保険証券なしでもOK!亡くなった人の生命保険を一括調査する「生命保険契約照会制度」とは?

「亡くなった父の通帳に保険の引落しがあるが、証券が見当たらない」
「生前、いくつか保険に入っていると聞いていたが、どこの会社か聞きそびれてしまった」

相続において、生命保険は「請求しなければ1円も支払われない」資産です。放置すると、本来受け取れるはずの数百万円〜数千万円を失うリスクがあります。しかし、実は、家の中を捜索しなくても、業界全体で保険契約の有無を一括調査できる制度が存在します。

この記事では、保険証券がない状態でも保険契約の有無を調査できる「生命保険契約照会制度」の利用法と、実務上見落としがちな「法的リスク」について解説します。

この記事のポイント
  • 一括照会が可能:生命保険協会の「生命保険契約照会制度」を利用すれば、加盟全41社の保険契約を一括調査できる。
  • 料金改定あり:2026年4月1日から利用料が倍増する予定のため、早めの申請が推奨される。
  • 共済は対象外:この制度で分かるのは民間生保のみ。JA共済や県民共済などの「共済」は対象外であり、別途調査が必須。
目次

保険証券がない場合の切り札「生命保険契約照会制度」とは?

制度の概要

かつては、手がかりがない場合、心当たりのある保険会社にしらみつぶしに電話をかけるしかありませんでした。 しかし現在は、一般社団法人生命保険協会が運営する「生命保険契約照会制度」を利用することで、効率的な調査が可能です。

この制度は、相続人が協会に依頼することで、加盟している全41社に対し、「故人名義の契約があるか」を一斉に照会できる仕組みです。

  • 調査対象:日本国内で営業する全生命保険会社(かんぽ生命、外資系生保を含む)
  • 利用料:1照会あたり3000円(税込) ※2026年3月末までの申請分
  • 期間:申請から約2週間程度

なぜ生命保険の調査が必要なのか?

「面倒だから調べなくていい」と放置するのは、法的なリスクがあります。 生命保険の調査は、以下の2点で極めて重要です。

  1. 権利の消滅時効:保険法第95条1項により、保険金請求権は3年間行使しないと消滅します。
  2. 相続税の申告義務:死亡保険金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。調査漏れで後から発覚すると、過少申告加算税などのペナルティを受けるリスクがあります。

具体的な手続きの流れと費用

手続きは「Web申請(オンライン)」と「郵送」の2通りありますが、24時間申請可能で手続きが早いWeb申請が推奨されます。

申請できる人

原則として、亡くなった方の法定相続人(配偶者、子、親など)、遺言執行者、またはその代理人に限られます。

手順と費用(料金改定に注意)

2026年4月から利用料が大幅に値上げされます。現在調査を検討されている場合は、3月中に申請を完了させることで費用を抑えられます。

項目内容
現在の利用料3000円 ※2026年3月31日申請分まで
改定後の利用料Web:6000円 / 書面:7000円 ※2026年4月1日以降
支払方法クレジットカード(Webのみ)、コンビニ払い
必要書類①照会者の本人確認書類(免許証、住民票等)
②法定相続人であることが確認できる書類(法定相続情報一覧図等)

具体的な手続きの流れ(ウェブ手続き)

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必要書類の準備と「黒塗り(マスキング)」

書類不備になる最大の原因は「書類の黒塗り忘れ」です。 協会は個人情報保護の観点から非常に厳格なルールを設けており、以下の情報は必ず付箋などで隠して撮影(またはスキャン)してください。

