遺産分割はどのような流れで進みますか?

回答

遺産分割(被相続人が残した財産を相続人の間で分ける手続)は、①相続人の確定、②遺産の範囲の確定、③遺産の評価、④特別受益・寄与分の確定、⑤分割方法の決定という順序で進めます(民法907条1項・2項)。まずは相続人全員の協議で合意を目指し、協議がまとまらない場合は家庭裁判所の調停・審判で解決を図ります。

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手続の概要

遺産分割とは、被相続人(亡くなった方)が死亡時に有していた財産(遺産)について、個々の相続財産の権利者を確定させる手続です。共同相続の場合、相続財産は相続人全員の共有状態(遺産共有)となっているため(民法898条1項)、最終的な帰属を確定する必要があります。これが遺産分割です(民法909条)。

遺産分割の手続は、大きく分けて次の3つの段階があります。

  • 遺産分割協議:相続人全員の話し合いにより、遺産の分け方を決める方法です(民法907条1項)。
  • 遺産分割調停:協議がまとまらない場合に、家庭裁判所に申し立てて調停委員会の関与のもとで話し合う方法です(民法907条2項、家事事件手続法244条)。
  • 遺産分割審判:調停が不成立の場合に、家庭裁判所が審判(裁判所の判断)で遺産の分け方を決める方法です(家事事件手続法272条4項)。

このように、遺産分割はまず当事者間の協議を行い、まとまらなければ家庭裁判所の調停、それでも解決しなければ審判へと進む構造になっています。遺産分割事件は私的な財産紛争であるため、当事者の合意を可能な限り尊重する当事者主義的な運用がなされています。

手続の要件・準備

遺産分割を始める前に確認すべき主な事項は、次のとおりです。

相続人の確定について、遺産分割の当事者となるのは、原則として共同相続人です(民法898条1項)。包括受遺者(民法990条)や相続分の譲受人も当事者となります。相続人を一人でも漏らして行われた遺産分割の協議や調停・審判は全部が無効となりますので、被相続人の出生から死亡までの全戸籍謄本等を取得し、相続人を正確に把握する必要があります。

遺産の調査について、遺産分割の対象となる遺産は、「相続開始時に存在」し、かつ「分割時にも存在」する「未分割」の財産です。遺産に含まれる不動産、預貯金、有価証券などの積極財産のほか、債務などの消極財産についても調査が必要です。遺産の調査が不十分であると、後日新たな紛争が生じるおそれがあるため、慎重かつ迅速に行わなければなりません。

なお、相続人の中に意思能力や行為能力に問題がある方がいる場合(認知症等)は成年後見の申立て、未成年者がいる場合は特別代理人の選任(民法826条1項)など、別途の手続が必要です。

遺言書の有無も確認が必要です。遺言書がある場合には遺産分割の進め方が変わることがあるため、公正証書遺言検索システムの利用や、自宅の探索等により遺言書の有無を確認しておくことが重要です。

手続の流れ

遺産分割の手続は、次の5つのステップを順番に整理し、各論点について対立点がある場合はこれを調整して合意の形成を図ります。これは家庭裁判所の実務で採用されている「段階的進行モデル」と呼ばれる手順であり、協議の段階でもこの順序で検討を進めると効率的です。

STEP

相続人の範囲を確定する

最初に、誰が相続人であるかを確定します。被相続人の出生から死亡までの全戸籍謄本と、相続人全員の戸籍謄本を取得して確認します。代襲相続の有無や、相続放棄をした者がいないかも確認が必要です。

STEP

遺産の範囲を確定する

次に、遺産分割の対象となる財産の範囲を確定します。不動産は登記簿謄本や固定資産税の課税明細書、預貯金は通帳や残高証明書、有価証券は取引残高報告書などを手がかりに遺産を特定します。

遺産の範囲について相続人間で争いがある場合(ある財産が遺産に含まれるかどうか等)は、この段階で整理する必要があります。

STEP

遺産を評価する

遺産の範囲が確定したら、各遺産の評価額を確定します。預貯金や上場株式など金額が明確な財産は問題になりにくいですが、不動産の評価額については相続人間で意見が分かれることが多く、当事者の合意、専門家調停委員の意見、鑑定などの方法で確定します。

STEP

特別受益・寄与分を確定する

特別受益(被相続人から生前に受けた贈与や遺贈などの特別な利益)や寄与分(被相続人の財産の維持・増加に特別の貢献をした相続人に認められる上乗せ分)の有無を確認し、これらがある場合には法定相続分を修正して具体的相続分を算出します。

STEP

遺産の分割方法を確定する

最後に、各相続人が具体的にどの遺産を取得するか、分割の方法を決定します。分割方法には、現物分割(遺産をそのまま分ける方法)、代償分割(特定の相続人が遺産を取得し、他の相続人にお金を支払う方法)、換価分割(遺産を売却して代金を分ける方法)などがあります。

協議がまとまらない場合

以上のステップについて相続人全員の協議で合意に至れば、遺産分割協議書を作成して手続は完了します。

協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます(民法907条2項)。調停では、上記と同じ段階的進行モデルに基づいて手続が進行します。調停でも合意に至らない場合は、調停不成立となり、自動的に審判手続に移行します(家事事件手続法272条4項)。審判では、家庭裁判所が一切の事情を考慮して遺産の分割方法を決定します。

遺産分割の全体の所要期間は、遺産の内容や相続人間の対立の程度によって大きく異なります。協議で解決する場合は数か月程度で終わることもありますが、調停・審判に移行した場合は1年以上かかることも少なくありません。

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