遺留分請求を無視されたら?「年3%」の利息で相手を追い詰める交渉術
「内容証明郵便を送ったのに返事が来ない」
「『検討中』と言われたまま数か月放置されている」
遺留分(遺留分侵害額)を請求した際、相手方のこのような引き伸ばし戦術に疲弊していませんか?
実は、相手が無視を決め込んでいる間、あなたには「年3%」の遅延損害金(利息)を上乗せして請求する権利が発生している可能性があります。
単なる「お願い」ではなく、法的な「ペナルティ」が日々加算されている事実を突きつけることは、膠着した交渉を動かす強力な武器になります。今回は、この「遅延損害金」を使って相手を追い詰め、支払いを加速させる交渉術を解説します。
なぜ「無視」が相手にとって致命傷になるのか
遺留分の支払義務は「借金」と同じ
かつての法律では、遺留分を行使すると不動産などの「モノ」自体を取り戻すのが原則でした。しかし、平成30年の民法改正により、現在の遺留分侵害額請求権は「金銭債権」へと一本化されました。
これは非常に重要な変化です。相手方にとって、あなたへの遺留分の支払いは、法的に「金銭債務(借金)」と同じ扱いになったのです。借金である以上、期限までに支払わなければ、当然のようにペナルティとして遅延損害金が発生します。
「年3%」のペナルティは無視できない金額になる
現在、この遅延損害金の利率は、民法改正により年3%(変動制)となっています。
「たった3%?」と侮ってはいけません。遺留分の請求額は数百万〜数千万円単位になることが多く、そのインパクトは強烈です。
【請求額が1000万円の場合の遅延損害金】
- 1年間放置した場合:30万円
- 1か月あたり:約2万5000円
相手が「半年待ってくれ」と言ってのらりくらりしている間に、支払義務は15万円も増えている計算になります。この事実を具体的な数字で示すだけで、相手へのプレッシャーは劇的に変わります。
ただ「請求」するだけでは利息はつかない!
ここが多くの人が陥る落とし穴です。「遺留分を請求します」という内容証明を送っただけでは、まだこの「年3%」のカウントは始まっていません。法的な手順を正しく踏む必要があります。
利息発生のスイッチは「金額の明示」
法律上、遺留分を行使して発生した金銭債務は「期限の定めのない債務」と呼ばれます。
この場合、相手方が遅延の責任(履行遅滞)を負うのは、「具体的な金額を示して、その履行を請求した時」からです。
つまり、以下の2ステップが必要です。
- 権利行使の通知:「遺留分侵害額請求権を行使する」と伝える(これは時効を止めるため)。
- 履行の請求:遺産の計算を終え、「私の遺留分は〇〇万円なので、支払ってください」と具体的な金額を請求する。
この「金額を示した請求」を行った翌日から、初めて遅延損害金が発生し始めます。まだ金額を伝えていない方は、急いで計算書を作成し、金額を明示した請求書を送付する必要があります。
「年3%」を武器にした具体的な交渉術
「裁判が長引けば損をする」と認識させる
相手が支払いを渋っている場合、交渉のテーブルで次のように伝えてみてください。
「すでに金額を明示して請求していますので、法的には年3%の遅延損害金が発生し続けています。もしこのまま裁判になり解決まで2年かかれば、元本に加えて6%分(1,000万円なら60万円)を上乗せして請求することになりますが、それでもよろしいですか?」
特に弁護士をつけて請求している場合、このリスクは無視できません。裁判所も判決を出す際、請求日の翌日からの遅延損害金の支払いを命じるのが通例です。
「今払うなら利息はまける」というカードを切る
すでに金額請求から長期間が経過している場合、溜まった遅延損害金は強力な「譲歩カード」になります。
「本来なら元本+遅延損害金50万円の支払い義務がありますが、今月末までに一括で支払ってくれるなら、今回は遅延損害金を免除して元本だけで和解します」
このように提案すれば、相手にとっても「50万円得するなら今払おう」という動機づけになり、早期解決の決定打になり得ます。
注意点:裁判所が「待った」をかけるケース(期限の許与)
一点だけ注意が必要なのは、相手が裁判で「すぐには現金が用意できない」と訴え、裁判所がそれを認めて「支払いに期限(猶予)を与える」判決(期限の許与)を出した場合です。
もし裁判所が期限を許与した場合、その期限までは遅延損害金が発生しません。
しかし、これはあくまで「裁判所が判決で認めた場合」の例外的な措置です。単に相手が「検討中」と個人的に言い訳をしている段階では、遅延損害金の発生は止まりません。
まとめ:遺留分請求を無視させないために
遺留分請求において、時間はあなたの味方につけることができます。無視されたり、引き伸ばされたりした時は、以下の手順で反撃に転じましょう。
- 正確な計算:遺産を調査し、具体的な遺留分侵害額を算出する。
- 金額の明示:内容証明郵便などで「金〇〇万円を支払え」と明確に請求し、利息発生のスイッチを入れる。
- 数字で交渉:経過期間分の利息を具体的に計算し、「待たされるほど支払い総額が増える」事実を突きつける。
相手の「無視」を、あなたにとっての「増額のチャンス」に変える。この意識を持つだけで、交渉の主導権を取り戻すことができるはずです。