照会者の本人確認書類(どれが一つ)提出する際の注意事項
運転免許証、運転経歴証明書有効期限内のもの。
記載がなくても「裏面」の提出が必須
資格確認書(健康保険)「記号」「番号」「保険者番号」「QRコード」を黒塗り(マスキング)する。
マイナンバーカード表面のみ提出(裏面の個人番号は見せてはいけない)。
※臓器提供意思表示欄は黒塗り推奨。
住民票証明日から3か月以内のもの。
本籍を黒塗り(マスキング)する。
印鑑証明書証明日から3か月以内のもの。
法定相続人であることが確認できる書類(法定相続情報一覧図を推奨)提出する際の注意事項
法定相続情報一覧図本籍の黒塗りは不要。
照会対象者と照会者(法定相続人)の関係を示す戸籍等本籍・従前戸籍・新本籍等を黒塗り(マスキング)する。
※手間がかかるため、法定相続情報一覧図の作成・提出を推奨。
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マイページ作成と申請

  • 生命保険協会の公式サイトへアクセスし、メールアドレスを登録して「マイページ」を作成。
  • 申請フォームに故人の情報(氏名、生年月日、死亡日など)を入力。
  • STEP1で撮影した書類データをアップロードします。
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利用料の支払いと照会結果の受け取り

協会側で書類の不備確認(数日程度)が終わると、利用料金の支払案内メールが届きます。

  • 支払い:クレジットカード(Webのみ)、コンビニ払い
  • 照会結果:支払い完了から14営業日で、照会結果がマイページにアップロードされます。

なお、iPhoneのブラウザ(Safari)では、結果通知のPDFが表示されない場合がありますので、パソコンか別のブラウザアプリの利用が推奨されます。

よくある誤解と3つの落とし穴

落とし穴①:「共済」は対象外

生命保険協会に加盟しているのは「生命保険会社」であり、「共済」は対象外です。
以下の組織については、一括照会ではヒットしないため、通帳の引き落とし履歴などを頼りに個別に問い合わせる必要があります。

  • JA共済(農協)
  • こくみん共済 coop(全労済
  • 都道府県民共済
  • コープ共済

落とし穴②:結果は「契約の有無」のみ

この制度で判明するのは「どこの会社に契約があるか」までです。 「保険金額」「受取人」「契約内容」までは開示されません。「契約あり」と判明した保険会社に対して、相続人自身が改めて電話をし、個別に請求手続きを行う必要があります。

落とし穴③:相続放棄を検討している場合の行動

もし故人に多額の借金があり、「相続放棄」を検討している場合は注意が必要です。 調査すること自体は問題ありませんが、判明した保険について「解約返戻金」や「入院給付金」を受け取り、費消してしまうと、民法921条の「法定単純承認(相続することを認めた)」とみなされ、相続放棄ができなくなる可能性があります。

※死亡保険金は「受取人固有の財産」とされるため、受領しても相続放棄には影響しません。

調査漏れを防ぐチェックリスト

一括照会制度と併せて、以下の調査を行うことで、発見率は格段に上がります。

  • 通帳の全件チェック:過去3年分以上遡り、「ホケン」「キョウサイ」の引き落としがないか確認する。
  • 郵便物の確認:毎年10月~11月頃に届く「生命保険料控除証明書」は決定的な証拠になります。
  • 勤務先への確認:会社員の場合、給与天引きの「団体生命保険」や「財形貯蓄」がある可能性があります。
  • 借入先の確認:住宅ローンがある場合、「団体信用生命保険(団信)」の適用がないか銀行へ確認してください。

よくある質問(FAQ)

受取人が自分かどうか分からない状態でも照会できますか?

はい、可能です。

照会制度では「契約の有無」が分かります。その後の保険会社への問い合わせで、受取人が誰であるかを確認する流れになります。

調査の結果、保険契約が見つからなかった場合、利用料は返金されますか?

返金されません。

あくまでも「調査事務手数料」であり、成功報酬ではないためです。「契約がないことが確認できた(=請求漏れのリスクがなくなった)」という安心を得るための必要経費とお考えください。

亡くなる前(生前)に、家族がこっそり照会することはできますか?

原則としてできません。

この制度は、被相続人の死亡後に相続人が利用するものです。ただし、ご本人が認知症などで判断能力が低下しており、成年後見人が選任されている場合などは、成年後見人からの照会が可能です。

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