その権利、あと少しで消えます。「遺留分」を請求できる期間はたったの1年!
「四十九日が終わってから考えよう」
「一周忌が済んでから落ち着いて話し合えばいい」
親御さんが亡くなられてから、そう思っているうちに半年、8ヶ月と時間が過ぎていませんか?
もしあなたが、遺言書の内容に納得がいかず、「遺留分」の請求を考えているなら、のんびりしている時間はありません。
実は、遺留分を請求できる権利には、「知った時からたった1年」という非常に短いタイムリミットが存在します。
この期間を1日でも過ぎてしまうと、どんなに理不尽な遺言であっても、あなたは法的に守られた最低限の遺産さえ受け取れなくなってしまいます。
期限は2種類。「1年」と「10年」の違いとは
遺留分侵害額請求権(遺留分を請求する権利)には、2つの期限(期間制限)があります。特に注意すべきなのは、あっという間にやってくる「1年」の期限です。
①知った時から1年(これが一番怖い!)
民法1048条では、「相続の開始」と「遺留分を侵害する贈与や遺言があったこと」を知った時から1年間、権利を行使しないと時効によって消滅すると定められています。
例えば、親が亡くなり、その直後に「全財産を長男に譲る」という遺言書を見たとします。その日からカウントダウンが始まり、ちょうど1年が経った瞬間に、あなたは遺留分を請求する権利を失います。
相手方が「時効だから払わない」と言えば、もう手出しはできません。
②知らなくても10年(除斥期間)
もう一つの期限は「10年」です。これは、あなたが遺言書の存在や生前贈与の事実を全く知らなかったとしても、相続開始(被相続人の死亡)から10年が経過すると、権利そのものが消滅してしまうというルールです(除斥期間)。
つまり、知っていてもいなくても、永遠に請求できるわけではないのです。
「知った時」っていつ?カウントダウン開始のタイミング
「1年の時効」のスタート地点となる「知った時」とは、具体的にいつを指すのでしょうか。ここを勘違いしていると、気づかないうちに時効が完成してしまいます。
遺言書を見た日、生前贈与の事実を知った日がスタート地点
基本的には、以下の2つを認識した時点です。
- 相続開始の事実:被相続人が亡くなったこと
- 遺留分を侵害する事実:遺言書の内容を知り、自分の取り分が侵害されているとわかったこと(または生前贈与の事実を知ったこと)
親と同居していたり、葬儀に出席している場合は、亡くなった日から数ヶ月以内に遺言書を確認するケースが多いでしょう。その「遺言書の中身を知った日」から1年がスタートしています。
「なんとなく知っていた」場合はどうなる?
「遺言書は見たけれど、正確な財産額がわからなかったから、遺留分が侵害されているか確信が持てなかった」という場合はどうでしょうか?
裁判例では、遺留分を侵害する贈与や遺言が無効だと信じて争っていた場合でも、「被相続人の財産のほとんど全部が贈与されたことを認識していた」ような場合には、請求できることを知っていたと推認されることがあります。
つまり、「正確な計算はできていなかったけれど、明らかに不公平な遺言があることは知っていた」という状態であれば、すでに時効のカウントダウンは進んでいると考えたほうが無難です。「まだ確信がないから」と放置するのは非常に危険です。
緊急対策!時効を止める「魔法の手紙」
「もうすぐ1年経ってしまう!」「計算も終わっていないし、弁護士を探す時間もない!」
そんな状況でも、あきらめる必要はありません。たった一つのアクションで、時効を止めることができます。
とりあえず「請求する」と書いた内容証明郵便を送ればOK
時効を止めるために、いきなり裁判を起こす必要はありません。「遺留分侵害額請求権を行使する」という意思表示を相手方(多くの場合は遺産を多くもらった兄弟姉妹など)に通知するだけで、時効はストップします。
この時、必ず「配達証明付き内容証明郵便」を使ってください。
電話や普通のメール、普通郵便では「そんなこと聞いていない」「手紙は届いていない」と言われてしまった場合に、1年以内に請求したという証拠が残りません。郵便局が「いつ、誰から誰に、どんな内容の手紙が送られたか」を証明してくれる内容証明郵便を使うことが鉄則です。
細かい計算は後回しでいい。まずは意思表示を!
ここが重要なポイントです。この通知を送る段階では、具体的な請求金額(〇〇円払え)まで明示する必要はありません。
まずは「遺留分を行使します」という意思さえ伝えれば、1年の時効による権利消滅は防げます。正確な遺産の評価や計算は、時効を止めてからゆっくり行えば良いのです。
「計算が終わってから送ろう」と考えて期限を過ぎてしまうのが最悪のパターンです。まずは意思表示を優先させましょう。
意思表示をした後はどうなる?
内容証明郵便を送って「権利行使」をすれば、ひとまず安心です。しかし、それで全て終わりではありません。
権利自体は守られるが、お金の回収(金銭債権)にも5年の時効がある
遺留分侵害額請求権を行使すると、その権利は「お金を支払ってもらう権利(金銭債権)」に変わります。
この金銭債権にも、一般的な債権と同じように5年間の消滅時効(改正民法適用の場合)があります。
- 最初の1年以内:内容証明郵便で「請求する」と意思表示をする(これで権利消滅を防ぐ)。
- その後の5年以内:具体的な金額を交渉し、支払われなければ裁判などを起こして回収する。
つまり、内容証明郵便を送ることで、話し合いや手続きのための時間を「5年間」確保できたことになります。この期間を使って、遺産の調査や交渉を進めていけば良いのです。
まとめ:迷っているなら送るが勝ち。権利消滅を防ごう
遺留分の時効は、あなたが迷っている間も刻一刻と迫っています。
「兄弟と揉めたくない」という気持ちがあるかもしれませんが、何もせずに1年が過ぎれば、法的な権利は二度と戻ってきません。
- 期限:知ってから1年以内。
- 方法:配達証明付き内容証明郵便を送る。
- 内容:「遺留分を請求します」の一言でOK(金額は不要)。
とりあえず通知を送っておいて、その後で「やっぱり請求を取り下げる」ことは可能です。しかし、時効が過ぎてから「やっぱり請求したい」ということはできません。
もし、親が亡くなってから半年以上が経過しているなら、まずは郵便局へ行き、時効を止める手続きをご自身で行ってください。専門的な交渉は、権利を確保した後でゆっくり考えれば間に合います。

