遺産共有持分は共有物分割訴訟で処理できるか──賠償金は遺産分割まで保管義務あり|最判平成25年11月29日
本判決は、被相続人の遺産である共有持分と他の共有者の持分が併存する不動産の共有関係を解消する裁判上の手続は、民法258条に基づく共有物分割訴訟であることを明らかにしました。そのうえで、全面的価格賠償(共有物を特定の共有者に取得させ、その者に他の共有者へ持分の価格を金銭で賠償させる方法)を採用した場合に相続人グループに支払われる賠償金は、遺産分割によりその帰属が確定されるべきものであるから、相続人は受領した賠償金を遺産分割までの間保管する義務を負うとし、裁判所は判決において各相続人の保管すべき賠償金の範囲を定めたうえで支払を命じることができることを判示しました。共有物分割と遺産分割が交錯する場面における処理の道筋を示した重要判例です。
判例情報
- 裁判所:最高裁判所第二小法廷
- 判決日:平成25年11月29日
- 事件番号:平成22年(受)第2355号
- 関連条文:民法258条、906条、907条
事案の概要
被相続人の共有持分が遺産共有状態にある土地について、他の共有者である同族会社およびその関係者(被相続人の配偶者・子の一部)が、被相続人の共同相続人らに対し、全面的価格賠償の方法による共有物分割を求めた事案です。
登場人物
- A:被相続人。X2の妻
- X1:本件土地の共有者である合資会社(持分72分の30)。X3が代表者を務める
- X2:Aの夫。本件土地の共有者(持分72分の39)。Aの相続人
- X3:Aの長男。X1会社の代表者。Aの相続人
- Y1:Aの長女。Aの相続人
- Y2:Aの二男。Aの相続人
A名義の本件土地持分72分の3は、A死亡により、X2(法定相続分2分の1)、X3・Y1・Y2(各法定相続分6分の1)の4名による遺産共有状態にあります。
時系列
- 昭和25年4月:X2とAが婚姻
- 昭和62年2月:X2が本件土地を購入
- 平成2年11月8日:X2からAへ本件土地の持分72分の3を贈与(相続税対策)
- 平成18年9月:A死亡。Aの持分72分の3が遺産共有状態に
- 平成20年:X側が共有物分割を求めて本件訴え提起
- 平成21年8月28日:第一審判決(競売による分割を命ずる)
- 平成22年8月31日:原審判決(全面的価格賠償の方法による分割を採用)
- 平成25年11月29日:本判決
経緯
本件土地は、A死亡前の時点でX1会社、X2、Aの3名による物権共有(遺産共有ではない通常の共有)の状態にありました。地積は約240平方メートルで、土地上にはX1会社およびX2所有の建物が存在しています。
A死亡により、Aが有していた持分72分の3は、X2、X3、Y1、Y2の4名による遺産共有となりました。Aの持分相当面積は約10平方メートルにすぎず、本件土地を現物で分割することは事実上不可能な状況です。
X側は、本件土地上に住居兼マンションを新築する計画を立て、Aの遺産持分をX1会社が取得し、X1会社が共同相続人ら4名に対し持分価格の賠償として466万4660円を支払う全面的価格賠償の方法による分割を希望しました。X1会社にはその支払能力がありました。
これに対しY側は、本件土地のX2名義の持分72分の39のうち2分の1相当も実質的にはAの遺産であると主張するなどして争い、分割協議が調わなかったため、X側が本件訴えを提起したものです。
第一審は、全面的価格賠償の方法によると賠償金が各相続人に確定的に支払われてしまい遺産分割の対象として確保されないことを理由に、競売による分割を命じました。これに対し原審は、全面的価格賠償が採用されても賠償金は共同相続人らの共有とされ、その後に遺産分割に供されるから、共同相続人の遺産分割に関する利益は保護されるとして、X側の希望どおり全面的価格賠償の方法による分割を採用しました。Y側がこれを不服として上告したのが本件です。
争点
争点1:遺産共有持分と他の共有持分が併存する不動産について、共有関係解消の裁判上の手続は何によるべきか
