寄与分は、第一に共同相続人の協議によって定めます。協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、家庭裁判所に寄与分を定める処分の調停または審判を申し立てます。ただし、審判の申立ては、遺産分割の審判事件が係属している場合などに限られます(民法904条の2第4項)。
寄与分を定める手続の概要
寄与分(被相続人の財産の維持・増加に特別の貢献をした相続人に認められる相続分の上乗せ分)は、相続の開始後に共同相続人の協議によって定めるのが原則です(民法904条の2第1項)。協議が調わないとき、または協議をすることができないときには、家庭裁判所の手続を利用できます(同条2項、家事事件手続法244条・別表第2の14の項)。
共同相続人の協議
↓ 協議が調わない/協議ができない
寄与分を定める処分の調停(家庭裁判所)
↓ 調停が成立しない
寄与分を定める処分の審判(家庭裁判所)
↓ 審判に不服がある
即時抗告(高等裁判所)
家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して寄与分を定めます(民法904条の2第2項)。裏を返せば、寄与分の額は、共同相続人の協議が調うか、家庭裁判所の審判があるまでは確定しません。寄与分制度そのものの内容については、「寄与分とは何ですか?わかりやすく教えてください」で詳しく解説しています。
すでに寄与分を定める協議が成立している場合は、家庭裁判所の手続を使う前提を欠きます。広島家審昭和61年5月15日では、寄与分を定める協議が既に成立した場合、寄与分を定める処分の申立ては却下されると判断されています。
申立ての要件・当事者・管轄
審判と調停で異なる申立ての要件
寄与分を定める処分の審判は、いつでも単独で申し立てられるわけではありません。審判の申立てができるのは、遺産分割審判事件が係属している場合(民法907条2項)か、被認知者の価額支払請求(民法910条)があった場合に限られます(民法904条の2第4項)。遺留分侵害額請求の訴訟や調停が係属していても、この要件を満たしません。
浦和家飯能出審昭和62年12月4日でも、寄与分は遺産分割の前提問題としての性格を有するから、寄与分を定める申立ては遺産分割審判の申立てがある場合に限ってすることができると判断されています。
これに対して調停は異なります。民法904条の2第4項にいう家庭裁判所に対する「請求」は家事審判の申立てを指すため、同項は家事調停には適用がありません。そのため、遺産分割調停が係属していなくても、寄与分を定める処分の調停だけを申し立てることは法律上可能です。
ただし、この調停が不成立となって審判に移行したときに遺産分割審判事件が係属していなければ、遺産分割審判の申立てをしない限り、民法904条の2第4項により、移行後の寄与分を定める処分の審判の申立ては却下されます。実務でも、寄与分についてだけ合意に達しても遺産分割をめぐる紛争が終局的に解決する例は多くないため、調停委員会が遺産分割調停の申立てを打診するのが通常です。
申立人と相手方
申立人となるのは、寄与分を主張する相続人です(民法904条の2第2項)。相手方は、申立人以外の共同相続人全員で、包括受遺者および相続分の譲受人も含まれます。
寄与分を主張する相続人ごとに事件を立件するため、寄与分を主張する人が複数いる場合には、その人数だけの申立てが必要になります。
申立先(管轄)
| 手続 | 原則の管轄 | 遺産分割事件が係属している場合 |
|---|---|---|
| 寄与分を定める処分の審判 | 被相続人の相続開始地を管轄する家庭裁判所(家事事件手続法191条1項)。当事者の合意で定める余地もある(同法66条) | 遺産分割の審判事件が現に係属している裁判所(同法191条2項)。抗告審に係属した後は、その高等裁判所 |
| 寄与分を定める処分の調停 | 相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所(同法245条1項) | 遺産分割調停事件が係属している家庭裁判所に申し立てなければならない(同法245条3項・191条2項) |
申立書の記載事項
申立ては、申立書を提出して行います(家事事件手続法49条1項)。形式的な記載事項は遺産分割の申立書と同じで、これに事件の実情の記載が求められます(家事事件手続規則1条1項、37条1項)。
