遺産分割とは何ですか?手続きの内容をわかりやすく教えてください
遺産分割とは、被相続人(亡くなった方)が死亡時に有していた財産(遺産)について、個々の財産の帰属先を確定させる手続です(民法909条)。相続が開始すると、遺産は相続人全員の共有状態(遺産共有)となるため(民法898条1項)、誰がどの財産を取得するかを決める遺産分割が必要になります。遺産分割は、まず相続人間の協議で行い、協議がまとまらない場合は家庭裁判所の調停・審判で解決します(民法907条1項・2項)。
遺産分割の意味と趣旨
遺産分割とは、被相続人が死亡時に有していた財産(遺産)について、個々の相続財産の権利者を確定させる手続です。
相続が開始すると、被相続人の財産は相続人全員の共有状態となります。これを「遺産共有」といい、各相続人は法定相続分に応じた共有持分を有している状態です(民法898条1項)。しかし、共有のままでは個々の財産を自由に使ったり処分したりすることが難しいため、相続財産を構成する個々の財産について各相続人の単独所有にするなど、終局的な帰属を確定する必要があります。この手続が遺産分割です(民法909条)。
遺産分割の本質は、遺産共有の状態にある財産を、各相続人の相続分に従って公平かつ合理的に分配する制度であり、新たな権利または法律関係を形成することを目的としています。
たとえば、被相続人Aの相続人がBとCの2名で、遺産が自宅不動産(3,000万円)と預貯金(1,000万円)であった場合、遺産分割をしない限り、自宅も預貯金もB・Cの共有状態が続きます。遺産分割によって「自宅はBが取得し、預貯金はCが取得する」と決めることで、それぞれの財産の帰属が確定します。
遺産分割の対象
遺産分割の対象となる遺産は、次の3つの要件をすべて満たす財産です。
第1に、「相続開始時に存在」する財産であること。 被相続人が死亡した時点で有していた財産が遺産分割の対象となります。たとえば、相続人の一人が被相続人の亡くなる直前に預貯金を引き出していた場合、引き出した金額を遺産に戻すという合意をしない限り、その預貯金は遺産分割の対象となりません。
第2に、「分割時にも存在」する財産であること。 相続開始時に存在した遺産であっても、その後に滅失したり、相続人によって処分された場合は、原則として遺産分割の対象となりません。遺産が滅失した結果として保険金請求権や損害賠償請求権が発生したとしても、これらは遺産の代償財産であって相続財産そのものではないため、原則として遺産分割の対象外です。
もっとも、一定の要件のもと、現存しない遺産についても遺産分割の対象とすることは可能です(民法906条の2)。
第3に、「未分割」の財産であること。 すでに相続人間で遺産分割協議が有効に成立している遺産については、分割が終了しているため、遺産分割の対象となる遺産が存在しないことになります。
遺産分割の対象となる典型的な財産としては、不動産、預貯金、株式・有価証券、動産(自動車・貴金属など)があります。
遺産分割の手続
遺産分割の手続は、大きく分けて次の3つの段階があります。
(1)遺産分割協議(民法907条1項)
まず、共同相続人全員の話し合い(協議)によって遺産の分け方を決めます。協議では、法定相続分にとらわれず、相続人全員が合意すれば自由に分割方法を決めることができます。協議が成立した場合は、その内容を遺産分割協議書にまとめるのが通常です。
(2)遺産分割調停(民法907条2項、家事事件手続法244条)
協議がまとまらない場合や、協議をすることができない場合には、各相続人は家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てることができます。調停は、裁判所の調停委員会が間に入り、当事者間の合意形成を目指す手続です。調停において当事者間に合意が成立し、調停機関がその合意を相当と認めて調停調書に記載すると、調停が成立します(家事事件手続法268条1項)。
(3)遺産分割審判(家事事件手続法39条)
調停が不成立で終了した場合には、調停の申立ての時に遺産分割の審判の申立てがあったものとみなされ、自動的に審判手続に移行します(家事事件手続法272条4項)。審判では、家庭裁判所が、遺産に属する物または権利の種類および性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態および生活の状況その他一切の事情を考慮して、分割方法を決定します(民法906条)。
遺産分割は、この手順に沿って、誰が(相続人の範囲)、何を(遺産の範囲)、どのような割合で(相続分の算定)、どのように分けるか(分割方法)を順番に確定していく手続です。
なお、遺産分割の効力は、相続開始の時にさかのぼって生じます(民法909条本文)。ただし、第三者の権利を害することはできません(同条ただし書)。