争点の本質は、混在状態(遺産共有と物権共有の併存)の解消手続が、共有物分割訴訟(民法258条)によるのか、それとも遺産分割(民法907条)によるのかという点にあります。
X側(被上告人)は、共有物分割訴訟によって解消すべきであり、相続人グループに分与された財産は事後的に遺産分割の対象とすればよいと主張しました。Y側(上告人)も、共有物分割訴訟による解消自体は認めつつ、その分割方法として全面的価格賠償を採用すると賠償金が確定的に各相続人に支払われてしまい、遺産分割の対象として確保できなくなるから、本件で全面的価格賠償を用いることは許されないと主張しました。
争点2:全面的価格賠償の方法で支払われる賠償金の性質と、これを受領した相続人の義務はどうなるか
争点の本質は、共有物分割の判決により相続人グループに支払われる賠償金が、各相続人に確定的に帰属する金銭(自由に処分できる金銭)なのか、それとも遺産分割の対象として保管すべき金銭なのかという点にあります。
Y側は、賠償金は確定的に各相続人に支払われてしまい、遺産分割の対象として確保されなくなると主張しました。X側は、賠償金は共同相続人らの共有として、その後の遺産分割に供されるから、共同相続人の遺産分割上の利益は害されないと主張しました。
争点3:裁判所は判決において、賠償金の支払等についてどのような事項を命じうるか
争点の本質は、各相続人が機先を制して賠償金全額を受領し費消する事態を防ぐため、裁判所が判決中で賠償金の保管範囲を定めて支払を命じることができるか否かという点にあります。これは原審判決の主文の在り方(共同相続人ら4名に466万4660円を支払えと命ずるのみで、保管義務に触れない記載)が、裁量権の範囲内であるかという形でも問題となりました。
裁判所の判断
判旨の要約
最高裁は、混在ケースの共有関係解消は民法258条に基づく共有物分割訴訟によるべきこと、共有物分割の判決により相続人グループに分与された財産は遺産分割の対象となること、全面的価格賠償の場合に相続人グループに支払われる賠償金は遺産分割までの間保管する義務を負うこと、裁判所は判決中で各相続人の保管すべき賠償金の範囲を定めて支払を命じうることを判示し、原審の判断を是認して上告を棄却しました。共有物分割訴訟は本質において非訟事件であり、裁判所の適切な裁量権行使により、共有者間の公平を保ちつつ妥当な分割を実現することが期されているという点が、判断の中核にあります。
判決文の引用
混在ケースの共有関係解消手続について、最高裁は次のように判示しました。
共有物について、遺産分割前の遺産共有の状態にある共有持分(以下「遺産共有持分」といい、これを有する者を「遺産共有持分権者」という。)と他の共有持分とが併存する場合、共有者(遺産共有持分権者を含む。)が遺産共有持分と他の共有持分との間の共有関係の解消を求める方法として裁判上採るべき手続は民法258条に基づく共有物分割訴訟であり、共有物分割の判決によって遺産共有持分権者に分与された財産は遺産分割の対象となり、この財産の共有関係の解消については同法907条に基づく遺産分割によるべきものと解するのが相当である
そのうえで、賠償金の性質および相続人の保管義務について、次のように判示しました。
遺産共有持分と他の共有持分とが併存する共有物について、遺産共有持分を他の共有持分を有する者に取得させ、その者に遺産共有持分の価格を賠償させる方法による分割の判決がされた場合には、遺産共有持分権者に支払われる賠償金は、遺産分割によりその帰属が確定されるべきものであるから、賠償金の支払を受けた遺産共有持分権者は、これをその時点で確定的に取得するものではなく、遺産分割がされるまでの間これを保管する義務を負うというべきである
さらに、裁判所が判決中で命じうる事項について、次のように判示しました。
裁判所は、遺産共有持分を他の共有持分を有する者に取得させ、その者に遺産共有持分の価格を賠償させてその賠償金を遺産分割の対象とする価格賠償の方法による分割の判決をする場合には、その判決において、各遺産共有持分権者において遺産分割がされるまで保管すべき賠償金の範囲を定めた上で、遺産共有持分を取得する者に対し、各遺産共有持分権者にその保管すべき範囲に応じた額の賠償金を支払うことを命ずることができるものと解するのが相当である
