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遺留分を生前贈与(特別受益)で増やす4つのポイント

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生前贈与を発見すれば遺留分も増える

遺留分は、法定相続分×1/2×相続財産という単純な計算式で決まるのではなく、被相続人(亡くなった方)による生前贈与の有無も関わってきます。遺留分を計算するには、その前提として「遺留分を算定するための財産の額」を算定する必要がありますが、計算式は以下のようになっています。

「遺留分を算定するための財産の額」
=相続開始時における相続財産(プラスの財産)の額+相続人に対する生前贈与の額(原則10年以内)+第三者に対する生前贈与の額(原則1年以内)-相続債務(マイナスの財産)の額

つまり、被相続人による生前贈与があればあるほど、「遺留分を算定するための財産の額」が大きくなり、遺留分も増えます。生前贈与で減った相続財産を取り戻すようなイメージです。

遺留分に算入する生前贈与は限定されている

もっとも、あらゆる生前贈与が「遺留分を算定するための財産の額」に加算されるわけではなく、限定されています。遺留分に算入する生前贈与について、民法1044条では以下のとおりに定められています。

第千四十四条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
2 第九百四条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。
3 相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。

民法1044条では、遺留分の計算に算入される生前贈与にいくつかの条件をつけており、あらゆる生前贈与が遺留分の計算に算入されるわけではないことが分かります。ポイントとなるのは、以下の4点です。

  1. 誰に対する生前贈与か
  2. いつの生前贈与か
  3. 遺留分を侵害する認識があったか
  4. どのような生前贈与か

ポイント1:誰に対する生前贈与か(贈与の相手)

相続人に対する生前贈与と相続人以外の第三者に対する生前贈与とでは、遺留分に算入される生前贈与の期間や内容が異なります。そのため、まずは誰に対する生前贈与か仕分けをします。

ポイント2:いつの生前贈与か(贈与の時点)

相続人に対する生前贈与は、原則として、相続開始前の10年間になされたものに限り、遺留分に算入されます(民法1044条3項)。

これに対し、相続人以外の第三者に対する生前贈与は、原則として、相続開始前の1年間になされたものに限り、遺留分に算入されます(民法1044条1項)。

つまり、遺留分に算入される生前贈与は、遥か昔のものであってはならず、期間制限があるということになります。

ポイント3:遺留分を侵害する認識があったか(遺留分侵害の認識)

ポイント2で述べたとおり、遺留分に算入される生前贈与には期間制限があります。
しかし、生前贈与の当事者(あげる人ともらう人)が双方とも遺留分を侵害する認識があった場合には、例外的に期間制限が外れます(民法1044条1項)。

なお、遺留分を侵害する認識があれば足り、損害を与えるという加害の意図や遺留分権利者が誰かを知っている必要はないとされています。

ポイント4:どのような生前贈与か(贈与の内容)

相続人に対する生前贈与の場合、遺留分に算入される贈与は、「婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与」に限られます(民法1044条3項)。つまり、遺産分割における特別受益(民法903条1項)と同様、相続分の前渡しというべき特別な受益(贈与)を遺留分に戻すことになります。

特別受益としての生前贈与に該当するかについては様々な論点があり、ここの主張・立証で請求額が大きく変わる場合もあります。

遺留分に算入する生前贈与のまとめ

遺留分に算入する生前贈与をまとめると、以下のとおりになります。生前贈与は何でも遺留分に算入していいと誤解する方もいますが、そこまで単純な話ではありませんので、注意が必要です。

  • 相続人に対する生前贈与
    →原則:10年以内の生前贈与(特別受益)
     例外:遺留分を侵害する認識のある生前贈与(特別受益)
  • 相続人以外に対する生前贈与
    →原則:1年以内の生前贈与
     例外:遺留分を侵害する認識のある生前贈与
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