共有不動産に住み続けている共有者に「出ていってほしい」と言えますか?
共有不動産を1人で使っている共有者に対して、他の共有者がいきなり明渡し(立ち退き)を請求することは、原則としてできません。各共有者は共有持分に基づいて共有物全体を使用する権利を有しており、これが占有の権原となるためです(民法249条1項)。ただし、共有者間で使用方法について意思決定(持分の過半数による多数決)を行ったうえであれば、明渡請求が認められます(民法252条1項後段)。
結論
共有不動産を共有者の1人が占有・使用している場合、他の共有者が単純に「出ていけ」と請求しても、原則として認められません。
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができます(民法249条1項)。この「持分に応じた使用権」が占有の権原(正当な根拠)になると解されているため、たとえ共有者間で使用方法を話し合って決めたわけでなくても、共有者の1人が共有不動産に住んでいること自体は違法とはいえないのです。
もっとも、これは「いきなりの明渡請求」ができないということにとどまります。共有者間で使用方法についての意思決定を行い、「別の共有者が使用する」と共有持分の過半数で決定したうえであれば、現に住んでいる共有者に対する明渡請求が認められます(民法252条1項後段)。
根拠と条件
明渡請求が認められない根拠
この問題について最初に判断を示したのは、昭和41年の最高裁判決です。
なお、最高裁は、共有者の1人が共有物を占有している場合、他の共有者は、たとえ共有持分の過半数を有していても、当然には明渡しを請求することができないと判断しています(最高裁昭和41年5月19日判決)。
この判決の理論は、占有している共有者が自己の共有持分に基づく使用収益権を有しており、これが占有の権原になるというものです。
明渡請求が認められるための条件
令和3年の民法改正により、共有物を使用する共有者がいる場合であっても、共有持分の過半数で管理に関する事項を決定できることが明文化されました(民法252条1項後段)。
したがって、現に共有不動産を使用している共有者Aに対して、他の共有者Bが明渡しを求めたい場合、Bは次の手順を踏むことになります。
- 共有者間で使用方法について協議を行う。
- 「Bが使用する」という内容の決定を、共有持分の過半数の賛成で行う。
- この意思決定に基づいて、Aに対して明渡しを請求する。
たとえば、A・B・Cがそれぞれ3分の1の持分で建物を共有している場合、BとCが「Bが使用する」ことに賛成すれば、持分の過半数(3分の2)に達するため、意思決定が成立します。この決定により、Aはもはや共有不動産を使用する権原を失うため、明渡請求が認められることになります。
「特別の影響」がある場合の例外
ただし、この意思決定が、すでに共有者間の決定に基づいて共有物を使用している共有者に「特別の影響」を及ぼすときは、その共有者の承諾を得なければなりません(民法252条3項)。
ここで注意すべきは、共有者間の意思決定なく(無断で)住んでいるだけの共有者に対しては、民法252条3項は適用されないという点です。同条3項が適用されるのは、「共有者間の決定に基づいて」使用している共有者に限られます。
また、「特別の影響」の有無は、退去させられるという事実だけでは判断されません。転居が困難な事情があるかどうかや、他の共有者が退去を求める必要性の程度など、個別の事情を総合的に考慮して判断されます。
明渡請求が認められる場合の整理
以上の内容を整理すると、次のようになります。
| 状況 | 単純な明渡請求 | 多数決(過半数)のうえでの明渡請求 |
|---|---|---|
| 意思決定なしで住んでいる共有者 | × | ○ |
| 意思決定に基づいて住んでいる共有者 | × | ○(原則)。ただし「特別の影響」がある場合は承諾が必要 |
具体的な場面での適用
設例1:話し合いなく住んでいるケース
不動産をA・B・Cがそれぞれ持分3分の1で共有しています。使用方法について特に話し合いをしたわけではありませんが、Aが居住しています。Bが自分で使いたい(住みたい)と考えた場合、BはCの協力を得て「Bが使用する」という意思決定(多数決)を行えば、Aに対する明渡請求が認められます。
設例2:占有の態様に特殊性があるケース
なお、共有者間の意思決定がなくても、例外的に明渡請求が認められるケースがあります。たとえば、共有者の1人が他の共有者を実力で排除するなど、極めて不公正な方法で占有を開始した場合には、共有持分権の濫用として明渡請求が認められることがあります。
令和3年改正前との違い
令和3年改正前は、現に使用している共有者を保護する傾向が強く、共有者間の意思決定による明渡請求は認められにくいとされていました。改正により、共有者間の意思決定(合意)を重視する方向へ大きく転換し、過半数の多数決で使用方法を決定できることが明確になりました。