判例の考え方
本判決の論理は、混在ケースの「分割手続の振分け」「賠償金の性質決定」「裁判所の裁量権の現れ方」という3つの段階で整理できます。
第1段階は、分割手続の振分けです。共同相続人だけで構成される遺産共有関係の解消は遺産分割によるべきで共有物分割訴訟は使えない、というのは判例上確立した考え方です。一方、本件のように物権共有持分と遺産共有持分が併存する混在ケースについては、共有物分割訴訟による解消が認められます。ただし、共有物分割で相続人グループに分与された財産は、相続人間で再度遺産分割を行うべき対象として残るという考え方を採ります。これにより、共同相続人が本来享受すべき遺産分割上の利益(具体的相続分による分割を受けられる利益等)が、後の遺産分割で確保されることになります。
第2段階は、賠償金の性質決定です。全面的価格賠償の方法では、相続人グループには金銭が支払われます。形式的に見れば、共有物分割の判決で形成された賠償金請求権は債権ですから、相続人各自の法定相続分に応じて当然に分割帰属するという発想もあり得ます。しかし本判決は、この賠償金は遺産共有持分が金銭に転化したものと捉え、遺産共有としての性質を維持していると整理しました。だから相続人は、これを確定的に取得するのではなく、遺産分割がされるまでの間保管する義務を負います。先に支払を受けた相続人がこれを費消してしまうと、他の相続人の相続分が侵害されるおそれがあるためです。
第3段階は、裁判所の裁量権の現れ方です。共有物分割訴訟は本質において非訟事件であり、裁判所には共有者間の公平を保ち妥当な分割を実現するための広い裁量権があります。本判決は、賠償金の給付を命じるにあたり、各相続人が遺産分割までの間保管すべき範囲を判決中で定め、その範囲に応じた額の支払を持分取得者に命じることを、形成の裁判の一環としての裁量権行使として認めました。これにより、機先を制した相続人が一括して受領して費消するという事態を防ぐ仕組みが整えられたことになります。
結論に至る処理
原審は、被上告会社にA共同相続人ら4名に対し466万4660円を支払うよう命ずる主文(連帯・各自といった文言なし)を出していました。これは、法定相続分とは異なる均等割(各人4分の1ずつ)の支払を命じたものと解するほかありません。
最高裁は、原審判決について以下の点を問題視しています。第1に、各相続人が賠償金を確定的に取得するものではなく、遺産分割までの間保管する義務を負うことを判決中に明記していない点。第2に、Aの共同相続人らの法定相続分とは異なる均等割を採用した根拠を説示していない点です。
しかしながら最高裁は、共同相続人間の関係や紛争の実情等に鑑みれば、対立する当事者双方に単純に平等の割合で賠償金の保管をさせるのが相当であるとの考慮に基づき、その趣旨で被上告会社に均等割の支払を命じたものと解する余地もあるとして、原審の判断に裁量逸脱の違法があるとまではいえないと結論づけ、上告を棄却しました。原審を是認しつつも、判決書の在り方としては保管義務の明記と割付け根拠の説示が望ましいことを暗に示した判断と読めます。
判例の射程
本判例の射程について、判決文の表現に即して整理します。
「遺産共有持分と他の共有持分が併存する場合」に限定された射程
本判決は、混在ケースを前提とした判断です。「遺産共有持分と他の共有持分とが併存する場合」という冒頭の限定が、判示全体にかかっています。1個の不動産の全体が遺産共有である場合(混在ケースではない場合)については、本判決の射程外です。その場合の解消手続は遺産分割のみによるというのが、判例上確立した別のルールです。
全面的価格賠償の方法による分割の場合の判示
賠償金の保管義務および裁判所の命じうる事項に関する判示は、いずれも「価格賠償の方法による分割の判決がされた場合」を前提としています。現物分割が採用された場合の取扱いは、本判決から直接の結論は導けません。もっとも、共有物分割の判決によって相続人グループに分与された財産が遺産分割の対象となる、という冒頭の判示は、現物・金銭を問わず混在ケース全般に及びます。
