共有不動産の家賃収入は、共有者の間でどう分ければいいですか?

回答

共有不動産の家賃収入(賃料債権)は、各共有者が持分割合に応じて取得するのが原則です(民法89条2項・427条)。賃料債権は可分債権(分けられる債権)であり、各共有者は自己の持分に相当する金額を賃借人に対して直接請求することもできます。実務上は、共有者の1人の口座に賃料を集約し、そこから各共有者に分配する方法が一般的です。

目次

賃料分配の基本的なルール

共有不動産を第三者に賃貸している場合、賃料収入は法定果実(民法89条2項)にあたり、各共有者がその持分割合に応じて取得します。

賃料債権は金銭債権であり、可分債権(分割できる債権)に該当します。そのため、民法427条の原則に従い、各共有者は持分割合に応じた金額の賃料債権を、分割単独債権として確定的に取得します。

たとえば、AとBが建物を持分2分の1ずつで共有し、第三者Dに月額20万円で賃貸している場合、AとBはそれぞれ月額10万円の賃料債権を有することになります。

なお、共有者間で持分割合と異なる分配割合を合意することも可能です。ただし、そのような合意がない場合は、持分割合に応じた分配が原則となります。

賃料債権の帰属先(物権共有と遺産共有)

賃料債権が誰に帰属するかは、共有の原因によって若干の違いがあります。

物権共有の場合

相続とは関係なく、複数の者が不動産を共有しているケースでは、賃料債権をもつのは賃貸人(賃貸借契約の貸主)だけです。共有不動産の賃貸借において、共有者全員が賃貸人になるとは限りません。管理行為(民法252条1項)として賃貸借契約を締結する場合、持分の過半数で賛成した共有者だけが賃貸人となることもあります。

いずれにしても、賃料債権をもつのは賃貸人だけです。たとえば、賃貸人がA(持分割合20%)とB(持分割合30%)だけである場合、賃料の金額をAとBの持分割合に応じて2:3で分けることになります(当事者間に合意がない場合)。

遺産共有の場合

賃貸人が亡くなり、相続人が賃貸人の地位を承継したケースでは、賃料債権は遺産とは別個の財産として扱われます。

なお、最高裁は、遺産共有の不動産を賃貸して得られる賃料債権は可分債権であり、各相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得すると判断しています(最高裁平成17年9月8日判決)。

この判決により、遺産分割が完了する前であっても、各相続人は、賃借人に対して、自己の相続分に相当する賃料を直接請求できます。また、遺産分割の結果、不動産を相続人Aが単独で取得することになった場合でも、遺産分割完了前に他の相続人が受領した賃料を清算する必要はありません。

賃貸人の相続における賃料の帰属を整理すると、次の表のとおりです。

賃料債権の発生時期賃料の帰属
相続開始前可分債権として当然に分割
相続開始〜遺産分割完了可分債権として当然に分割
遺産分割完了後不動産の取得者(所有者)に帰属

賃料分配の具体的な方法

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賃料の回収

実務上は、賃貸借契約書の条項で、賃料の送金先として共有者の1人(代表者)の預貯金口座を指定することが多いです。この場合、他の共有者は代表者に賃料の受領権限を付与した(委任した)と考えることができます。

代表者が賃料の全額を賃借人から受領(回収)した後に、各共有者の持分割合に相当する金額を分配することになります。

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各共有者への分配

代表者は、受領した賃料のうち他の共有者に帰属する分を引き渡す義務を負います。これは受任者の引渡義務(民法646条)にあたります。

たとえば、AとBが持分2分の1ずつで共有する建物の賃料月額20万円をAの口座で受領している場合、AはBに対して毎月10万円を支払う義務があります。

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分配がされない場合の対応

代表者が分配に応じない場合、他の共有者は、自己の持分に対応する賃料債権に基づいて、賃借人に対して直接請求することも法的には可能です。ただし、賃料支払口座の指定(代理受領)が生きている限り、賃借人が代表者の口座に全額を送金すれば弁済として有効となるため、実効性の面で問題が生じることがあります。

代理受領権限の付与は委任の性質があるため、原則として、委任者(代表者以外の共有者)が一方的に解消(解除)できます(民法651条1項)。ただし、賃料の支払方法の変更には、共同賃貸人と賃借人の間の合意が必要となる場合があります。

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