共有不動産の借主に出ていってもらいたいとき、共有者全員の同意は必要ですか?
共有不動産の賃貸借契約を解除するには、共有者全員の同意は必要ありません。賃貸借契約の解除は「管理行為(狭義)」に分類されるため、共有持分の価格の過半数の賛成で意思決定することができます(民法252条1項)。更新拒絶や合意解除についても同様です。ただし、解除の意思表示(通知)を借主に行う際の名義については、別途注意が必要です。
結論
賃貸借契約の解除は、共有物の管理に関する事項(管理行為(狭義))に分類されます。したがって、共有者全員の同意がなくても、共有持分の価格の過半数の賛成があれば、解除するという意思決定をすることができます(民法252条1項)。
なお、最高裁も、賃貸借契約を解除することは管理(狭義)に該当すると判断しています(最高裁昭和47年2月18日判決)。
根拠と条件
解除の意思決定に必要な賛成割合
賃貸借契約の解除が「管理(狭義)」に分類される理由は、解除によって契約を終了させることが、共有不動産の利用方法を変更する行為にあたるためです。解除すれば、借主(賃借人)を退去させたうえで、新たな借主に賃貸するなど不動産の利用方法を見直すことができます。一般的に、不動産は借主がいない更地・空き家のほうが経済的に価値があるとされることが多く、解除は不動産の価値を維持することにもつながります。
この点、民法544条1項は「当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から……のみ、することができる」と定めています(解除の不可分性)。しかし、この規定は解除の「意思表示」(借主への通知)を全員の名義で行うことを求めたものであり、「解除するかどうかの意思決定」に全員の同意が必要であるという意味ではないと解されています。したがって、解除の不可分性があっても、意思決定自体は持分の過半数で行うことができます。
解除の意思表示(通知)の名義
意思決定がなされた後には、借主に対して、解除の意思表示(通知)を行うことになります。解除の意思表示の名義については、賃貸人(共有者)全員の名義で行う必要があるという解釈が一般的です。ただし、賛成した共有者のみの名義でも有効であるという見解もあります。
更新拒絶・合意解除の場合
借地借家法が適用される賃貸借では、賃貸人の意思表示で契約を終了させる方法として、更新拒絶(借地契約における異議、借家契約における更新しない旨の通知など)もあります。更新拒絶も、契約を終了させるという点で解除と同じ性質を持つため、管理(狭義)に分類されると考えられています。ただし、更新拒絶には正当事由が必要です(借地借家法4条1項・6条・28条)。
また、賃貸人と賃借人の合意によって契約を終了させる合意解除も、管理(狭義)に分類されます。
| 契約終了の方法 | 行為の分類 | 必要な賛成 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 債務不履行による解除 | 管理(狭義) | 持分の過半数 | 信頼関係の破壊が前提 |
| 更新拒絶 | 管理(狭義) | 持分の過半数 | 正当事由が必要 |
| 合意解除 | 管理(狭義) | 持分の過半数 | 賃借人の同意が必要 |
具体的な場面での適用
たとえば、建物をA・B・Cがそれぞれ持分3分の1で共有しており、第三者Dに賃貸しているケースを考えます。Dが賃料を長期間滞納しているため、AとBは解除して別の借主に貸したいと考えていますが、CはDの支払いを待ちたいと考えている場合、A・Bの賛成(持分の合計3分の2)だけで解除の意思決定は成立します。
解除後の明渡請求
賃貸借が解除された場合、借主は、共有不動産の占有権原を失い、法的には不法占有者と同じ立場になります。そのため、共有者は、借主に対して明渡請求をすることができます。この明渡請求は、共有持分権の行使(保存行為)にあたるため、共有者の1人が単独で行うことができます(民法252条5項)。