「保管範囲を定めた上で支払を命ずることができる」という裁量の枠組み
本判決は、裁判所が判決中で保管範囲を定めて支払を命じることが「できる」と判示したものであり、これを必ず行わなければならないとまではしていません。原審判決のように保管義務の明記を欠く主文であっても、紛争の実情等に照らして裁量逸脱とまではいえないとされた点に、本判決の許容限界が現れています。
もっとも、判決文の論理は、各相続人の保管範囲を明確に定めることを基本形として想定しており、また、保管範囲の割付けについては、特段の事情がない限り各相続人の法定相続分と等しい割合とするのが整合的に読めます。原審が均等割を採用した点は、対立構造の下での実質的公平への考慮として例外的に許容された処理であり、本判決が均等割を一般的に望ましいと示したものではありません。
関連判例
本判決が判示の根拠として明示的に引用した先例は、次のとおりです。
- 最判昭和50年11月7日(民集29巻10号1525頁):遺産を構成する特定不動産について、共同相続人の一部が自らの遺産共有持分を第三者に譲渡した結果、その共有持分が遺産から逸出した場合、当該第三者と他の共同相続人との間の共有関係解消の裁判上の手続は共有物分割訴訟であり、共有物分割の判決によって共同相続人に分与された部分は遺産分割の対象となる、とした判例。本判決は、この判旨が、混在ケース一般(混在に至った経緯や、共有物分割を求める者が遺産共有持分・物権共有持分のいずれを有するかを問わず)に妥当することを明らかにしました。
実務での使い方
本判例は、被相続人の遺産分割が未了の段階で、被相続人の共有持分と他の共有者の持分が併存する不動産の共有関係を解消する場面で、中心判例として引用します。争族案件における典型的な使いどころを整理します。
使える場面
典型的な場面は、被相続人が同族会社や配偶者と共有していた事業用不動産・自宅敷地について、共同相続人間で遺産分割協議が調わない一方で、他の共有者(同族会社・配偶者等)が現状の共有関係の解消を希望する場面です。本件のように、相続人の一部と他の共有者が利害を共通にし、別の相続人と対立する構図(同族会社代表と一部相続人 vs 他の相続人)が、争族案件では頻繁に現れます。
不動産活用の必要性(マンション新築計画等)や、被相続人持分の僅少性(現物分割不可能)から、全面的価格賠償による解決を目指すケースで、本判例が論拠の中心になります。
共有物分割を求める側(他の共有者・取得希望者側)
共有物分割を求める側、特に全面的価格賠償により被相続人の遺産持分を取得したい側にとって、本判例は次の論点を整理する基盤となります。
第1に、共有物分割訴訟による解消が手続的に認められることを本判例が明示しています。共同相続人の一部が「遺産分割が先決である」「共有物分割訴訟は不適法である」と主張してきた場合の反論の支柱になります。
第2に、全面的価格賠償の要件(共有物の性質・形状、共有関係の発生原因、共有者の数および持分の割合、共有物の利用状況、分割された場合の経済的価値、分割方法に関する共有者の希望の合理性、取得希望者の支払能力等の総合考慮)を充足することを、具体的事実で立証する必要があります。本件では、土地上に取得希望者側の建物が存すること、遺産持分相当面積が10平方メートル程度と僅少であること、贈与の経緯(相続税対策)、現物分割の不可能性、評価額の合理性、支払能力などが認定されています。
第3に、相続人側から「賠償金が確定的に支払われてしまい遺産分割上の権利が害される」との反論が出される場面では、本判例の判示する保管義務の枠組み(賠償金は遺産共有として保管され、遺産分割の対象になる)を引いて反論することができます。
遺産共有持分側(共同相続人側)
共同相続人側にとっては、本判例は次の二つの場面で機能します。
