外壁の塗り替えや砂利敷きなど、ちょっとした工事なら共有者全員の同意がなくてもできますか?
共有不動産の外壁塗装や砂利道のアスファルト舗装など、「形状又は効用の著しい変更を伴わない」工事は、「軽微変更」として、共有者全員の同意がなくても持分の価格の過半数の賛成で実施することができます(民法251条1項・252条1項)。この区分は令和3年の民法改正で明文化されたものです。
結論
共有不動産に対する小規模な工事は、原則として共有者全員の同意がなくても実施できます。
民法251条1項は、共有物に「変更」を加えるには共有者全員の同意が必要と定めていますが、括弧書きで「その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」を除外しています。この除外された行為は「軽微変更」と呼ばれ、管理行為(狭義)と同じく、持分の価格の過半数の賛成で行うことができます(民法252条1項)。
外壁の塗装工事や砂利道のアスファルト舗装などは、形状や効用を著しく変えるものではないため、通常は軽微変更にあたり、共有者全員の同意は不要です。
根拠と条件
軽微変更の意味と判断基準
軽微変更とは、共有物の変更・管理(狭義)・保存という3分類に関して、令和3年の民法改正(2023年4月1日施行)で新たに登場した区分です。法的には、変更のうち一部のものが管理(狭義)と同じ取扱い(持分の過半数で決定可能)に移動したともいえます。
軽微変更にあたるかどうかの基準は、条文上「形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」かどうかです(民法251条1項括弧書き)。ここでいう「形状の変更」とは不動産の外観や構造など物理的な状態を変えること、「効用の変更」とは不動産の用途や機能を変えることを指します。工事の目的や費用の規模ではなく、「形状・効用」への影響の大きさが基準とされています。これは、共有者への影響の大きさを示す指標としてふさわしいと考えられたためです。
行為の分類と必要な同意をまとめると、次のとおりです。
| 行為の分類 | 必要な要件 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 変更(軽微でないもの) | 共有者全員の同意 | 民法251条1項 |
| 軽微変更 | 持分の価格の過半数 | 民法251条1項・252条1項 |
| 管理(狭義) | 持分の価格の過半数 | 民法252条1項 |
| 保存 | 各共有者が単独でできる | 民法252条5項 |
令和3年改正の趣旨
改正前は、共有物に少しでも物理的な変更が生じる行為は、形式的に「性質を変更する」にあたるとして、一律に「変更」に分類される可能性がありました。そのため、共有者の1人でも反対したり連絡がつかなかったりすると、その行為を実施することができず、共有物の利用に支障が出るという問題がよく生じていました。
この点、軽微な変更であれば共有者への影響は比較的小さいため、一部の共有者の同意なしで決定できたとしても問題はないと考えられます。このような問題を解消し、共有物の円滑な利用・管理を促進するために、「軽微変更」の規定が設けられました。
軽微変更の具体例
軽微変更の規定は新たにつくられてから間もないため、裁判例の蓄積はまだ多くありません。もっとも、公的な見解として、軽微変更にあたる行為の具体例が示されています。主なものは次のとおりです。
①私道に関する行為
- 未舗装の共有の私道(砂利道)にアスファルト舗装をすること
- 共有の私道に植樹されている樹木を伐採・撤去すること
②建物の大規模修繕
- 共有の建物の外壁・屋上防水などの工事
③分筆・合筆登記
- 共有の土地の分筆や合筆の登記申請をすること
なお、軽微変更の条文は区分所有法17条1項(共用部分の変更)の規定と類似しているため、区分所有法17条の解釈(裁判例や学説)が参考になるという考え方があります。ただし、区分所有法と民法252条(一般的な共有)では前提とする状況が異なるため、どこまで参考にできるかは事案ごとの判断になります。
具体的な場面での適用
設例:共有私道のアスファルト舗装
分譲された3つの宅地の私道を、A・B・Cがそれぞれ共有持分3分の1で共有しています。A・B・Cは通行やライフラインの配管を地下に通すなどの利用をしています。路面は砂利となっていますが、地方自治体の助成金を活用してアスファルト舗装をしたいと考えています。しかし、Cが反対しています。
この場合、砂利道にアスファルト舗装をすることは、形状の変更を伴いますが「著しい」変更とはいえないため、通常は軽微変更にあたります。したがって、共有持分の過半数の賛成で決定することができます。A・Bの持分の合計は3分の2で過半数を超えていますので、Cが反対していても舗装工事を実施することができます。
Cと連絡がとれない場合や、Cの所在が不明である場合でも、同様に持分の過半数で決定することができます。ただし、Cに意見を表明する機会を与えることが望ましいとされています。
なお、共有者間の意思決定をクリアしたとしても、自治体によっては共有者全員による申請がないと助成金を利用できない運用となっていることもあるため、注意が必要です。

