自筆証書遺言の加除訂正は、遺言者がその場所を指示し、変更した旨を付記して署名し、変更の場所に押印するという方式を守らなければ「効力を生じない」のが民法の原則です(判決当時は改正前民法968条2項、現在は民法968条3項)。本判例は、長男が抹消線と「訂正」の文字を書き入れ、遺言者本人は押印と新しい日付の自書のみを行ったという方式違背のある日付の訂正について、訂正の外形的事実と遺言者の意思に疑義が生じる余地がなく、方式の欠如を不問に付しても関係者間の公平を害する事情が見当たらない特殊な事情の下では、訂正は有効と判断しました。その結果、訂正後の遺言が最新の遺言となり、その間に作成されていた別の遺言は無効とされています。方式の原則を維持しつつ、限定された場面での救済の枠組みを示した事例判断です。
判例情報
- 裁判所:東京地方裁判所
- 判決日:平成19年7月12日
- 事件番号:平成17年(ワ)第18176号(本訴)・平成17年(ワ)第27302号(反訴)
- 関連条文:改正前民法968条2項(現行民法968条3項)
事案の概要
本件は、母親の自筆証書遺言の日付を、長男が抹消線と「訂正」の文字を書き入れ、母親(遺言者)は押印と新しい日付の自書のみを行うという方式違背の形で訂正したところ、母親の死後、その訂正の効力と、訂正後の遺言とその間に作成されていた別の遺言のどちらが優先するかが争われた事案です。
登場人物
- A(遺言者・被相続人):3兄弟の母。物件1〜5(物件1〜3はマンションの一室、物件4・5は貸店舗の敷地と建物)を所有していた。平成16年8月9日死亡。
- X(二男・原告・反訴被告):Aの近くに住み、家族でAの介護を担った。第一遺言を託され、後にAへ日付の訂正を依頼した。第一遺言ではAの自宅(物件2)を取得するものとされていた。
- Y1(長男・被告・反訴原告):第二遺言を預かった。日付訂正の場に同席し、自ら抹消線と「訂正」の文字を書き入れた。第二遺言では物件2以外のすべての物件を取得するものとされていた。
- Y2(三男・被告):日付訂正の場には同席していない。第一遺言では物件1を、第二遺言では物件2を取得するものとされていた。
時系列
- 平成14年7月:Aが3人の息子に、相続時に各自が取得する物件を記載した覚書を提出させる
- 平成14年8月25日:Aが第一遺言(物件1をY2、物件2をX、物件3〜5をY1に分け与える内容)を自筆で作成し、Xに託す
- 平成15年:Aに肺がんが判明し、以後入退院を繰り返す
- 平成15年11月18日:Aが第二遺言(物件2をY2、物件1・3〜5をY1に分け与え、Xには相続させない内容)を作成し、Y1が預かる
- その後:Y1がXに対し「母から遺言書を預かったが、自分が破っておいた」と告げる
- 平成15年12月1日ころ:XがAを訪ね、Y1同席の場で第一遺言の日付の変更を依頼。Y1が旧日付を線で抹消して「訂正」と記載し、Aが実印で押印のうえ新しい日付を自書(以下、訂正後の第一遺言を「第三遺言」)
- 平成16年8月9日:A死亡
- 平成16年10月:第二遺言の検認
- 平成16年12月:第三遺言の検認
- 平成17年5月:Y1が第二遺言に基づき、物件1・3〜5について相続を原因とする所有権移転登記等を経由
- 平成19年7月12日:東京地方裁判所が本判決
経緯
Aは3人の息子のうち二男Xおよびその家族と長く生活をともにし、晩年はXの住まいから徒歩10分ほどの自宅(物件2)で暮らしていました。介護はXの娘が中心となって担っています。平成14年7月、Aは3人の息子を集め、相続のときに誰がどの物件を取得するかを各自に覚書として書かせ、翌月の8月25日、その内容どおりの第一遺言を自筆で作成してXに託しました。
