遺産全体に比して著しく高額であるなどの事情がある場合には、例外的に特別受益に準じて持戻しの対象となることがあります。最高裁は、保険金受取人である相続人と他の共同相続人との間に生ずる不公平が到底是認することができないほどに著しい特段の事情がある場合には、民法903条の類推適用により持戻しの対象となると判断しています(最決平16.10.29)。
保険料負担者が被相続人の場合の留意点
この制度で名寄せされるのは、照会対象者(被相続人)が契約者または被保険者となっている契約です。したがって、被相続人が契約者でも被保険者でもなく、保険料だけを負担していた契約(たとえば配偶者を契約者・被保険者とする契約の保険料を被相続人が支払っていた場合等)は照会されません。こうした契約は、税務上はみなし相続財産として相続税の課税対象になりうるため、照会結果だけに頼らず、通帳の保険料引落しなどから保険料負担の実態を確認しておくことが望まれます。あわせて、契約者貸付・解約返戻金といった保険契約に付随する権利の調査も検討してください。
時効・申告期限を踏まえた早期申請
死亡保険金などの保険金請求権は、原則として権利を行使できる時から3年で時効消滅します(保険法95条1項)。相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月)も踏まえると、契約先が分からず保険金請求が滞っている場合には、早めに照会を申請することが望まれます。
照会結果通知書の保管と相続人間の共有
照会結果通知書は原本を保管し、相続人間で共有しておくことをお勧めします。「どの会社に保険があったか」という調査結果を相続人全員で確認しておくことで、後の遺産分割協議の際に保険の有無をめぐって認識の食い違いが生じたり、協議が蒸し返されたりするリスクを抑えることができます。