第1に、全面的価格賠償の方法に異議がある場面では、競売(換価分割)による解決の方が遺産分割上の利益確保に資することを、本件第一審判決の論理を踏まえて主張する余地があります。ただし、本判例の枠組みの下では、全面的価格賠償が採用されても賠償金は遺産分割の対象として確保されるため、この主張は採用されにくくなったといえます。
第2に、全面的価格賠償が採用された場合の賠償金受領者として、保管義務を尽くす必要があります。受領した賠償金は自身の固有財産と明確に分別し、専用の預金口座に入れるなどの方法で保管することが求められます。他の相続人による費消・流用が懸念される場合は、判決文上の保管範囲の明記を裁判所に求めるとともに、必要に応じて家事事件手続法105条1項の審判前の保全処分(財産管理人選任)を申し立てることも選択肢になります。
なお、保管範囲の割付けについては、判決文の論理上、各相続人の法定相続分と等しい割合とするのが基本形と考えられます。本件のように対立構造を反映した均等割が採用される余地はありますが、これは個別事情を踏まえた例外的処理と理解しておく方が安全です。
立証上のポイント
全面的価格賠償が認められるための要件事実を、判例(最判平成8年10月31日)が示す総合考慮の枠組みに沿って網羅的に主張・立証する必要があります。本件で原審・最高裁が認定したのは、土地上の建物の所有名義、遺産持分相当面積の僅少性、現物分割の不可能性、不動産鑑定による評価額の合理性、取得希望者の支払能力、共有者間の利害状況等です。
不動産鑑定については、取引事例比較法と収益還元法を組み合わせた評価が一般的に説得力を持ちます。本件では、対立側が路線価ベースの異なる評価を主張しましたが、土地の特性に照らして採用されませんでした。
併せて検討すべき周辺論点
令和3年改正民法258条の2との関係
本判決の判示は、令和3年改正で新設された民法258条の2第1項として明文化されました。改正後は、共有物の全部または持分が相続財産に属し、共同相続人間で遺産分割をすべきとき、当該共有物または持分について共有物分割をすることはできない、というルールが条文に書き込まれています。
他方、同条第2項は例外として、相続開始から10年経過後の混在ケースで、被告とされた相続人から異議が出されない場合に、共有物分割訴訟の中で遺産共有部分も解消できることを認めました。例外発動には、(1)混在ケースであること、(2)相続開始から10年経過後の提訴であること、(3)被告(共有者)が訴状送達から2か月以内に異議を出さないこと、の3要件をすべて満たす必要があります。例外発動時には、相続人グループ内の分割について具体的相続分(特別受益・寄与分の加算減額後の割合)は使われず、法定相続分または指定相続分が用いられます(民法898条2項)。
したがって、相続開始から10年経過前の事案、または異議が出された事案では、本判決の枠組み(共有物分割で混在を解消し、相続人グループ取得部分は遺産分割の対象とする・賠償金は保管義務を負う)がそのまま機能します。10年経過後の事案で、共同相続人として具体的相続分による分割を確保したい場合には、別途遺産分割の調停または審判を申し立てたうえで異議を出すという対応が必要です。
保管義務の具体的履行方法
賠償金を受領した相続人は、自身の固有財産と分別して保管することが望ましいといえます。専用の預金口座を開設して保管する方法が現実的です。家事事件手続法105条1項に基づく審判前の保全処分として財産管理人が選任された場合は、財産管理人が遺産の一つとして賠償金を保管することも考えられます。
数次相続が起きた場合の起算点
混在ケースで遺産分割が長期未了となり、相続人の一部にさらに相続(数次相続)が生じた場合、令和3年改正民法258条の2第2項の「相続開始から10年」の起算点をどう捉えるかが問題となります。各相続ごとに10年経過の有無を判定するのが自然な解釈と考えられますが、改正後の判例の蓄積を待つ必要がある領域です。
全面的価格賠償が認められない場合の処理
全面的価格賠償の要件を満たさない場合、共有物分割は競売による換価分割によることになります。換価分割の場合も、相続人グループに交付される売得金は遺産分割の対象として保管義務の対象となり、本判決の枠組みが基本的に妥当します。

