遺産分割が終わるまで待たなくていい!アパートの「家賃」を独り占めするきょうだいに今すぐ請求する方法

「遺産分割の話し合いがまとまるまでは、家賃も渡せない」
「管理しているのは俺だ。家賃はお前には関係ない」

親が亡くなり、アパート経営を引き継ぐことになった際、通帳を管理している兄弟からこのようなことを言われて困っていませんか? 遺産分割協議が長引けば長引くほど、毎月入ってくるはずの家賃収入がどこに消えているのか不安になるのは当然です。

結論から申し上げますと、「話し合いが終わるまで家賃がもらえない」という相手の主張は、法的に間違いです。

あなたは遺産分割協議の成立を待たずに、今すぐに自分の取り分を請求する権利を持っています。この記事では、なぜ今すぐ請求できるのかという法的な根拠と、具体的な請求金額の計算方法を解説します。

目次

誤解していませんか?「家賃」は遺産分割の対象外です

多くの相続トラブルにおいて、家賃を独り占めしている側は、「アパート(不動産)の行き先が決まっていないのだから、そこから出る家賃もまだ誰のものか決まっていない」と主張します。しかし、これは大きな誤解です。

アパート本体は「遺産」だが、家賃は「相続人の財産」

まず、法律上の「遺産」と「家賃」を明確に分けて考える必要があります。

  • アパート本体(不動産): 遺産分割協議で誰が相続するか決めるまで、相続人全員の「共有財産(遺産)」です。
  • 相続開始「後」の家賃: 遺産とは別個の財産であり、発生した瞬間に各相続人のものになります。

最高裁判所の判例でも、相続開始から遺産分割までの間に発生した家賃は「遺産とは別個の財産」であり、各相続人がその相続分に応じて「分割単独債権として確定的に取得する」とされています。

つまり、アパートを長男が継ぐか次男が継ぐか揉めていたとしても、「今月入ってきた家賃」は、話し合いの結果を待つことなく、自動的に法定相続分で分けられることが確定しているのです。

毎月発生するたびに、あなたの取り分は確定している

例えば、相続人が兄弟2人(法定相続分は各2分の1)だとします。

親が亡くなった翌月に10万円の家賃が入った場合、その瞬間に5万円はあなたのものです。

遺産分割協議は、あくまで「親が遺したプラスの財産とマイナスの財産」をどう分けるかという話し合いです。親が亡くなったに発生した家賃(果実といいます)は、そもそも遺産分割の対象には含まれません。

したがって、相手が「遺産分割が終わるまで渡さない」と言うのは、あなたの財布に入っているお金を「話し合いが終わるまで俺が預かる」と言っているのと同じであり、法的な根拠はありません。

独り占めは許さない!具体的な請求金額の計算式

「権利があるなら全額請求したい!」と思うかもしれませんが、請求額には注意が必要です。アパート経営にはコストがかかるため、入ってきた家賃(売上)をそのまま請求できるわけではありません。

請求できるのは「売上」ではなく「利益(経費を引いた額)」

相続人は、プラスの財産だけでなく、管理費用などのマイナスの負担も負います。これを「管理費用」といいます。

具体的には、以下の費用は、相続人全員で負担すべきものです。

  • 固定資産税・都市計画税
  • 建物の修繕費・リフォーム代
  • 共用部分の水道光熱費
  • 火災保険料

もし、家賃を管理している兄弟がこれらの費用を立て替えて支払っている場合、あなたは「家賃収入」から「自分の負担すべき経費」を差し引いた金額しか請求できません。

【計算例】家賃100万、経費20万、兄弟2人の場合

兄弟2人(法定相続分1/2ずつ)で相続した場合の計算式を見てみましょう。

基本の計算式

( 家賃収入総額 - 必要経費 )× あなたの法定相続分 = 請求可能額

具体的な数字でのシミュレーション

  • 相続開始後の家賃収入合計:100万円
  • 支払った経費合計(税金・修繕費など):20万円
  • あなたの法定相続分:2分の1(50%)

(100万円−20万円)×1/2=40万円

この場合、あなたは、家賃を独り占めにしている相続人に対し、40万円を今すぐ支払うよう請求できます。

逆に言えば、相手が「修繕費がかかったから金がない」と主張する場合、その領収書や明細を確認し、正当な経費であるかをチェックする必要があります。

相手が「払わない」と言った時の対処法

法的な権利を説明しても、相手が感情的になって支払いに応じないケースも考えられます。その場合の対処法は大きく2つあります。

遺産分割協議とは別に「不当利得返還請求」ができる

前述の通り、家賃は遺産分割の対象ではありません。そのため、相手があなたの取り分を勝手に使ったり、保持し続けたりすることは「不当利得(正当な理由なく得ている利益)」にあたります。

あなたは、遺産分割調停などの話し合いとは別に、民事訴訟で「不当利得返還請求」を行うことができます。

「遺産の話がまとまらないなら、家賃だけでも先に裁判で請求する」という姿勢を見せることは、相手に対する強力なプレッシャーになります。

面倒なら「遺産分割の中でまとめて精算」も可能(合意が必要)

「わざわざ別の裁判を起こすのは手間と費用がかかる」という場合は、現在行っている(あるいはこれから行う)遺産分割協議の中で、家賃についてもまとめて解決することを目指します。

ただし、これには条件があります。「相続人全員が、家賃も遺産分割の対象に含めることに合意すること」が必要です。

実務上は、「これまでの家賃収入○○万円は、アパートを取得する○○が受け取る代わりに、代償金を多めに支払う」といった形で調整することがよくあります。相手にとっても、別途訴えられるよりは、一回で解決できた方がメリットがあるため、この提案に応じる可能性は高いでしょう。

まとめ:通帳の開示を求め、まずは正確な「残高」の把握を

アパートの家賃は、遺産分割が終わるのを待つ必要はなく、法的にあなたのものです。しかし、実際に請求するためには「いくら入ってきて、いくら経費がかかったか」という正確な数字が不可欠です。

まずは、管理している兄弟に対し、以下の2点を強く求めてください。

  1. 賃貸借契約書や通帳の開示(正確な家賃収入を知るため)
  2. 固定資産税の納税通知書や修繕費の領収書の開示(経費を差し引くため)

「話し合いが終わるまで見せない」というのは通用しません。まずは正確な数字を把握し、今回ご紹介した計算式に当てはめて、堂々とご自身の権利を主張してください。

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