被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本は自分で簡単に集められる!広域交付制度のメリットと手続きを解説
相続では、被相続人(亡くなった人)の出生から死亡までの戸籍謄本が必要です。これまでは、戸籍を読み解き、前の戸籍を芋づる式に遡らなければなりませんでした。しかし、最近、「広域交付制度」という新しい制度ができ、最寄りの市区町村の窓口でまとめて取れるようになりました。この記事を読めば、広域交付制度のメリットと手続きが分かり、遺産整理業務で余計なお金を支払う必要がなくなります。市区町村の窓口に行ける人であれば誰でもできる、簡単な手続きです。
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本が必要な理由
相続では、被相続人(亡くなった人)の相続人を漏れなく調査し、確定する必要があります。
もし遺産分割協議に参加していない相続人がいた場合、せっかく成立した遺産分割協議は無効となり、一からやり直さなければなりません。
通常、遺産分割協議で相続人が漏れることはあまりありません。
しかし、たとえば、過去に離婚歴があった場合、前夫・前妻との子も相続人になります。
前夫・前妻との子は直近の戸籍には現れず、前の戸籍を遡らないと分かりません。
後妻の連れ子と養子縁組していたような場合も同様です。
養子も相続人になりますが、養子縁組後、結婚などで被相続人の戸籍から離脱したような場合、前の戸籍を遡らないと分かりません。
このように、前の戸籍を遡ると、新たな相続人が出てくる可能性があります。
そのため、相続人を漏れなく確定するためには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本が必要になるわけです。
ちなみに、相続人の戸籍謄本については、出生まで遡る必要はありません。
相続人として存命していることが分かればいいので、現在の戸籍謄本があれば大丈夫です。
広域交付制度の新設とメリット
これまでは、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を集めるのがとても大変でした。
本籍地から戸籍謄本を取得する必要がありますので、本籍地が何度も変わっていると、過去の全ての本籍地に一つ一つ戸籍謄本を請求しなければなりませんでした。
全ての戸籍を集めるのに手間と時間と費用がかかるだけでなく、相続人本人が集めると、必要な戸籍謄本に漏れが生じる可能性もありました。
そのため、最初から自分で相続手続きをすることを諦め、相続の専門家や銀行に遺産整理業務を依頼し、結構な手数料を支払う相続人が多くいました。
しかし、最近、相続における戸籍謄本集めの悩みを根本的に解消する新しい制度ができました。
その新しい制度は「広域交付制度」といい、最寄りの市区町村の窓口で、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(戸籍証明)を取得できるようになりました。
広域交付制度の新設により、自分で戸籍を読み解き、前の戸籍を芋づる式に遡る必要はなくなりました。
集めた戸籍謄本を使って法定相続情報一覧図を作ってしまえば、相続手続きが格段に楽になりますので、預金の解約や株式の売却などの遺産整理業務であれば、すべて自分でできるはずです。
時間をお金で買いたい人以外、相続の専門家や銀行に遺産整理業務を依頼し、結構な手数料を支払う必要はなくなったといえます。
広域交付制度の手続きと必要書類
広域交付制度の手続きと必要書類は、以下のとおりです。
市区町村の窓口に行ける人であれば誰でもできる、簡単な手続きです。
手続きをする場所
最寄りの市区町村の窓口
※お住まいや勤務先のなど、どこの市区町村でも手続きが可能です。
戸籍謄本を請求できる人
本人、配偶者、直系尊属(父母、祖父母など)、直系卑属(子、孫など)
請求できる戸籍謄本
本籍地に関係なく、本人、配偶者、直系尊属(父母、祖父母など)、直系卑属(子、孫など)の戸籍謄本をまとめて請求できます。
必要な書類
写真付きの本人確認書類(マイナンバーカード、パスポート、運転免許証、在留カードなど)
写真付き身分証明書を持っていない人は、広域交付制度で相続手続きを楽にするため、マイナンバーカードの作成をお勧めします。
広域交付制度の注意点
窓口で請求する必要がある
郵送での請求はできませんので、来庁し、窓口で請求する必要があります。
請求者本人が来庁する必要がある
代理人による請求できませんので、請求できる人が自分で窓口に行く必要があります。
逆に言えば、相続の専門家や銀行に遺産整理業務を依頼するよりも、自分でやった方が早いし楽だし余計なお金がかからないということです。
兄弟姉妹の戸籍謄本は請求できない
広域交付制度では、父母の戸籍から除籍した兄弟姉妹の戸籍謄本は請求できません。
従来のように、兄弟姉妹の本籍地に請求する必要があります。
なお、兄弟姉妹の戸籍謄本を取ろうとすると、戸籍事務の担当者から、兄弟姉妹の委任状を求められることがあります。しかし、相続で兄弟姉妹の戸籍謄本が必要な場合、兄弟姉妹の委任状は必要ありません。
戸籍事務の担当者が誤った案内することが多く、総務省から注意喚起の文書が出されていますので、それを戸籍事務の担当者に見せるようにしましょう。
電算化されていない戸籍(改製不適合戸籍)は対象外
戸籍の氏又は名の文字が誤字で記載されているなど、何らかの理由でコンピュータによる取扱いに適合しない戸籍があります。
このような戸籍を改製不適合戸籍といいます。
紙ないし画像データで保管されており、電算化されていないため、広域交付制度の対象外となります。
改製不適合戸籍がある場合は、別途本籍地から取得する必要があります。
戸籍の附票は対象外
戸籍の附票(住所の履歴が記載された書類)は広域交付制度の対象外となります。
戸籍の附票が必要な場合は、別途本籍地から取得する必要があります。
出張所では請求できない可能性がある
出張所では請求できず、本庁舎で請求しなければならない自治体がありますので、ホームページ等で確認しておく必要があります。
時間の余裕をもって窓口に行く
他市区町村の戸籍を調べますので、時間の余裕をもって窓口に行く必要があります。受付時間は自治体によって異なりますので、ホームページ等で確認しておくことをお勧めします。