共有不動産に1人だけ住んでいる共有者に、家賃に相当するお金を請求できますか?

回答

共有不動産を共有者の1人だけが使用している場合、他の共有者は、その共有者に対して使用対価(家賃相当額)の支払いを請求することができます(民法249条2項)。請求できる金額は、近隣の賃料相当額に請求者の共有持分割合を乗じた金額が基本です。ただし、共有者間で「無償で使用する」という合意がある場合には、その合意の当事者間では請求が認められません。

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結論

共有不動産を共有者の1人だけが使用(居住)している場合、他の共有者は、使用している共有者に対して金銭(使用対価)の支払いを請求することができます。これは、使用していない共有者にとって、自己の共有持分に応じた使用ができない不公平を金銭で調整する仕組みです。

令和3年民法改正により、民法249条2項に「共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う」と明記されました。改正前も、判例(最高裁平成12年4月7日判決)により、金銭請求は認められていましたが、改正後は、条文上の根拠がより明確になっています。

根拠と条件

請求の法的根拠

令和3年改正後の現行法では、金銭請求の根拠は、民法249条2項の償還請求権(使用対価の償還義務)です。

改正前は、不当利得返還請求権(民法703条・704条)または不法行為に基づく損害賠償請求権(民法709条)が根拠とされていました。改正後の償還義務は、不当利得や不法行為の要件を前提としない「法定の義務」と解されています。

請求が認められるための条件

金銭請求が認められるための基本的な条件は、次のとおりです。

  • 共有者の1人が、自己の持分を超えて共有物を使用していること
  • 共有者間で「無償で使用する」という合意(別段の合意)がないこと

なお、「共有者の多数決でAが使用すると決めた」という使用方法の意思決定があった場合であっても、無償とする合意がない限り、償還義務は発生すると解されています。つまり、使用方法の決定(誰が住むかの決定)と、使用対価の支払い(お金の問題)は別の問題として扱われます。

例外:金銭請求が認められない場合

以下の場合には、例外的に金銭請求が認められません。

(1)無償使用の合意がある場合

共有者間で「無償で使用してよい」という合意がある場合、民法249条2項の「別段の合意」にあたり、償還請求はできません。ただし、この合意の効力は合意をした当事者間に限られます。たとえば、共有者A・B・CのうちAとBが「Aは無償で使用してよい」と合意しても、合意していないCは引き続きAに償還請求をすることができます。

(2)被相続人と同居していた相続人の場合

相続人の1人が、相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産の建物に同居していた場合、被相続人と同居相続人との間に、相続開始後も遺産分割完了まで無償で使用させる使用貸借契約が推定されます。この場合、遺産分割が完了するまでは、他の相続人からの金銭請求も否定されます。

なお、最高裁は、相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産建物に同居していた相続人については、相続開始から遺産分割完了までの間、使用貸借関係の成立を推認すべきであると判断しています(最高裁平成8年12月17日判決)。

(3)内縁の夫婦の死別の場合

内縁の夫婦が共有不動産に同居していた場合で一方が死亡したときは、残された内縁の配偶者が単独で使用する合意が推定されます。この推定には無償とする合意も含まれると解されており、死亡した側の相続人からの金銭請求は否定されます。

なお、最高裁は、内縁の夫婦が共有不動産を共同で使用してきた場合、一方の死亡後に他方が単独で使用する合意の成立を推認すべきであると判断しています(最高裁平成10年2月26日判決)。

具体的な場面での適用

設例:共有者が無断で居住しているケース

AとBがそれぞれ持分2分の1で建物を共有しているとします。A・B間で使用方法について特に協議していないにもかかわらず、Aが建物に居住している場合、BはAに対して明渡しを請求することは原則としてできませんが、使用対価の償還を請求することができます。

請求金額は、近隣の賃料相当額(たとえば月額10万円)にBの共有持分割合(2分の1)を乗じた月額5万円が基本となります。

【計算例】
近隣の賃料相当額:月額10万円
Bの共有持分割合:2分の1
Bが請求できる月額:10万円 × 1/2 = 5万円

設例:使用方法の決定がなされているケース

A・B・Cがそれぞれ持分3分の1で建物を共有し、A・Bの賛成(持分の過半数)により「Aが居住する」と決定した場合であっても、「Aが無償で使用する」という合意がない限り、BもCも、Aに対して、使用対価の償還を請求できます。多数決で決められるのは「誰が使用するか」(現実使用)だけであり、「使用対価を支払うかどうか」(収益の分配)は多数決の対象外と解されています。

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