寄与分を定める処分の申立書には、さらに次の事項の記載が必要です。
| 記載事項 | 根拠 |
|---|---|
| 寄与の時期、方法及び程度その他の寄与の実情 | 家事事件手続規則102条2項1号 |
| 遺産分割の審判・調停事件の申立てがあったときは、その事件の表示(事件番号・事件名など) | 同項2号 |
| 被認知者の価額支払請求における申立ての場合は、共同相続人及び相続財産の表示、認知された日、既にされた遺産の分割その他の処分の内容 | 同項3号 |
申立書の写しは相手方に送付されるため、相手方の数と同数の写しが必要です(家事事件手続規則47条)。寄与を裏付ける資料の集め方については、「寄与分を認めてもらうにはどんな証拠が必要ですか?」で詳しく解説しています。
手続の流れ
1 共同相続人の協議
遺産分割協議の中で、寄与分の有無とその額を話し合います。合意ができれば、その内容に従って寄与分が定まり、家庭裁判所の手続は不要です。
2 寄与分を定める処分の調停
協議が調わない場合は、調停を申し立てます。遺産分割調停事件と寄与分を定める処分の調停事件は併合が義務づけられており、調停手続自体も併合して行われます(家事事件手続法245条3項・192条)。寄与分を主張する相続人が複数いる場合も同じです。
調停の進行としては、遺産の範囲や評価について合意ができた段階で寄与分の議論に入るのが一般的です。寄与分は共同相続人の間で感情的な対立がもっとも先鋭化しやすい論点であるため、その前提となる事項を先に固めてから扱う進め方がとられています。
調停が成立する場合、遺産分割調停事件と併合されているときは、当事者全員が希望すれば寄与分の結論を調停条項にすることもできます。ただし審判と異なり、必ずこの条項を設けなければならないわけではありません。
3 寄与分を定める処分の審判
調停が不成立で終了した場合は、寄与分を定める処分の審判の申立てがあったものとみなされ、審判手続に移行します(家事事件手続法272条4項)。
遺産分割の審判と寄与分を定める処分の審判は、併合して審理しなければなりません(同法192条前段)。数人から寄与分を定める処分の審判が申し立てられた場合も同じです(同条後段)。併合が強制されるため、両事件は1個の審判で判断され、寄与分を定める処分だけを独立して審判することはできません。もっとも、両事件は別個の事件であるため、審判の主文では、認定された寄与分と遺産分割の判断が区別して記載されます。
審理の途中で寄与分について当事者全員の争いがなくなった場合には、寄与分を定める処分の審判事件を分離して調停に付し、その調停を成立させることも可能と解されています。
4 不服申立て
審判に不服がある場合は、高等裁判所に即時抗告を申し立てます。抗告できるのは、申立てを認容する審判については相続人、申立てを却下する審判については寄与分を定める処分事件の申立人です(家事事件手続法198条1項4号・5号)。
寄与分の判断が変われば遺産分割の内容も変更を余儀なくされるため、遺産分割の審判と寄与分を定める処分の審判が併合されている場合、寄与分の審判についてだけ独立して即時抗告をすることはできません(同条2項)。数人からの申立てが併合して審判されたときは、申立人の1人がした即時抗告が申立人全員に対して効力を生じます(同条3項)。
申立て時期の制限
寄与分を定める処分の調停・審判は、相続開始から遺産分割の終了までの間、いつでも申し立てられるのが原則です。ただし、寄与分は遺産分割の前提問題であり、申立てが遅れると遺産分割審判の手続が遅れます。そこで、家庭裁判所は1か月を下らない範囲内で申立ての期間を定めることができ、その期間を過ぎてされた申立てを却下できます(家事事件手続法193条1項・2項)。
期間が定められていない場合でも、時機に後れて申立てをしたことについて申立人に責めに帰すべき事由があり、かつ、併合により遺産分割審判の手続が著しく遅滞することになるときは、申立てが却下されることがあります(同条3項)。
また、申立て自体の期限ではありませんが、相続開始の時から10年を経過した後の遺産分割では、原則として具体的相続分(寄与分)の主張ができません(民法904条の3・2023年4月1日施行)。この期間を過ぎると、法定相続分または指定相続分による分割が原則となります。