ところが平成15年、Aは肺がんと診断され、入退院を繰り返すようになります。同年11月18日付けで作成された第二遺言は、Xには一切相続させない内容で、手紙のような書き出しから、入院の際に預けた通帳や印鑑を返してもらえないといったX親子への不満や不信の言葉を具体的に書き連ね、従前の分配の約束を「廃棄する」と明言するものでした。この第二遺言は、Y1が預かることになりました。
その後Y1は、Xに対し「母から遺言書を預かったが、自分が破っておいた」と告げます。これを聞いたXは、念のため第一遺言の日付を現在の日付に改めておいた方がよいと考え、平成15年12月1日ころ、Aを訪ねて日付の変更を依頼しました。Y1も同席する場でAはこれに応じましたが、そのとき実際に手を動かしたのはY1で、第一遺言の「平成十四年八月二十五日」という日付に線を引いて抹消し、「訂正」と書き入れたうえ、Aにその部分への押印を指示しました。Aは実印で押印し、新しい日付を自書しています。民法が訂正の方式として求める変更場所の指示、変更した旨の付記、付記への署名は、いずれもされていません。
Aは平成16年8月9日に死亡し、第二遺言・第三遺言はそれぞれ家庭裁判所で検認(遺言書の存在と状態を確認・記録する手続で、遺言の有効・無効を判断するものではありません)を受けました。Y1は平成17年5月、第二遺言に基づいて物件1と物件3〜5の所有権移転登記等を済ませます。そこでXが、Y1の行為は相続欠格(民法891条3号・5号)に当たるとして相続権の不存在確認を求めるとともに、第二遺言の無効確認と移転登記の抹消を求めて本訴を提起し、Y1は、第二遺言による所有権取得を前提に、Aの死後も賃料の受領や鍵の保管といった形で各建物への関与を続けるXに対し、建物の明渡しや引渡し、賃料相当額の支払等を求めて反訴を提起しました。
なお、相続欠格の主張について裁判所は、Y1が訂正の方式を知りながらことさら適式な訂正をさせないように振る舞ったとまでは認められないなどとして、これを否定しています。本稿では、本判決の中心である訂正の効力の論点に絞って解説します。
争点
民法所定の方式を満たしていない自筆証書遺言の日付の訂正は、有効と認められるか。
X側の主張:Aのかねてからの確固たる意思は第一遺言の内容であり、日付の訂正は、それを最新の日付に改めるためのものである。AはY1から聞いたとおり第二遺言は破棄されて存在しないと認識しており、途中で一時的に作成された第二遺言を完全に否定し去る意思であったことは明白である。したがって、第二遺言は無効である。
Y側の主張:第二遺言には財産の分配を変更する理由が具体的に列挙されており、これこそがAの最終意思である。Y1が「破っておいた」と述べたのはXに対してのみで、Aが第二遺言は破棄されたと認識していたはずがない。そもそも訂正の場面では、AもY1も対象の書面が第一遺言であるとは認識しておらず、第三遺言はAの意思に基づくものではない。しかも第三遺言は要式性を欠くから、いずれにしても無効であり、第二遺言が有効に存続する。
裁判所の判断
判旨の要約
- 結論:本件の日付の訂正は有効に行われ、訂正後の第一遺言(第三遺言)が最新の遺言となった結果、第二遺言は無効となった。
- 理由:訂正の方式の要求は、事後に疑義が生じることを防ぎ、その効力を明確にするためのものであり、訂正の外形的事実と遺言者の意思に疑義が生じる余地がなく、方式の欠如を不問に付しても関係者間の公平を害する事情が見当たらない本件で、形式的な欠陥を理由に遺言者の真意に反して訂正の効果を否定することは、実質的正義に反するから。
判決文の引用
東京地裁は、改正前民法968条2項が訂正に厳格な方式を求めている趣旨について、次のように判示しました。
