共有の土地に共有者の1人が建物を建てている場合、土地の利用権はどうなりますか?
共有の土地に共有者の1人が建物を建てている場合、その土地の利用権は、原則として共有持分権に基づく使用権(民法249条1項)にとどまります。土地の所有者と建物の所有者が一部重なるため、通常の借地権(賃借権)は「混同」(民法179条1項本文)により成立しないのが原則です。ただし、借地権を「他の者と共に有する」場合には、借地借家法15条により自己借地権(じこしゃくちけん)が認められる余地があります。
結論
共有の土地に共有者の1人が自分の建物を建てている場合、その土地の利用権は共有持分権に基づく使用権であるのが原則です(民法249条1項)。正式な借地権(賃借権)は、原則として成立しません。
その理由は、土地の所有者(の一部)と建物の所有者が同一人物となるため、民法上の「混同」の原則により、自分に対する賃借権は消滅するとされるからです(民法179条1項本文)。もっとも、借地借家法15条は、借地権を他の者と共に有する場合には混同の例外として自己借地権の成立を認めています。自己借地権が成立するかどうかによって、土地が売却された場合や共有物分割が行われた場合の結果が大きく異なります。
根拠と条件
混同の原則と自己借地権の例外
民法179条1項本文は、同一人物が借地権設定者(賃貸人または地上権設置者)と借地権者(賃借人または地上権者)の両方の地位を兼ねる場合、権利が混同により消滅すると定めています。たとえば、土地がAの単独所有、建物がA・Bの共有である場合、AはA自身に対する借地契約の賃貸人にも賃借人にもなるため、この借地権は混同として認められないことになります。
これでは、主に区分所有建物(マンションなど)において不都合が生じるため、借地借家法15条は、借地権を「他の者と共に有すること」を要件として、自己借地権という混同の例外を認めています。
自己借地権が認められるケース
自己借地権が成立するためには、条文上、借地権を「他の者と共に有すること」が求められます(借地借家法15条1項)。これは、賃借人が賃貸人(土地所有者)と賃貸人以外の者の二者以上であることを意味します。具体的には、以下のようなケースで自己借地権が認められると考えられています。
- 賃貸人がAで、賃借人がA・Bであるケース(原始的自己借地権の典型例)
- 賃貸人(土地共有者)がA・Bで、賃借人がA・B・Cであるケース(賃借人に土地共有者以外のCが含まれるため、①と同質)
- 賃貸人(土地共有者)がA・Bで、賃借人がA・Cであるケース(賃借人の一部であるCが賃貸人以外の者に該当)
自己借地権が認められないケース
一方、賃貸人がA・Bで、賃借人がAというケースでは、賃借人が賃貸人と賃貸人以外の者の二者の要件を満たさないため、自己借地権は認められません。この場合の建物の占有権原は、借地権ではなく、共有土地について建物を建築し所有することの共有者間の合意(共有持分権に基づく使用権)にとどまります。
自己借地権の有無による違い
自己借地権が成立するかどうかは、以下の場面で大きな実益があります。
| 場面 | 自己借地権あり | 自己借地権なし(共有持分権のみ) |
|---|---|---|
| 土地が第三者に売却された場合 | 建物登記があれば第三者に対抗できる(借地借家法10条1項) | 土地の占有権原がなくなり、建物収去・土地明渡義務を負う可能性がある |
| 共有物分割で全面的価格賠償がされる場合 | 建物の評価額+借地権価格の合計額がベースとなる | 建物の評価額(+使用借権相当額控除)がベースとなる |
| 共有物分割で換価分割(競売)となる場合 | 借地権の存在により建物の使用継続が可能 | 買受人から建物収去・土地明渡請求が認められうる |
具体的な場面での適用
設例:相続を契機とした紛争
相続人A・Bが遺産分割を行い、土地をAの単独所有、建物をA・Bの各2分の1の共有としたとします。建物は第三者に賃貸されており、賃料収入はA・Bで分配していました。
この場合、賃貸人はA、賃借人(建物の共有者)はA・Bとなります。Aが賃貸人でも賃借人でもある状態になりますが、賃借人にはB(Aと異なる者)も含まれているため、自己借地権の要件を満たす余地があります。
その後A・Bの仲が悪化し、Aが土地と建物の共有持分を第三者Cに売却した場合、Bが自己借地権の成立を主張できれば、Cからの建物収去・土地明渡請求を拒むことが可能になります。
ただし、自己借地権が成立するか否かについての裁判例の蓄積は少なく、特殊な事情により結論が異なってくることもありえます。自己借地権の有無が争点となるケースでは、遺産分割の成立時に賃借権設定登記をしておくことで、借地権の存在をより確実に主張できる方向に働く可能性があります。
対抗要件の問題
自己借地権の対抗要件(第三者に対して権利を主張するための要件)についても注意が必要です。借地権(土地賃借権)の対抗要件としては、本来は不動産登記による賃借権の登記が理想的ですが(民法605条)、賃貸人に登記申請への協力義務がないため、実務では活用されていません。そこで、建物の登記(建物の引渡し・占有)が対抗要件となるという規定(借地借家法10条1項・31条)でカバーされるのが一般的です。
しかし、建物の登記には賃貸借の内容が公示されないため、自己借地権が設定されている場合であっても、土地の差押えなどがあった際に買受人から自己借地権の設定はないと主張される余地があります。そのため、自己借地権のケースでは、賃借権登記を行うことのメリットがより大きいといえます。自己借地権の場合は、賃貸人(土地所有者)自身が賃借人の一人でもあるため、登記義務者にもメリットがあるという構造になるからです。

