「遺産分割の流れ」を一気に解説!いつ何をすべきか重要ポイントが分ります。
「親が亡くなったが、初めての相続なので、遺産分割の流れや手続きがよく分からない・・・」
「瑣末な手続きが多く、遺産分割でこれだけは知っておくべきという重要なポイントがよく分からない・・・」
今、あなたもこのように悩んでいませんか?
「遺産分割の流れ」に関して、同じような悩みを抱え、当事務所にご相談される方が多くおられますので、その気持ちはよく分かります。
この記事は、以下のような方におすすめの内容になっています。
- 相続で押さえておくべき重要な手続きは何か、それをいつまでにやったらいいかを一気に理解したい。
- 「相続の流れ」の中で、重要なポイントを簡潔に押さえたい。
- 気になった時に見返すことで、重要なポイントを見落とさないようにしたい。
実際、瑣末な手続きに気を取られず、重要なポイントを意識することで、遺産分割において本来やるべきことを見落とさずに済んだ方も多くおられます。
この記事を読み終わった頃には、遺産分割の流れの中で、いつどのようなことをすべきかが分かり、正しい相続を実現できるようになるでしょう。
STEP
相続放棄を検討する場合、単純承認しないように気をつける
- タイミング
相続開始後、即時 - 調査・対応すべきこと
安易に遺産を処分、解約、隠匿しない。 - 解説
遺産よりも借金が多い場合、そもそも遺産分割ではなく、相続放棄を検討することになります。
相続放棄は、相続が開始した3か月以内に手続をする必要があります(民法915条1項)。
しかし、相続を承認してしまうと、たとえ3か月以内であっても、相続放棄できなくなります(民法920条)。
安易に預貯金の引き出しなどをすると、相続を承認したことになり、相続放棄ができなくなります(「単純承認」といいます)。
そのため、相続放棄をする可能性があるのであれば、相続が開始した瞬間から遺産の取扱いには注意し、相続承認を避ける必要があります。
STEP
遺言書を探し、手書きの遺言書があれば、検認手続を行う
- タイミング
相続開始後、早い段階で - 調査・対応すべきこと
①遺言書の有無を調査する。
②自筆証書遺言を発見したら、家庭裁判所で検認手続をする。 - 解説
遺言書があれば、遺産の分け方が決まりますので、遺言書のとおりに名義変更や解約手続きをすれば足ります。
相続の進め方に大きな影響を与えるため、遺産分割協議をする前に、早い段階で遺言書の有無を調査する必要があります。
具体的には、亡くなった方の自宅、貸金庫、経営している会社、公証役場などで調査をします。
見つかった遺言が自筆証書遺言(手書きの遺言)であれば、原則として、家庭裁判所で「検認」という手続が必要になります。
しかし、公正証書遺言であれば、検認は不要ですので、すぐに相続手続きに着手できます。
また、手書きの遺言書のうち、自筆証書遺言書保管制度で法務局が預かっている遺言書も、検認は不要です。
なお、遺言書があっても、遺言書に書いていない遺産については、分け方が決まりませんので、遺産分割が必要になります。
STEP
相続財産と相続債務を調査する
- タイミング
相続開始後、1か月後くらいには着手 - 調査・対応すべきこと
①被相続人の預金通帳、保険証券、権利書、請求書、契約書等を確認する。
②被相続人の預金口座の出入金を精査する。 - 解説
相続財産や相続債務の詳細を把握するには、預金通帳や保険証券といった裏付け資料を確認する必要があります。
特に預金通帳は、相続財産や相続債務を調査するための最重要の資料ですので、相続手続きが終わるまで捨てないよう注意してください。
被相続人の預金口座の出入金を精査し、証券会社からの入金、保険料の引落し、固定資産税やローンの引落しなど、相続財産や相続債務に関する痕跡を確認します。
公平な遺産分割や正確な相続税申告を行うためには、預金口座の出入金を精査することが大前提となります。
漏れが生じないよう、預金通帳の記載内容を一つ一つ確認する必要があります。
STEP
使途不明金(使い込み)・生前贈与の調査
- タイミング
相続開始後、1か月後くらいには着手(相続財産・相続債務の調査と同時並行) - 調査・対応すべきこと
被相続人の預金口座の出入金を精査する。 - 解説
被相続人の預金口座を精査し、多額のお金の引出しや口座振込みの有無を調査します。
おかしな引出しがある場合には、被相続人と同居していた相続人や通帳を管理していた相続人に、預金を払い戻した理由や使い道を確認します(生前贈与や使い込みの可能性を調査)。
なお、預金口座の精査は、遺産分割において必須の作業ではないため(特に、相続税申告の必要がない場合)、多額の引出しがあることを知らずに遺産分割が終わる場合も多いです。
しかし、お金を引き出したことにより遺産が減ってしまったわけですから、その減ってしまった遺産をいくら公平に分けたとしても、本当に公平な遺産分割は実現できません。
税務調査で指摘を受ける可能性もありますので、通帳が残っているのであれば、7年分はやっておいた方が安全です。
STEP
相続人の調査・確定
- タイミング
相続開始後、1か月後くらいには着手(相続財産・相続債務の調査と同時並行) - 調査・対応すべきこと
戸籍を集め、相続人の調査・確定をする - 解説
相続人が一人でも漏れてしまうと、遺産分割はやり直しになります。
そのため、代襲相続人(本来の相続人が先に亡くなった場合に相続人になる人)を含め、漏れのないようにきっちりと調査する必要があります。
また、相続放棄をした場合、次順位の相続人が相続人となります。