このような要式性の要求は、あくまでも遺言の訂正という重大な単独行為につき、事後に疑義が生じることを防ぎ、その効力を明確にするためのものであると解するのが相当である。そうすると、個別具体の事案において、遺言の訂正の外形的事実及びその遺言者の意思について疑義が生じる余地がなく、また、要式性の欠如を不問に付することにより関係者間の公平を害するような事情も見当たらない場合には、形式的に要式性の一部に欠陥があるからといって、遺言者の真意に反して遺言訂正の効果を認めないとすると、実質的正義に反する結果を招来することになりかねないから、このような解釈は相当ではないというべきである。
そのうえで、本件の具体的な事情を総合勘案し、次のとおり結論づけています。
以上によれば、本件第一遺言の日付の訂正は有効に行われ、その結果、最新の遺言として本件第三遺言が作成されたものと認めるのが相当であるから、本件第二遺言は、これにより無効となったものというほかない。
判例の考え方
本判決の論理は、次の3段階で整理できます。
第1に、訂正の方式を「目的のための手段」と位置づけたこと。自筆証書遺言の加除訂正について民法が厳格な方式を求めるのは、訂正という重大な単独行為(相手方の同意を要しない一方的な行為)について、後から「誰が、いつ、どのような意思で手を加えたのか」という疑義が生じることを防ぎ、その効力を明確にするためです。本判決は、方式の遵守それ自体を目的とは捉えず、疑義の防止という目的に仕える手段として整理しました。
第2に、例外が認められるための二つの条件。方式の目的がすでに達せられている場面、すなわち、訂正の外形的事実と遺言者の意思について疑義が生じる余地がなく、かつ、方式の欠如を不問に付しても関係者間の公平を害するような事情が見当たらない場合に、形式的な欠陥のみを理由に訂正の効果を否定することは「実質的正義に反する」と評価されます。裏を返せば、どちらか一方でも満たされなければ、方式に違反した訂正は効力を生じないという原則に戻ります。
第3に、遺言者の真意の重視。方式の原則を形式的に貫いた帰結が遺言者の真意と正面から衝突する場合に、実質的正義の観点から調整を図った判断です。もっとも、判決文が「個別具体の事案において」と断り、「本件特殊事情を総合勘案すれば」という形で結論を導いていることからも分かるとおり、これは方式の原則そのものを緩めたのではなく、本件限りの事情を積み上げた事例判断という性格の強いものです。
結論に至る処理
裁判所はまず、訂正の場面でAが何を認識していたかを認定しました。Y1は「書面は折り曲げられたまま示され、自分もAも第一遺言とは認識していなかった」という趣旨の主張をしましたが、遺言書の紙には折り目が一つもなかったことなどを指摘されて供述を変遷させており、その言い分は不自然きわまりないとして退けられています。また裁判所は、病身で気弱になっている高齢者は、その時々で、親切にしてくれた者への感謝が強まり、冷たくされたと感じれば憎しみが募ることも社会一般によく経験されるところであるとして、第二遺言で一度Xを外したAが、再び従前どおりの分配に戻ろうと考えることも不自然ではないと述べました。訂正から間もない時期のY1自身の日記に、3人で今後はXを後継ぎとすることを再確認したという趣旨の記載があったことも、この判断を裏付ける事情とされています。こうして裁判所は、AもY1も訂正の対象が第一遺言であることを十分認識しており、Aはそのことを理解したうえで実印を押し、新しい日付を自書したと認定しました。
そのうえで方式違背の点については、訂正が利害の対立するXとY1の同席する場で行われたこと、その場にいなかったY2もAが自らの意思で日付を訂正したこと自体は争っていないこと、Aがあえて効力を生じさせないために意図的に方式を外したとは認められないこと、方式の欠如が変更場所の指示、変更した旨の付記とこれへの署名の欠如にとどまり、変更自体は自書により適正に行われていること、Y1が訂正に加担し、しかも第二遺言を破棄したという虚偽の事実をXに伝えていたこと、といった本件の特殊事情を総合勘案し、方式の一部欠如を不問に付しても関係者間の公平を害する事情は見当たらず、むしろ訂正の効果を認めないことこそ実質的正義に反する事案だと評価しました。
その結果、日付の訂正は有効とされ、訂正後の第一遺言(第三遺言)が日付のうえでも最新の遺言となり、内容の異なる第二遺言は無効と判断されました。各物件の帰属は第三遺言の内容どおり(物件1はY2、物件2はX、物件3〜5はY1)に確定し、Xが求めた移転登記の抹消は、X自身がこれらの物件の所有権を持たない以上認められないとされた一方、Y1の反訴のうち、Y1が取得した物件3の明渡しと賃料相当額の支払、物件5の引渡しと賃料相当額の支払を求める部分が認められています。
判例の射程
本判例の射程について、判決文の表現に即して整理します。
地方裁判所による事例判断であること
本判決は東京地方裁判所の判決であり、最高裁判例ではありません。しかも判決文自身が「個別具体の事案において」と断ったうえで、「本件特殊事情を総合勘案すれば」として結論を導いています。方式に違反した訂正を広く有効とする一般的な準則を示したものとは読めず、本件限りの事情を前提とした事例判断と位置づけるのが、判決文の表現に忠実な理解です。なお、記録上、本判決に対しては控訴がされています。
「疑義が生じる余地がなく」「事情も見当たらない」という厳格な絞り
例外が働くのは、遺言の訂正の外形的事実およびその遺言者の意思について「疑義が生じる余地がなく」、かつ、要式性の欠如を不問に付することにより関係者間の公平を害するような「事情も見当たらない」場合に限られます。「疑義が生じる余地がない」という言い回しは、少しでも疑義の余地が残れば例外は働かないことを意味する厳格な表現です。
本件で勘案された特殊事情が前提となっていること
本判決の結論は、訂正が利害の対立する相続人の同席する場で行われたこと、同席しなかった相続人も訂正の事実自体は争っていないこと、欠けていた方式が変更場所の指示・付記・署名にとどまり、変更自体は遺言者の自書により適正に行われていたこと、訂正に関与した相続人が虚偽の事実を伝えるなどしていたこと、といった具体的事情の総合勘案によるものです。たとえば訂正の場に誰も立ち会っていない事案や、訂正部分の筆跡そのものに争いがある事案など、事情を異にする場面に本判決の結論が当然に及ぶものではありません。
遺言の「訂正」の方式に関する判断であること
本判決が扱ったのは、遺言の加除訂正の方式(改正前民法968条2項。現在の民法968条3項)です。遺言の作成自体の方式(全文・日付・氏名の自書と押印。民法968条1項)を緩和する趣旨は、判決文からは読み取れません。また、実際に判断の対象となったのは日付の訂正であり、遺言の内容にかかわる訂正についてまで同じ判断が及ぶかどうかは、本判決からは確定的には読み取れません。
実務での使い方
本判例は、自筆証書遺言の訂正に方式上の不備が見つかった場面で、訂正の効力を主張する側・争う側の双方が検討の出発点とする裁判例です。争族案件における典型的な使いどころを整理します。
使える場面
遺言の訂正の不備が表面化するのは、多くの場合、遺言者の死後です。検認や遺産分割の協議の場で、抹消線や書き直しの跡のある遺言書が出てきて、「この訂正は誰が、いつ、どのようにしたのか」「方式どおりでない訂正に効力はあるのか」が問題になります。
実務の出発点は条文の原則です。訂正の方式(現行民法968条3項)を満たさない加除その他の変更は「効力を生じない」のが明文の定めですから、まず方式充足の有無を確認し、不備がある場合に、本判例の枠組みに沿って例外的な救済の余地を検討する、というのが現実の検討順序になります。とりわけ本件のように、内容の異なる複数の遺言が存在し、訂正の効力次第で「どの遺言が最後のものになるか」が入れ替わる事案では、本判例の判断枠組みがそのまま主戦場になります。
訂正の有効を主張する側