そのため、自分は相続人ではないと思っていた人が、思いがけず相続人になる場合があります。
相続債務を引き継がないよう、相続人の順位も意識し、次順位の相続人にも相続放棄を促す必要があります。
STEP
相続財産の評価
- タイミング
不動産など主要な相続財産が確定したら - 調査・対応すべきこと
不動産査定などで相続財産の評価額を算出する - 解説
公平な遺産分割を実現するためには、相続財産を正しく評価する必要があります。
預貯金の残高証明書、保険の解約返戻金計算書、不動産の査定書などにより、客観的に相続財産の評価額を算出します。
なお、相続税評価額は、あくまでも相続税申告をする際の評価額であり、遺産分割をする際の評価額ではありませんのでご注意ください。
たとえば、小規模宅地の特例という税務特例で不動産の評価額は大幅に下がりますが、遺留分や遺産分割での評価額は違います。「通常の評価額」で不動産の評価をしたいとお考えであれば、不動産業者2~3社から簡易査定書をもらい、市場での評価額を確認してみた方がいいでしょう(無料でもらえます)。
STEP
相続放棄を検討し、家庭裁判所に申述の手続をする
- タイミング
相続開始後、3か月以内 - 調査・対応すべきこと
家庭裁判所で相続放棄の手続をする - 解説
相続財産と相続債務を調査した結果、相続放棄することにした場合、家庭裁判所に申述の手続をする必要があります。
もし相続したい財産がある場合には、限定承認という中間的な方法を検討します。
なお、相続手続の中で、他の相続人から相続放棄の書面が送られてくることがあります。
しかし、家庭裁判所で手続きを行わないと、正式に相続放棄したことにはなりません。
最悪、遺産はもらわないのに、借金は支払いを求められる可能性がありますので、安易に相続放棄の書面にサインするのは避けましょう。
STEP
特別寄与の有無を検討し、相続人に特別寄与料を請求する
- タイミング
①検討作業:相続開始後、遅くとも3か月後ぐらいには着手
②請求手続:相続開始後、6か月以内 - 調査・対応すべきこと
相続人「以外の」親族が被相続人に対して行った貢献を金額算定し、相続人に特別寄与料を請求する。 - 解説
相続人「以外の」親族は、相続人ではありませんので、被相続人の遺産を相続しません。
そのため、寄与分で相続分が増えることもありません。
しかし、平成30年の相続法改正により、相続人「以外の」親族が被相続人に対して行った貢献については、相続人に金銭で請求できるようになりました(特別寄与料の請求)。
もっとも、どのような貢献でも対象になるわけではなく、いくつかの要件があります。
そのため、特別寄与料を請求するには、要件を満たしているかどうかを慎重にチェックする必要があります。
また、相続の開始等を知った時から6か月以内に裁判所に申立てをする必要があります。
証拠を探したり、申立書を作成したりする時間も考慮すると、早い段階から着手した方が無難です。
STEP
寄与分の有無を検討し、金額を算定する
- タイミング
遺産分割協議の前までには着手 - 調査・対応すべきこと
被相続人に対する貢献をピックアップし、金額を算定する。 - 解説
被相続人に対する貢献は「寄与分」といい、寄与分が認められると、遺産分割でもらえる相続分が多くなります。
しかし、どのような貢献でも対象になるわけではなく、「特別な貢献」といえる程度の貢献が必要です。
寄与分に該当する「特別な貢献」か、裏付けはあるか、寄与分の金額算定は合理的かなどをしっかり整理しないと、他の相続人ともめる原因になりますので、慎重な対応が必要です。
STEP
遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成する
- タイミング
(可能であれば)相続開始後10か月以内 - 調査・対応すべきこと
遺産の分け方を相続人同士で話し合い、遺産分割協議書を作成する。 - 解説
特別受益、寄与分だけでなく、使途不明金(使い込み)、相続した賃貸物件の賃料分配、葬儀費用の負担についても、遺産分割の中で金額の話し合いができます。
相続税の申告期限は10か月ですので、申告期限に間に合わせるためには、早めに遺産の調査と遺産分割の話し合いを進める必要があります。
もっとも、申告期限に間に合わない場合は、未分割のまま仮の申告をしておき、協議がまとまったら修正することもできます。
そのため、遺産の分け方に納得できない場合には、不満を残したまま遺産分割協議書にサインをする必要はありません。
悩むようであれば、とりあえず相続税は未分割で申告しておき、納得できない部分を解消してから、遺産分割協議書にサインしましょう。
STEP
遺産分割調停の申立て
- タイミング
遺産分割協議がまとまる見込みがないとき - 調査・対応すべきこと
家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる。 - 解説
遺産分割協議がまとまらないときは、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。
裁判所のスケジュールに沿って進みますので、調停を申し立てた方が早い場合もあります。
特に、他の相続人の対応が遅かったり、意見の違いで平行線になっている場合は、調停申立てをおすすめしています。
もっとも、裁判所の手続ですので、自分の言い分を通すためには法的な論理構成と裏付け(証拠)が重要です。
また、調停でもまとまらない場合は、裁判所が審判で決着を付けますが、こちらは裏付けが必須になります。
そのため、裏付けの有無も意識しながら、どの手続きで進めるかを検討する必要があります。