第1に、本判決の二つの条件に対応する事実を具体的に主張立証します。訂正の外形的事実と遺言者の意思に疑義の余地がないことについては、訂正の場に誰が同席していたか、訂正部分が遺言者の自書か、押印にどの印鑑が使われたか(本件では実印でした)、訂正の前後における遺言者の言動を押さえます。関係者間の公平を害する事情がないことについては、利害の対立する関係者が訂正の場に立ち会っていた、誰にとっても不意打ちにならない状況だった、といった事情を拾い上げます。
第2に、本判決が地方裁判所の事例判断であることを踏まえ、自分の事案と本件との類似性を丁寧に主張します。とりわけ「変更自体は自書により適正に行われている」という点は本判決が明示的に重視した事情ですから、訂正部分の自書性は、筆跡に関する立証も含めて固めておきたいところです。
第3に、訂正が有効とされた場合の帰結まで含めて主張を組み立てます。本件では、訂正により遺言の日付が改まった結果、訂正後の遺言が最新の遺言となり、内容の抵触する別の遺言が効力を失うという形で決着しています。
訂正の無効を主張する側
第1に、明文の原則を前面に出します。方式を欠く訂正は「効力を生じない」というのが条文の文言であり、例外的な救済を求める側にこそ、その基礎となる事情の主張立証を尽くさせるべきだという位置づけを明確にします。
第2に、本件との事案の違いを具体的に指摘します。訂正の場に利害関係人が同席していない、訂正部分が遺言者以外の筆跡である、訂正の経緯に不自然な点がある、遺言者の健康状態や周囲の働きかけなど意思に疑義を生じさせる事情がある、といった違いが一つでもあれば、「疑義が生じる余地がない」とはいえないと論じる余地が生まれます。
第3に、本判決があくまで地方裁判所による特殊事情の総合勘案の例にとどまることを指摘し、安易な一般化に歯止めをかけます。
立証上のポイント
本件で裁判所の心証を分けたのは、書面そのものの物理的状態と、関係者の言動の積み重ねでした。Y1は「書面は折り曲げられたまま示された」と供述しましたが、遺言書の紙に折り目が一つもなかったことから供述の変遷を指摘され、信用性を失っています。また、Y1自身の日記の記載が、かえって遺言者Aの意思を裏付ける証拠として用いられました。
遺言書原本の物理的状態、訂正部分の筆跡、押印に使われた印鑑の種別、同席者の証言、関係者の日記や手帳といった同時代の記録。訂正を巡る紛争では、こうした証拠を総合して「訂正の場で何があったか」をどこまで具体的に再現できるかが勝負になります。供述の変遷は信用性を大きく損ないますから、相手方の説明が客観的な証拠と食い違っていないかを早い段階から点検しておくことも大切です。
併せて検討すべき周辺論点
第1に、複数の遺言の優劣です。前の遺言が後の遺言と抵触するときは、抵触する部分について前の遺言を撤回したものとみなされます(民法1023条1項)。本件は、日付の訂正の効力によって「どちらが後の遺言か」が入れ替わるという形で、この規律と訂正の効力の問題が結びついた事案でした。
第2に、相続欠格です。本件では、Y1が訂正に関与した行為が相続欠格事由(民法891条3号・5号)に当たるかどうかも争われ、裁判所はこれを否定しています。遺言の訂正や破棄への関与が問題となる事案では、訂正の効力の問題と欠格の成否の問題は、別個に検討する必要があります。
第3に、現在の制度を踏まえた予防です。本判決の後、平成30年の民法(相続法)改正により、財産目録については自書が不要となりましたが(民法968条2項。目録の毎葉への署名押印は必要です)、加除訂正の方式(同条3項)は従前と同じ内容で維持されています。訂正の方式不備は今も紛争の火種になり得ますから、実務では、訂正で済ませずに遺言書全体を書き直す、公正証書遺言を利用する、令和2年に始まった法務局の自筆証書遺言書保管制度(保管時に方式面の外形的な確認を受けられ、検認も不要になります。ただし遺言の内容の有効性まで保証するものではありません)を利用する、といった予防策が現実的です。

